2012年8月29日水曜日

■セルフサービス空港-米航空各社、搭乗手続き自動化推進へ


セルフサービス空港-米航空各社、搭乗手続き自動化推進へ
http://jp.wsj.com/Business-Companies/node_502080?mod=Right_pickfree
2012年 8月 28日  12:58 JST

 【ラスベガス】米国の航空会社は、空港の手続きの自動化を進めており、次の大きなステップのための土台を築こうとしている。空港の建物に到着した時から飛行機に搭乗するまでの間、航空会社職員に1人も会わないで済む手続きだ。

 長年にわたって、乗客はオンラインないし空港キオスク(自動チェックイン機)でチェックインしており、さらに近年では航空会社は紙のボーディングパス(搭乗券)を電子パスに切り替えた。いまや航空会社は、乗客が自分の手荷物をチェックインし、ボーディングパスをスキャンできる技術に頼ろうとしている。ただし必ずしも支障が生じないわけではない。

 近い将来の空港では、「乗客の皆様の最初の出会いが、機内での客室乗務員になる可能性がある」とアラスカ航空(アラスカ・エア・グループ傘下)のベン・ミニクッチ氏は言う。同航空は米国ではセルフサービスの先駆者で、シアトルとサンディエゴで手荷物のセルフタギング(タグ付け)を最近導入。年内に8つの空港で導入する予定だ。

 アメリカン航空(AMRコープ傘下)はテキサス州オースティン空港でこうした技術をテストしたあと、向こう2年間でニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴなど主要空港にキオスクを展開して、乗客に自分のチェックイン手荷物をタグ付けさせる。また先月には、ラスベガスでジェットブルー航空が米航空会社として初めてセルフボーディングゲートを正式に実施した。乗客は自分自身の航空券をスキャンして搭乗できる。

 航空会社各社は、高度技術によって、手慣れた乗客のために空港の搭乗手続きを迅速化できると述べている。手荷物のチェックインだけで1分ないし2分間の短縮になるという。その間、航空会社職員は乗客との質疑応答に集中できる。

 しかし航空会社の従業員組合は、こうした自動技術の導入は、搭乗前手続きを乗客にアウトソースすることによってスタッフを削減する手段だと警戒している。国際機械工・宇宙航空労働者組合(IAMAW)のスポークスマン、フランク・ラーキン氏は「それが乗客が強く要求しているものでないことは明らかだ」と述べ、「技術が増えれば増えるほど人が減るか? わたしはそうは思わない」と述べた。

 ジュネーブに本拠を置く航空ITプロバイダー、SITA社の最近の調査によれば、セルフボーディング方式は乗客の70%にアピールしており、ほぼ同率の乗客が自分の手荷物を自分でタグ付けしたいと考えている。

 国際航空輸送協会(IATA)は2020年までに世界の乗客の80%に対して完全なセルフサービス航空手続きを提供したいとしている。そうなれば航空業界にとって年間21億ドルのコスト削減になるという。ただしIATAもSITAも、自動化履行コストを明らかにしておらず、個々の航空会社も公開していない。

 米航空会社と空港は、欧州の現状に追い付こうと努力している。欧州ではドイツ・ルフトハンザ航空が1990年代末にセルフボーディング方式を開始した。同航空はドイツの3つの主要ハブ空港でこの方式を正式に履行し、乗客はこれにうまく順応しようとしているという。

 ルフトハンザのスポークスマン、アーゲ・デュンハウプト氏は「われわれの乗客の多くはフリークエントフライヤー(常連の乗客)で、スタッフとずっと話をしないでいられるほうを好む傾向が強い」と述べ、「彼らはオンラインでチェックインし、携帯電話のボーディングパスを得て、自動ボーディングゲートでそれを使っている」と述べた。

 ブリティッシュ航空とイベリア航空(いずれもインターナショナル・コンソリデーテッド・エアラインズ傘下)もまた、各種のセルフサービス方式を導入している。

 米国でセルフサービスを推進する前線はスロットマシンが1600台あることで有名なラスベガスのマッカラン・インターナショナル空港だ。同空港の新ターミナルではセルフタギングないしセルフボーディング技術を備えた14のゲートと150台のキオスクがある。

  最近のある平日、カナダのウエストジェット航空の搭乗客は、手荷物タグを印刷するキオスクの助けを得て、チェックイン手続きを大方スムーズに行っていた。しかし、その手続きはとても完全に自動化されているとは言えなかった。一握りの搭乗客が自分自身の手で手続きを行っていたものの、大半の搭乗客についてはウエストジェットの従業員がキオスクの画面を操作し、タグを付けてあげていた。手荷物を預ける場所には、より多くの従業員が待機し、タグと搭乗券のスキャンを行っていた。

 セキュリティーチェックを過ぎると、格安航空のジェットブルーのゲートの担当者が構内放送を通じて、セルフボーディング方式による搭乗手続きの説明をしていた。搭乗を待つ客の大半はセルフボーディング方式に好意的な見方をしていた。

 カリフォルニア州サンマリノから来たカール・ミルキーさんは、「これってすごくない? 全てがちゃんと動けば、おそらく時間の節約になるよね」と話した。何分か後、ミルキーさんは2つある搭乗ゲートのうち片方を通過した。このゲートは正しい搭乗券がスキャンされるとプラスチックのドアが開くという仕組みだ。しかし、ミルキーさんの妻レイラさんはあまり幸運ではなかった。

 システムがレイラさんのチケットを認識しなかったとみられ、ゲートは閉まったままだった。そのため、搭乗者の列の動きが止まってしまった。結局、ゲートの担当者はレイラさんをゲートの横に誘導した。システムはレイラさん以外の人もストップさせ、担当者はそのたびにシステムを停止し、手動で手続きをするありさまだった。

 ジェットブルーのゲートの担当者、デービッド・ウィクバーグ氏は「システムに負担をかけ過ぎた」と話し、混雑を緩和させてくれることが多いため、普段は自動ゲートの方が好きだと付け加えた。

 しかし、ジェットブルーの乗客シャイ・ホリさんは、航空会社が重要な対人コミュニケーションを一つ忘れていると指摘し、こう言った。「機械は『楽しい空の旅を』とは言ってくれないからね」。

記者: Jack Nicas 、Daniel Michaels



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