2012年4月3日火曜日

■ICカード導入で混乱、「政策失敗」に反省



ICカード導入で混乱、「政策失敗」に反省
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2012/03/29 09:56 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

 金錫東(キム・ソクトン)金融委員長が、3月初めに韓国でクレジットカードがIC内蔵式に切り替えられた際の混乱ぶりを代表的な政策失敗事例と受け止め「失敗の研究」を実務担当者に指示していたことが28日までに分かった。消費者の視点を考慮せずに政策を推進したケースの典型だったからだ。

 金融当局は、スキミング(磁気カードに書き込まれている情報を抜き出し、全く同じ情報を持つカードを複製する犯罪)被害に弱い磁気ストライプ方式のクレジットカードをIC方式に切り替えるよう促すため、今月2日から半年の予定で、現金自動支払機(CD)や現金自動預払機(ATM)で磁気カードを使えないようにしたが、事前の周知不足で利用者に混乱が生じ、わずか1日で方針を転換。実施日を6月1日に延期した。

 金委員長は「原点から再点検し、必要ならばそのまま実施し、必要のない政策ならば白紙化も検討すべきだ」と指示したという。金融当局が政策の失敗原因として挙げるのは4点だ。

(1)消費者マインドの不足

 ICカードをめぐる今回の混乱について、金融当局の実務担当者は「国民が(磁気カード使用停止の)初日から銀行窓口に殺到し、ICカードへの交換を要求したために問題が拡大した。国民が数日間待って交換すれば何の問題もなかった」と振り返った。

 金委員長は公務員のそうした考えを「まだ消費者マインドが足りない」と断じ、激怒したとされる。国民がCDやATMをどれだけ頻繁に利用し、それを制限すればどれだけ不便かを国民の視点でおもんぱかることができなかった格好だ。


(2)費用対効果に疑問

 あらゆる政策は費用対効果の検討が必要だ。しかし、ICカードへの切り替えは、そうした分析が不足していた。

 ICカードとはいっても、カードの表面にICチップが埋め込まれるほか、裏面にはこれまで同様に磁気ストライプが存在する。韓国にはICチップ専用カードは発行されていない。商店、飲食店では、ICカードであっても、磁気ストライプを利用する必要があるため、機能的には既存のカードと変わらない。磁気ストライプ部分のデータを複製し、カードを不正使用するスキミング被害は、ICカードに変更しても完全に防ぐことはできない。

 磁気カードに比べ、コピーが相対的に困難だというICカードの強みは、ATMなどで現金を引き出す際にだけ発揮される。しかし、金融監督院関係者は「スキミング被害のうち、ATMでの現金引き出しによる被害は1%にも満たない」と指摘した。過去4年間でスキミングによる被害額は440億ウォン(約32億円)あったが、ICカードへの切り替えによる今回の混乱は、年平均でわずか1億ウォン(約730万円)程度の被害を防ぐために起きたことになる。

 それほど効果が小さいにもかかわらず、ICカードへの交換費用は930億ウォン(約68億円)に達する。ICカードの製造コストは1枚当たり2200ウォン(約160円)で、磁気カードの300ウォン(約22円)よりも大幅に高い。つまり、930億ウォンの費用を掛けて、効果は1億ウォンにすぎないことになる。

(3)「海外に先例」と安易に判断

 金融当局がICカード導入を推進した理由の一つが海外での事例だ。フランスは磁気ストライプを兼用せず、ICチップだけを使用するカードへの交換が百パーセント終了。日本でもICカードの導入が推進されている。

 しかし、フランスのようにICチップだけで磁気ストライプのないカードを導入すると、海外旅行時に決済できないという不便が伴う。また、外国人観光客がカードを韓国で使用できないという問題も生じる。

(4)実務担当者の報告だけを信用

 問題点をまともにチェックせず、実務担当者の判断だけを信じ、政策を実行したリーダーシップも問題だ。権赫世(クォン・ヒョクセ)金融監督院長は今月26日、記者団に対し「実務担当者から『さまざまなチェックをして、問題ない』という報告を受けていた。実施してみたところ、問題が拡大した」と語った。実務担当者を責めるだけで、金融当局のトップは自身の過ちとして謝罪しようとしないとの指摘もある。

李陳錫(イ・ジンソク)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版




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