減築念頭に設計される建造物 五輪スタジアムの新たな挑戦
http://jp.wsj.com/Life-Style/node_483462
2012年 7月 25日 14:02 JST Nick Wilson
ロッド・シェアド氏と同氏率いるポピュラスは、オリンピックスタジアムの設計でまるっきり新しい考え方が必要だった
スポーツ関連施設の建築家は数十年耐え得る強靭な殿堂の建築を要請されることが多い。しかし、ロンドンで今後3週にわたって使用される新しい五輪スタジアムは異なる将来像に沿って設計された。減築・改造だ。
冬場のソリのイベントなど、最近はごく一部の目的以外にはほとんど使用されることのない北京の「鳥の巣」のような、将来的に用途がなくなる五輪スタジアムの建設という、よく知られるようになった落とし穴を避けるため、ロンドン五輪の主催者はスポーツ関連施設建築企業のポピュラスに、規模を縮小し将来の異なる利用目的のために改造が可能なスタジアムの設計を依頼した。
その結果誕生したスタジアムでは、2万5000席は常設だが、残りの5万5000席はオリンピック後には簡単に取り除くことができる構造になっている。
難題
ポピュラスのシニアプリンシパル、ロッド・シェアド氏は、同社はこの依頼に好奇心をそそられると同時に当惑したと話す。「論理的には、最初に聞いた時には『素晴らしい』と考えた」と同氏。「北京の例を見ており、お金に糸目を付けないやり方を見てきた。ロンドンではそうはできないことは明らかだ」と語る。
ロンドン五輪スタジアム(英文)/メーン会場となるスタジアムの構造や収容人数など、選手村も含むオリンピックパークに関するデータを画像付きで紹介します。 インタラクティブを見る≫
そうはいっても建築家たちには非永続性に対する用意はない。シェアド氏は、「建物は50年間は存在するとの姿勢がわれわれには備わってる。業界では堅固さと満足さが建物の判断基準だ」とし、「それがギリシャの哲学だった」と続けた。
その結果、「われわれにはどう取り組んだらいいのか極めてぼんやりとした考えさえなかった」という。
チャンス
ポピュラスは現代のスポーツ関連建築の中核企業として名声を築いてきた。同社が手掛けてきた例としては、シドニーの五輪スタジアムやロンドンのアーセナルの本拠地エミレーツ・スタジアムをはじめとするサッカーフィールド、ニューヨーク・ヤンキースの新スタジアムやボルティモアのカムデンヤードといった米国の野球場などがある。しかし、今回のロンドンのオリンピックスタジアムについては全く新しい考え方が必要だった。
シェアド氏は、「一時的という考え方を取り入れなければならなかった」とし、「一時的という概念を恐れてはならない。それはわれわれが達成できることに対する制限ではなくチャンスだ」と話す。
一時的という美学のために、ポピュラスは「これまでの経験とは完全に異なる方法での建築を考え始める」自由を手にした、とシェアド氏。「素材や色といったことに至るまでだ」と。「われわれの設計する建物の大半にそれほど多くの色が使われていないのはなぜか。それは紫外線のために色が損なわれるからだ。5年もたたないうちに、もともとの建築の色あせたバージョンのように見えることから建築家は色を使うのを避ける」。そうした心配がないことから、ポピュラスはオリンピックスタジアムには多彩な色を使用できた。
さらに、「非常に寿命は短いが非常に手ごろな価格の建材」を使用することにより節約もできるという。また、スタジアム内部の永続的な売店の設置を少なくし、その分、建物の外に一時的な店舗を設けることでさらに節約できた。
重要な議論
シェアド氏によると、ロンドンのスタジアムには、北京のスタジアムに使用されたような鉄材もごくわずかしか使用されておらず、これまでの主要な五輪スタジアムのどれと比較しても軽い構造となっている。
こうした新しい手法により軽量の建築物ができるということをめぐる議論が、このスタジアムの当初の姿より長く残ることは確実だ。スタジアムの存続よりも長い期間とまでは言わないが。
シェアド氏は、「このオリンピックスタジアムは、その場に永遠に存在する必要のない建物の大胆かつ明らかな例だろう」とし、「一部の人々は『これは実際の建物でさえない。アイコンではない』とみているし、また他の人々は新種のアイコン、21世紀のアイコンだと指摘している」と話す。
アイコンかどうかは別として、スタジアムの将来は不確かだ。オリンピック後のテナントの選定や、建物の新たな構造の選択のプロセスは長期に及び、時に賛否両論ある入札プロセスのために難航している。
現在、サッカーチーム2つにサッカーカレッジ、さらにこのスタジアムおよび周辺路上でフォーミュラワン(F1)レースを開催する意向の企業といった4つの入札者がスタジアムの支配権獲得をめぐって競っている。落札企業は今秋、決まる予定だ。
記者: Bruce Orwall
http://jp.wsj.com/Life-Style/node_483462
2012年 7月 25日 14:02 JST Nick Wilson
ロッド・シェアド氏と同氏率いるポピュラスは、オリンピックスタジアムの設計でまるっきり新しい考え方が必要だった
スポーツ関連施設の建築家は数十年耐え得る強靭な殿堂の建築を要請されることが多い。しかし、ロンドンで今後3週にわたって使用される新しい五輪スタジアムは異なる将来像に沿って設計された。減築・改造だ。
冬場のソリのイベントなど、最近はごく一部の目的以外にはほとんど使用されることのない北京の「鳥の巣」のような、将来的に用途がなくなる五輪スタジアムの建設という、よく知られるようになった落とし穴を避けるため、ロンドン五輪の主催者はスポーツ関連施設建築企業のポピュラスに、規模を縮小し将来の異なる利用目的のために改造が可能なスタジアムの設計を依頼した。
その結果誕生したスタジアムでは、2万5000席は常設だが、残りの5万5000席はオリンピック後には簡単に取り除くことができる構造になっている。
難題
ポピュラスのシニアプリンシパル、ロッド・シェアド氏は、同社はこの依頼に好奇心をそそられると同時に当惑したと話す。「論理的には、最初に聞いた時には『素晴らしい』と考えた」と同氏。「北京の例を見ており、お金に糸目を付けないやり方を見てきた。ロンドンではそうはできないことは明らかだ」と語る。
ロンドン五輪スタジアム(英文)/メーン会場となるスタジアムの構造や収容人数など、選手村も含むオリンピックパークに関するデータを画像付きで紹介します。 インタラクティブを見る≫
そうはいっても建築家たちには非永続性に対する用意はない。シェアド氏は、「建物は50年間は存在するとの姿勢がわれわれには備わってる。業界では堅固さと満足さが建物の判断基準だ」とし、「それがギリシャの哲学だった」と続けた。
その結果、「われわれにはどう取り組んだらいいのか極めてぼんやりとした考えさえなかった」という。
チャンス
ポピュラスは現代のスポーツ関連建築の中核企業として名声を築いてきた。同社が手掛けてきた例としては、シドニーの五輪スタジアムやロンドンのアーセナルの本拠地エミレーツ・スタジアムをはじめとするサッカーフィールド、ニューヨーク・ヤンキースの新スタジアムやボルティモアのカムデンヤードといった米国の野球場などがある。しかし、今回のロンドンのオリンピックスタジアムについては全く新しい考え方が必要だった。
シェアド氏は、「一時的という考え方を取り入れなければならなかった」とし、「一時的という概念を恐れてはならない。それはわれわれが達成できることに対する制限ではなくチャンスだ」と話す。
一時的という美学のために、ポピュラスは「これまでの経験とは完全に異なる方法での建築を考え始める」自由を手にした、とシェアド氏。「素材や色といったことに至るまでだ」と。「われわれの設計する建物の大半にそれほど多くの色が使われていないのはなぜか。それは紫外線のために色が損なわれるからだ。5年もたたないうちに、もともとの建築の色あせたバージョンのように見えることから建築家は色を使うのを避ける」。そうした心配がないことから、ポピュラスはオリンピックスタジアムには多彩な色を使用できた。
さらに、「非常に寿命は短いが非常に手ごろな価格の建材」を使用することにより節約もできるという。また、スタジアム内部の永続的な売店の設置を少なくし、その分、建物の外に一時的な店舗を設けることでさらに節約できた。
重要な議論
シェアド氏によると、ロンドンのスタジアムには、北京のスタジアムに使用されたような鉄材もごくわずかしか使用されておらず、これまでの主要な五輪スタジアムのどれと比較しても軽い構造となっている。
こうした新しい手法により軽量の建築物ができるということをめぐる議論が、このスタジアムの当初の姿より長く残ることは確実だ。スタジアムの存続よりも長い期間とまでは言わないが。
シェアド氏は、「このオリンピックスタジアムは、その場に永遠に存在する必要のない建物の大胆かつ明らかな例だろう」とし、「一部の人々は『これは実際の建物でさえない。アイコンではない』とみているし、また他の人々は新種のアイコン、21世紀のアイコンだと指摘している」と話す。
アイコンかどうかは別として、スタジアムの将来は不確かだ。オリンピック後のテナントの選定や、建物の新たな構造の選択のプロセスは長期に及び、時に賛否両論ある入札プロセスのために難航している。
現在、サッカーチーム2つにサッカーカレッジ、さらにこのスタジアムおよび周辺路上でフォーミュラワン(F1)レースを開催する意向の企業といった4つの入札者がスタジアムの支配権獲得をめぐって競っている。落札企業は今秋、決まる予定だ。
記者: Bruce Orwall
0 件のコメント:
コメントを投稿