2012年4月21日土曜日

■中国自動車産業の先行きをどう見るか?


中国自動車産業の先行きをどう見るか?
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0420&f=column_0420_025.shtml
2012/04/20(金) 19:56
 
 中国自動車工業協会の発表によれば、今年3月の中国自動車生産台数は、対前年同月比3.4%増の188万600台、販売台数(工場出荷台数)は同1.0%増の183万8600台になったという。これらは3月としては過去最高水準であるが、1月から3月の第1四半期でみると、生産台数は対前年同期比1.8%減の478万4300台、販売台数は同3.4%減の479万2700万台となっており、中国自動車産業は本格的に回復したとはいえない状況である。しかし、中国自動車市場の規模は、3ヶ月分が日本のほぼ1年分の市場規模にまで膨らんでおり、改めて中国自動車産業の巨大化振りが反映され、今後の推移が注目される。

 そこで、本稿では、ここまで巨大化した中国自動車産業の現状と今後について、若干の解明を試みてみよう。もっとも、リーマンショック後の2009年と2010年における市場の急拡大をほとんど誰もが予想できず、また、昨年に多くの人が予想した2000万台規模への到達が実現しなかったというように、これまで中国自動車市場の予測はほとんど当たったことがない。それゆえ、中国自動車産業の将来を見通すことは極めて難しい。今年の中国自動車市場の展望についてもほぼ2000万台規模に達するというのが筆者の予測であるが、現在の低迷する需要を喚起する何らかの大規模な自動車購入奨励策が打ち出されるとの観測もあり、その実施如何によって異なった結果ともなる。実は、リーマンショック後に、先進国自動車市場が大きく冷え込む中で、中国政府が打ち出した1.6リットル以下の小型車への減税措置や農村への自動車普及を促進する「汽車下郷」政策による補助金支給が市場の爆発的拡大を招いたことはよく知られており、そうした政策措置が、基本的には2010年末で終了し、打ち切られたことが昨年の停滞の一因となった。

 中国政府としては、マクロ経済を発展させるためには自動車産業を拡大させることが望ましいが、現状の燃費水準のままではガソリン消費量の増加を招いてしまうこととなり、石油輸入のこれ以上の増加にはどうしても歯止めをかけたい。それに加えて、昨年末には中国の自動車保有台数は1億600万台に達したといわれており、特に大都市の交通渋滞、大気汚染は深刻化している。そこで、従来(1994年)から上海市で実施されていた自動車の新規登録規制(ナンバープレート規制)が、他の人口1000万人以上の大都市にも全面的に拡大する方向で検討されているともいわれており、既に北京市では昨年1月から自動車のナンバープレートの発行を年間24万台分に制限する規制が実施されている。

 このような事情から、中国政府にとっては、「省エネ車・新エネ車」を普及させることが望ましいのである。そこで、2010年6月から走行距離100キロあたりガソリン消費量6.9リットル以下の燃費のエコカー購入者に1台あたり3000元の補助金を支給する制度を実施していたが、2011年10月からは6.3リットル以下へと引き下げる省エネ補助金新政策が採用されている。さらに、今年1月1日からは、2007年7月から開始された一種の財産税として法律に基づき登録された車両や船舶に対して徴収される車船税を省エネ車は半減とし、新エネ車には免除するという措置がとられることになった。

 また、リーマンショック後の急拡大期には中国民族系メーカーにより生産された中国車のシェアが拡大していたが、この間は再び外国車がシェアを高めており、そこに中国政府の危機感がある。中国政府としては、自主ブランド、自主創新を強調して、中国自動車産業が外資によって席巻されることなく中国民族系メーカーのシェア拡大を促したいというのが本音である。最終的にどのように実施されるかは不明であるが、2月24日に中国工業情報化部(工信部)が発表した「2012年度党政機関公務用車選用車型目録(案)」で、公務車両として選定されたのは全て中国の地元ブランド車であったことも、政府による民族系メーカーへの支援策といえる。こうして中国政府は種々のジレンマを抱えながらも、望ましい方向への自動車産業の育成、誘導策を講じようと模索しているのが現状であり、今後に打ち出される政策次第で中国自動車産業の先行きは大きく異なる結果となろう。


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