2012年4月16日月曜日

■レコード業の終末が来たか?  …中国


■レコード業の終末が来たか?  …中国
http://www.chinapictorial.com.cn/jp/se/txt/2012-03/06/content_432326.htm
中国画報  文・劉海楽

2012年の新年が過ぎたばかりの頃、中国大陸のレコード界の風雲児宋柯は自分のミニブログで、太合麦田CEOの職務を退き、北京ダック店を経営すると突如宣言した。このニュースは、中国の音楽業界に大きな爆弾を投げこんだような騒ぎを引き起こした。宋柯本人は「辞職は個人的な行為で、音楽業の盛衰と関係はない」と力の限りを尽くして釈明したが、彼がいまという音楽業界が振わない敏感な時期にここから黙って退くことは、彼がしばらく前に語った「レコードはもう死んでしまった」という言葉との連想は免れず、人々にレコード業の終末がもうやって来たかと思わせるものであった。

レコードはもう死んでしまったのか?

伝統的なレコード業の衰退はもう目新しいニュースではなくなっている。2011年は、レコード業の「衰退歌」がたえず聞こえ、一つまた一つと悪いニュースが次々と現れた年であった。

2011年3月、太合麦田CEOの宋柯は上海で開かれた「東方風雲歌手フォーラム」で「レコードはもう死んでしまった」との悲観的な言論を発し、歌手との契約終了を宣言した。この事件は中国のレコード業に大きな衝撃を与えた。2004年に成立したこのレコード会社は内陸で最大のレコード会社の一つで、中国で最も市場への訴求力を持つ歌手、たとえば、李宇春・朴樹・刀郎・老狼・葉蓓らと契約を交わしたことがある。中国内陸のレコード業界を牛耳り、その行動は業界内の風向計ともなっている。

6月、東方広場のFABレコード店が突然閉業を宣言した。一軒のレコード店の閉業にもかかわらず、業界やファンに大きな波紋を呼び起こした。閉業の原因は店舗のレンタル契約が満了したためと公に発表されたが、その背後にはレコードの売り上げ枚数が引き続き下がっている現状があった。レコード店はとりあえずは消え去ることはないが、CDという音楽キャリヤーは普通の消費品からコレクション品へと変わりつつあり、その利用者の範囲は減少する一途をたどっているとFABの責任者さえもが認めざるを得ない状況にある。

10月末、日本最大のレコード会社、エイベックス・グループは5年にもわたって運営してきた中国内陸のレコード会社を解散した。エイベックス中国のある匿名の従業員によると、そのとき、日本本社の管理職層に変動が起こり、新任の管理者層は中国内陸のレコード業が不振で利潤が出ないため、中国内陸でのレコード業務の停止を決めたという。

伝統的なレコード業が下り坂であるのは論議の必要もないほど明確な事実となっている。特に中国内陸では、統計によると、CDレコード市場は毎年20%のスピードで衰えている。「レコード業が最も盛んな時期には、一枚のCDアルバムの発行枚数が100万に達すればゴールド版のCDアルバムに、200万枚にならプラチナ版のCDアルバムになり、発行枚数が幾千万を超えるものもまれではありませんでした。しかし、現在、販売枚数が数万枚に達したら、成功とみなされます。周傑倫(ジェイ・チョウ)のような有名スターの最新アルバムでさえ15万枚しか売れません」と、中国音像協会の王炬常務副会長は語る。

中国のレコード業界が巨大な危機に瀕しているだけでなく、海外市場も同様である。特に昨年、世界で最大の数社のレコード会社に変化が生じ、人々に伝統的なレコード業の不景気が世界的な問題であることを意識させた。2011年10月10日、ソニーミュージックは、ホイットニー・ヒューストン、バックストリート・ボーイズ、ジャスティン・ティンバーレイクなどの有名な歌手を出したことがある3つの名門レーベル、アリスタ・ジャイヴ・J・レコーズを閉鎖させた。11月中旬、数年にわたって経営困難にあった世界四大レコード会社の一つで、百年の歴史があるイギリスのEMIレコードが、競争相手のユニバーサル・ミュージック・グループに買収された。

業界内のある人物によれば、伝統的なレコード業の衰微は、一つには海賊版の衝撃のため、もう一つには、インターネットの普及がその原因である。インターネットで毎日数え切れないほどのダウンロードできる音楽が現れ、特別に音楽コレクションが好きな熱狂的なファンのほかは、人々はレコード店のCDの棚には注目しなくなり、便利かつ自由なインターネットからの音楽のダウンロードに慣れてしまった。このインターネット時代に、音楽消費者の消費行為がひそかに変わってしまったのである。

レコードはもう死んでしまったという悲観的な声が絶えないが、現実の中で人々が音楽を使う頻度は大いに増加している。業界内では、「死の危機」に瀕しているのはただ伝統的なレコードの背後にある商業パターンだけだと考えられている。それは、歌手と契約して、歌を制作し、CDを録音して、CDを売り出し、利益を得るというそれである。統計によれば、現在、中国内陸で音楽本体のレコード産業の売り上げ額は2億元足らずだが、音楽に関連する産業の売り上げ額は2000億元以上に上る。これによっておかしな現象が現れてきた。伝統的なレコード産業はたえず衰退しているが、関係産業はたえず成長しているのだ。

デジタル時代の音楽の生存の道

中国のいかなる都市を歩いていても、公共バスや地下鉄の中で、MP3やiPod、スマートフォンを手に持ち、イヤホンをつけて音楽の世界に浸っている若者をよく見かける。携帯デジタル音楽のターミナル製品の流行にしたがって、人々はインターネットからの音楽ダウンロードに慣れてしまった。インターネットによるデジタル音楽というスタイルに対して、音楽ファンの多くはそれを歓迎している。インターネットからの音楽のダウンロードは便利で速く、費用があまりかからないか、または無料である。このため、時間を費やしてレコード店に行って、CDを購入する必要がなくなった。インターネットの普及にしたがって、それが好ましいかどうかには関係なく、デジタル音楽時代はもう私たちの前に来ていることは確かである。

デジタル音楽の衝撃の下で、伝統的なレコード産業は空前の危機に直面している。何を捨て何をとるか、レコード業者はいま模索している。かつて、世界四大レコード会社は協力してデジタル著作権管理を推進し、ユーザーのインターネットからの歌のダウンロードを制限しようと試みたことがある。しかし、その結果、音楽の流行に足かせをはめ、人々のレコード業界の巨頭企業への反感を引き起こし、かえって四大レコード会社を衰退に追いやったため、四大レコード会社は最終的にこれを放棄するよりほかなくなった。伝統的なレコード市場の衰退に直面し、一部のレコード会社は契約歌手のコンサートやショーを通じて利益をあげているが、多くのレコード会社はデジタル音楽を「抱え込む」道を選んだ。インターネット会社やモバイル通信サービスプロバイダーと提携し、デジタル時代の生存空間の開拓に力を入れようとしているのである。

巨大なインターネットユーザーに対して、四大レコード会社の一つであるEMIは、中国内陸で最大のサーチエンジンの百度と協力して無料で音楽の試聴サービスを行ったことがある。それからしばらくして、新浪網とユニバーサル・ミュージック、ソニーとBMG、ワーナーとザ・ローリング・ストーンズなどのレコード会社が協力して成立させた「新浪楽庫」が正式に登場した。谷歌(グーグル)中国は自社の音楽検索サービスを出した。歌曲データベースはソニーなど世界四大レコード会社と140社の中・小レコード会社のすべての著作権取得済み音楽が含まれている。実際、インターネット会社とレコード会社はユーザーが料金を払って歌をダウンロードすることを期待しているわけでなく、無料の音楽サービスを通じて、多くのクリック数を獲得し、これによってもたらされる広告収入が一定の割合で利益分配されるのを望んでいる。今や、このような広告によって一定の割合で利益分配を受けるモデルが、百度・搜狗・多米音楽などの中国最大のオンライン音楽プラットフォームとレコード会社との提携を助けている。

有料音楽ダウンロードもレコード会社の収入源の一つとなっている。最新の統計では、中国のインターネットユーザーは5億人を超えている。携帯電話のユーザーは9億人以上に達している。彼らが構成する巨大なユーザー群に対して、レコード会社は有料音楽ダウンロードウェブや、通信プロバイダーと提携した携帯の呼び出し音楽ダウンロードや視聴などの無線音楽サービスを通じて、巨大な利益を得ている。たとえば、アップル携帯のためのiTunesショップ、またノキアが出したOvi Storeなどを通じていつでもどこでも便利に有料音楽ダウンロードを行うことができる。

デジタル時代になり、レコードは姿を消すかもしれないが、音楽はこれからも長く存在し続ける。「将来、CDやレコードという形で存在する実体物はなくなるかもしれませんが、音楽関係産業には限りない発展の余地があります。この点は今や現実のものとなっています」と、中国音像協会の臧彦彬副会長は語る


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