2012年12月30日日曜日

■多重債務者、金融業界の「時限爆弾」に


多重債務者、金融業界の「時限爆弾」に
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/12/30/2012123000163.html
2012/12/30 09:30 朝鮮日報

 京畿道竜仁市に住むKさん(67)は、貯蓄銀行と信用協同組合からマンションを担保に借り入れた2億5000万ウォン(約1900万円)のローンを抱えている。事業資金として借りたものだが、事業に失敗し、高い延滞利息に耐えかね、Kさんはマンションを手放そうとしたが、1年以上売れなかった。

 Kさんのマンションは最近競売にかけられた。一時は相場が7億5000万ウォン(約5700万円)まで高騰したが、現在の鑑定価格は4億8000万ウォン(約3660万円)だ。しかし、競売での落札価格は鑑定価格の70%台が一般的なため、4億ウォン(約3040万円)を回収するのも容易ではない。Kさんは「借金を返せば家もなく、手元に資金はほとんど残らない。どうやって暮らしていけばいいのか途方に暮れている」と話した。

■低信用・多重債務者が23万人

 金融監督院が第2金融圏(銀行以外の金融機関)を含めた不動産担保ローンの現状を調べた結果、「低信用・多重債務」構造が危険な状況に陥っていることが分かった。低信用・多重債務者とは、今年9月末現在で信用等級が「7等級」以下で、三つ以上の金融機関から住宅担保ローンによる借り入れがある人で、全国で23万人を数える。住宅担保ローン利用者の4.1%に相当する。

 金融監督院によると、低信用・多重債務者の多くは貸出金利が高い第2金融圏を利用しており、借金に耐えきれず、結局は金融機関に自宅を奪われる可能性がある。現在延滞がある住宅担保ローン債務者4万人はいずれも7等級以下の低信用債務者となっている。

 韓国金融研究院のソ・ジョンホ上級研究委員は「低信用・多重債務者の中には借り入れで事業資金や生活資金を工面した自営業者が多数含まれている。不況が長期化し、融資を受けた当時に比べ信用等級が低下しているケースが多いとみられる」と分析した。

 現在マイホームを売却しても借金を完済できない人が19万人に達するとされ、監督当局はその大半が低信用・多重債務者だと推定している。家計債務が深刻な社会問題となれば、低信用・多重債務者は問題の発端になりかねない。

■カード不良債権危機より解決困難

 住宅担保ローンの多重債務を制度的に解消しようとしても障害が多く、妙案はなかなか見つからない。権赫世(クォン・ヒョクセ)金融監督院長は「2003年のクレジットカード債権問題をバッドバンク(不良債権を専門に処理する金融機関)で円満に解決したのとは状況が異なる」と指摘した。担保がなく、金額が少ないカード債権とは異なり、融資額が大きく、担保をめぐる権利関係が複雑な多重住宅担保ローンは、解決策を提示するのが困難だ。

 そうした懸念は、ウリ銀行が住宅担保ローンの返済負担で家計が苦しい「ハウスプア」の救済策として打ち出した「トラスト・アンド・リースバック」制度への申込者が、1カ月にわずか1人にとどまったことで現実化している。同制度は家の所有権を銀行に信託し、ローンの利払いの代わりに銀行に家賃を支払う方式だ。しかし、ローン返済滞納者は自宅を複数の金融機関に担保として差し入れているケースが多く、ウリ銀行だけに自宅を信託することができない。制度を利用したくても多重債務というハードルが存在する格好だ。

 これといった対応策がない中、多重債務者の延滞率が危険レベルに達した場合、銀行以外の金融機関から致命的な打撃を受ける。担保となっている住宅の処分権は銀行が優先で、いわゆる第2金融圏は後回しとなるためだ。権院長は「多重債務者の住宅が大量に競売にかけられた場合、不動産価格の下落を招き、それによって金融機関の不良債権が増大することになる」と懸念を示した。

 専門家は第2金融圏が崩壊すれば、「債権者のジレンマ」と呼ばれる現象が起き、銀行も安心できなくなると警告する。債権者のジレンマとは、金融機関が不安感を感じ、争って債権を回収しようとすると、返済能力が不足する債務者が裁判所に個人破産を申請し、結局どの金融機関も債権を回収できなくなることを指す。祥明大金融経済学部のユ・ギョンウォン教授は「多重債務者が多く、債権者のジレンマが一気に襲う可能性があるため、当局は秩序ある債務調整案を事前に準備する必要がある」と指摘した。

■相互金融機関の破綻懸念

 多重債務者が返済に行き詰まると、第2金融圏の中でも農協、漁協、山林組合、信用協同組合、セマウル金庫などの相互金融機関が最も深刻な打撃を受けると予想される。それだけに多重債務者は金融業界、特に相互金融機関にとって「時限爆弾」とも言える存在だ。

 相互金融機関は全国に約2300カ所あり、いずれも規模が小さい。しかし、資産を全て合計すると6月末現在で438兆ウォン(約33兆円)に達する。相互金融機関の預金には利子所得税の減免制度があるため、余裕資金が集中した結果だ。このため、相互金融機関の資産は貯蓄銀行(預金業務を中心とする業態の銀行)全体の資産規模(60兆ウォン=約4兆5500億円)の7倍を超えるため、不良債権問題が拡大すれば、波紋は貯蓄銀行破綻よりも深刻とならざるを得ない。




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