2012年4月16日月曜日

■米国で進む「本離れ」に歯止めをかけるのが電子書籍?


米国で進む「本離れ」に歯止めをかけるのが電子書籍?
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0416&f=column_0416_003.shtml
2012/04/16(月) 07:55 サーチナ

 アメリカの調査機関【PewResearchCenter】は2012年4月4日、電子書籍を中心に、アメリカの読書性向に関する調査報告書【TheRiseofE-Reading】を発表した。モバイル端末、特に電子書籍リーダーの登場・普及で大きな変化をとげている、アメリカの読書の現状をかいまみられる貴重なデータが、多数盛り込まれている。今回はその中から「アメリカにおける書籍の読書性向推移」にチェックを入れることにする。

 今調査は16歳以上のアメリカ合衆国国内に住む人を対象とし、2011年11月16日から12月21日にかけて、RDD方式で抽出された電話番号に対し、電話による音声インタビュー形式で英語及びスペイン語で行われたもので、有効回答数は2986人。対象電話は固定電話が1526人、携帯電話が1460人(そのうち固定電話非保有者は677人)。国勢調査結果に基づくウェイトバックが行われている。また今調査全体のうち一部項目では同様の調査スタイルながらも「18歳以上」「2012年1月20日から2月19日」「有効回答数は2253人」による(より現在に近い)取得データを用いたものもある。こちらを用いている場合は逐次その旨言及する。

 なお今調査では特記無き限り、「紙媒体としての書籍」の購読以外に「電子書籍を読む」ことも「読書」と見なしている。日本では一部で「電子書籍を読むのは読書とは呼ばない」とする意見もあり、今件データの確認・他調査結果との比較時には注意が必要である。

 今レポートでは別調査機関ギャラップ社による書籍の読書性向推移が寄せられている。それによると1978年時点では「一年を通して書籍を一冊も読まなかった人は8%」、1990年になるとその値は16%にまで増加。1990年時点での平均年間購読冊数は11冊という結果が出ている。そして直近の値として2011年12月分には今回のPewResearch社の調査結果が添付されている。

 レポートでも注意書きの有る通り、ギャラップ社の結果は「紙媒体の書籍のみ」、PewResearch社の値は「電子書籍も含む」ことに注意してほしい(仮に「紙媒体のみで」と問い合わせていれば、PewResearch社調査における「読書」結果は今件調査よりも小さな値になることは、容易に想像できる)。それでもなお「一年間に1冊も読書をしなかった」人は増加しており、2割に近づいている。また他の「読書冊数」区分も大きな違いは無く、むしろ2005年の(電子書籍をカウントしていない)ギャラップ社の結果と比較すると、多めの冊数区分がいくぶん増えており、電子書籍の普及がアメリカにおける「(新聞や雑誌では無く書籍における)読書離れ」を押しとどめている感はある。

 これが良く分かるのが次のグラフ。購読書籍冊数の平均値と中央値をグラフ化したものだが(1978年の分はデータが無い)、1999年をピークに漸減していたものが、2011年、つまり電子書籍をカウントに加えた時点で再び増加しているのが分かる。

 電子書籍もカウントに加えることで、書籍読書冊数は1999年の水準にまで回復している。平均値は同じで中央値はむしろ2011年の方が1冊多いことから、(一部の多冊購読者による平均値のかさ上げでは無く)全体的な読書性向はむしろ強まっていることが分かる。アメリカでも「紙製の本離れ」はあるかもしれないが、「(デジタルも含めた)本離れ」は電子書籍の展開で押しとどめられた可能性がある、と見てよいだろう。無論この仮説を確定付けるには、もうしばらく継続した調査結果の確認が必要であることは言うまでも無い。

 レポートでは概要のみではあるが、紙の書籍・電子書籍それぞれの動向にも触れられている。それによると「2011年12月の調査では、16歳以上の72%は少なくとも1冊の紙媒体の、16%は電子書籍を読み、11%は音声本(audiobook)を聴いている。18歳以上で仕切り直しても値は同じ(電子書籍の購読者率が17%にかさ上げされるのみ)」「同様の調査を2012年2月に行ったところ、電子書籍の購読者率は21%にまで増加した」とあり、短期間で電子書籍購読者が増えたことを示唆している。

 詳しくは別途詳細を見て行くことにするが、【アマゾンのKindleFireはタブレット市場の起爆剤に】でも触れたように昨年末から今年の頭にかけて年末年始商戦でキンドルファイアが飛ぶように売れ、これが電子書籍購読者を大量に増やしている。主に(当然年末年始には他のタブレット機や電子書籍リーダーも売れており、電子書籍そのものの急速な浸透もあるので、キンドルファイア「だけ」が理由ではないが、)この動きが具体的な「電子書籍購読者率の増加」として現れたと考えるのが、素直な見方といえよう。



0 件のコメント:

コメントを投稿