2013年3月28日木曜日

■【萬物相】男が50歳を過ぎたら


【萬物相】男が50歳を過ぎたら
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2013/03/27 22:05 朝鮮日報

 おととし、ある文学賞の受賞式後の飲み会に遅刻してしまった。年配の審査委員らはすでに会場を後にしていた。受賞者の年齢は40代半ばだったが、会場には同じ年代あるいは少し若い人たちだけが残っていた。すると40歳を超えたばかりのある作家が私に「ようこそ」と声を掛けたかと思うと、周りを見ながら「今この会場に50歳以上の人はあなたしかいないよ」とささやいた。小学生がサッカーをしているときに、空気を読まず仲間に入ろうとする中学生のように、突然恥ずかしい気分になった。

 詩人の金芝河(キム・ジハ)氏は50歳を超えたばかりのころ、視界がぼやけるようになったのをきっかけに「50歳」という詩を書いた。金氏はある日、妻が外出して一人になったときに「目は魂の網/魂は真っ暗になった」と詠みながら針と糸を手にした。金氏はチョゴリ(上衣)にボタンをつけようとした。「糸を切る歯先」がしみてくるような年齢になると、糸を簡単に切ってくれるはさみが手元にないと困る。その時に「目がよく見える妻」が帰ってくる物音がした。詩人は「はさみの音」のように感じ妻の帰宅を喜んだという。

 詩人の鄭一根(チョン・イルグン)氏は50歳を過ぎたある日、1人で夕食の準備をした。朝のうちに作った汁物の鍋のふたを開けると、突然腐った臭いが鼻を突いた。鄭氏は「この奇襲攻撃のような、不可抗力の臭いのように、男の50歳はやってくるんだなあ」と考えながらこの汁物を捨てた。心理学者によると、男が50歳を過ぎれば「第2の思春期」を迎えるという。ちょっとしたことでイライラし、すぐに泣き出してしまうこともあるらしい。また50歳を過ぎると知識や経験も豊富になり、若い人たちにあれこれおせっかいもしたくなるため、世代間の葛藤も増えてくる。そのためか退職して仕事をしなくなると雑念が増え、自分で自分の心と体を痛めつけてしまうことがよくあるようだ。

 韓国でベビーブーム世代といわれる50歳から58歳の年代は715万人もいる。親の世話だけでなく、子どもを大学に行かせ、結婚もさせなければならないため、人生のあらゆる重荷を背負っているかのようだ。男たちは老後の備えもできていない平均53歳の若さで仕事をやめてしまう。家では家長としての権威もずいぶん前から色あせた。元気を失った50代の男たちが増えたためか、彼らを慰めるための書籍が相次いで出版されている。

 57歳の社会学者、ソウル大学の宋虎根(ソン・ホグン)教授は著書『彼らは声を出して泣かない』を出した。50代は基礎老齢年金を受給するにはまだ若い。事業に失敗すればたちまち貧困層に転落だ。宋氏は「プライドを捨てて新しい仕事を見つけ、趣味で料理でも習えば生き残れる」とアドバイスする。54歳の詩人、イ・ガプス氏は著書『50歳の発見』の中で「昔の楽しい記憶を生かして今後の知恵にしよう」と呼び掛けた。男が50歳になって過去を振り返ると、誰でも後悔することが山のようにたくさんあるはずだ。それでも人生のさまざまな苦労を乗り越え、何とかここまで生きてきた。50歳という沼にはまって全ての活動をやめるのはまだ早い。まだまだ元気は残っているはずだ。



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