古都の味わい、地元の人たちは気づいているの?
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2012/4/11 20:39 ウォールストリートジャーナル
金井啓子のニュース・ウオッチ
海外への修学旅行など珍しくもない昨今だが、筆者が中高生だった頃、海外旅行は高嶺の花だった。関東で生まれ育った筆者には、修学旅行と言えば京都・奈良が定番だったのだ。
同じ古都ということもあり、京都と奈良は同等に並び立つ存在だと思い込んでいた。だが、通算8年の大阪住まいを経て見えてきたのは意外な姿だった。京都に比べて奈良の観光客は少なめ。訪れる客の奈良での滞在時間も短い。加えて奈良に泊まる人は少ない。奈良の土産物として有名なものは多くない。おまけに奈良の宣伝は地味。そして、何よりも奈良で生まれ育った人たちは奈良は田舎であるだけで特に魅力がある場所ではないと考えている。これらはあくまでも筆者の個人的な経験に過ぎないが、それほど的外れな観察結果ではないと思う。
大学の教え子たちと、奈良公園周辺を訪れている外国人たちにアンケートを取ったことがある。話を聞いた外国人の多くが、京都訪問のついでにわずかな時間を縫って奈良に来たと答えていた。
それでも、2010年の平城遷都1300年祭では、「せんとくん」の人気も手伝ってか、奈良への注目がかなり高まった。
その時は大いに盛り上がった奈良。そして今、観光客誘致の方策はあるのだろうか。おりしも今年は古事記が編さんされて1300年。奈良を盛り上げるアイディアを知りたくて、編さん1300年を祝う行事をとりまとめている大和郡山市役所に赴いた。
大和郡山市は金魚の養殖でも知られる町である。古事記は、現在の大和郡山市出身の稗田阿礼が記憶していた古い伝承などを、近隣の田原本町出身の太安万侶が書き記す形で編さんされた。
市役所の企画政策課情報サービス係(古事記1300年紀事業担当)の植田早祐美係長によると、2月のオープニングセレモニーを皮切りに、1年を通じて種々のイベントを行うという。その中には記憶力コンテストもある。記憶力に優れた稗田阿礼にちなんで「現代の阿礼を発掘しよう」をテーマに、古事記に出てくる神様の名前や、円周率、人の名前と顔、52枚のトランプの順番を覚えておいて再現…等々で記憶力を競う。
また、稗田阿礼が語ったことで古事記が成り立った点にも注目し、語ることの大切さを発信していく。植田さんは「東日本大震災で『津波てんでんこ』という言葉が注目されたように、語り継いでいくことが見直されている」と話す。さまざまな分野の講師が語り部となって文化・芸術・歴史などの魅力を語る講演会を開くほか、「今、語り継いでおきたいこと」をテーマにエッセイも募集する。
地元ですら、この町が古事記発祥の地であることや、その魅力に気づいていない人が多いという。気づかないのは古事記だけではない。地元で生まれ育った植田さんも「重要文化財が身の周りに普通にあってそれがすごいものだという意識がない。古墳を見るとよそから来た人は興奮するけれど私たちにとっては当たり前なので」と語る。大和郡山に向かう電車の中から古墳が見え、筆者は思わず携帯電話で写真を撮りたい衝動にかられたが、車内に同じような人はいなかった。価値あるものも見慣れすぎると、そのありがた味が薄くなるのだろうか。
植田さんは「住んでいる人たちに古事記の発祥地であることや、魅力に気づいてもらいたい。そして、市外の人たちにもこれを機に知って訪ねてもらいたい」と話してくれた。こうした努力は「1年だけではできないから、長く続けていきたい」と考えているそうだ。
華やかな京都もいいが、しっとりと穏やかで自然にあふれた奈良も悪くない。その奈良の良さを、住民たちはもちろん外の人たちももっと理解していいのではないだろうか。奈良を訪れるたびにそのような思いを強くする。
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