2012年4月15日日曜日

■観光統計 共通基準の導入へ再考を

観光統計 共通基準の導入へ再考を
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/297164
=2012/04/14付 西日本新聞朝刊=

 観光庁が「観光立国」を推進するため、2009年に決めた観光統計の全国共通基準について、全国47都道府県のうち、福岡県と大阪府だけが財政難を理由に導入を見送っている。

 これまでの観光統計は、都道府県で観光客入り込み数の集計期間や、実数か延べ人数かなど基準がばらばらだった。

 共通基準では、調査方法などを統一してデータの精度を高め、観光政策の立案や検証に役立てる狙いがある。

 10年から40都道府県が導入し、11年に5県が加わった。すべての都道府県が導入すれば、全国、ブロック単位の観光戦略に役立つデータとなるだけに、2つの府県のため全体の足並みがそろわないのは遺憾と言わざるを得ない。

 共通基準では年4回、全国で約2万カ所に及ぶ地点で観光客数を集計し、各都道府県で最低10カ所以上の地点で対面式の聞き取り調査を実施する。

 観光客の居住地や性別、年齢層、日帰りか宿泊かの区別、どこを訪れどこに向かうのか、利用した交通機関、宿泊代や飲食代、土産代なども細かく把握する。 これらのデータを基にして、観光客数の推移や1人当たりの観光消費額の推計値なども算出できる仕組みだ。

 日本の人口が減少する中、政府は観光を消費や生産活動の縮小などを補う「成長産業の一つ」と位置付けている。

 観光庁の試算によると、定住人口が1人減少した場合の年間消費額の低下は、国内日帰り旅行者79人▽国内宿泊旅行者24人▽外国人旅行者7人で、それぞれ補うことができるという。

 料理の食材やお土産などを考えれば、観光は1次産業から2次産業、3次産業まで幅広く関わる総合産業でもある。

 九州では05年に、麻生渡・福岡県知事(当時)などの呼び掛けで、官民一体となった「九州観光推進機構」をいち早く設立した。「九州はひとつ」を理念に、ブロック単位で広域的な観光振興に力を入れているのは周知の通りである。

 共通基準を導入した場合、その調査費は年間700万―1千万円程度かかるとされる。福岡県国際経済観光課は「必要性は理解しているが、財政上の理由で、これまで予算化は実現できていない」という。大阪府も同様の理由を挙げる。

 だがこれには疑問を感じる。財政が厳しいのは他の自治体も同じだろう。

 統計調査は、短期的には費用対効果が見えにくいかもしれないが、共通基準のデータを蓄積すれば、さまざまな施策の判断に役立つ資料となり得る。

 「観光客の居住地はどこが多いのかが分かれば、効率的にイベントを開くことができる」「観光客の消費行動に応じた商品開発が可能になる」など、知恵と工夫次第で活用法は幅広い。

 福岡県はアジアの玄関口として、九州の広域観光や海外客呼び込みをリードする役割や責任を担うはずだ。共通基準の導入はぜひとも検討してほしい。

0 件のコメント:

コメントを投稿