2012年1月31日火曜日

■日本を訪れる中国人観光客数が大幅回復


日本を訪れる中国人観光客数が大幅回復
http://jp.wsj.com/World/China/node_383410
2012年 1月 30日  21:55 JST  ウォールストリートジャーナル

 【東京】福島第1原子力発電所の事故を受けて中国人観光客の足がいったんは日本から遠のいていたが、最近になって、日本を訪れる中国人観光客数が過去最高水準まで回復し、苦戦する国内の小売り、観光セクターにビジネスチャンスと希望を与えている。

 春節(旧正月)の連休中に数百万人の中国人がアジア各地などを訪問したが、中国本土からの旅行者は、北海道のスキーリゾートから東京の家電店、京都の古寺に至るまで、日本の人気の観光地にも集まった。これは昨春と比べると様変わりだ。3月11日の原発事故発生後に放射能を巡る懸念が広がり、日本の観光業はほぼ停止状態にまで追い込まれていた。

 昨年12月には、日本を訪れる中国人観光客数は前年同月比32%と大幅増加し、過去最高の8万人となった。昨年11月にも同様の伸びが示されていた。今年1月にもさらに大幅増加したもようだ。

 先週のある午前中、中国人観光客を乗せたツアーバスが秋葉原の目抜き通りに列を作った。家電量販店Akky Oneは中国語を話す約50人をはじめとする販売員全員を秋葉原の免税店舗に動員し、主に日本人客を対象とする同地区の他の2店舗については午前中の営業を一時的に停止した。

 買い物客は子供連れの家族や若いカップル、企業のグループなど様々で、その多くは初めて海外旅行をする人々だった。そのなかの1人で引退前は会計士だった山東省から来たLiu Gai Hongさん(67)は、公務員の息子と2人の孫とともに、6日間のツアーに参加した。Hongさんは青色のJVCケンウッドのビデオカメラを2万6000円で購入。高齢者グループでの活動に使うつもりだという。彼女は、「中国でも売られているが、本当に良いものは日本でしか手に入らない」とにこにこ顔。

 通りを挟んだラオックスの店舗での売れ筋は、熱伝導率を高めるためにダイヤモンドと銀でコーティングした内釜を特徴とする5万4800円の炊飯器などだ。ラオックス本店の店長、岡野智彦氏は、中国人客は1人平均7万円くらいの買い物をしていると話す。「中国の方は ブランドに敏感で、メイド・イン・ジャパンを好む」という。一方、欧米人はというと、「Tシャツなどのおみやげものが多い。1人当たり1万円にはとても届かない」と語った。


日本を訪問する外国人数の前年比での推移

 日本を訪れる中国人観光客数は昨年9月ごろから回復し始めた。これは、長引く景気低迷や少子高齢化に苦しむ経済のてこ入れのためには、いかに中国の力強い経済成長が手助けになるかを浮き彫りにしている。中国は現在、日本にとって最大の貿易相手国となっており、中国からの直接投資額は元々が低水準とは言え、ここ数年、大幅に拡大している。米国や韓国といった中国以外の諸国から日本を訪れる観光客数が引き続き、東日本大震災以前の水準を下回るなか、日本を訪れる中国人観光客数の回復は群を抜いている。

 日本政府はここ数年、中国人観光客の取り込みに積極的で、訪問者数の拡大を目指して査証の条件を緩和している。中国人観光客の増加に対する期待は非常に大きい。政府は、長期景気拡大戦略の一環として、2020年までに日本を訪れる外国人観光客数の2000万人への増大を期待しており、なかでも中国人観光客数が600万人に達することを見込んでいる。昨年は日本を訪れる外国人数は前年比で28%落ち込み621万人と、03年以降で最低水準となった。福島第1原発の事故に加え、対ドルをはじめとする円の大幅高で日本を訪れるのがますます割高になっていることなどが背景だった。中国からの観光客数も昨年1年間では前年比26%減少し140万人となったが、それでも、5年前の水準と比較すると2倍近くの水準だ。

 日本政策投資銀行関西支店の副調査役、坪倉大輔氏は、「こういう世界経済のなかで、成長分野は限られている。(中国人向けの観光は)その数少ない成長分野の一つとして、しっかり伸ばしていきたい」と言う。例えば、日本第2の都市、大阪は20年までには人口の28万人の減少と、それに伴う消費の落ち込みが予想されている。しかし、観光業の伸びで大阪の年間の個人消費は25億ドル(約1900億円)膨らむ可能性がある。坪倉氏は「中国人客の増加で、消費減少額の6割程度補完できる可能性がある」と語る。

 観光業界の幹部らは、中国人観光客とのトラブルが時々みられていると指摘する。レストランやカラオケルームに大勢で訪れるにぎやかな中国人観光客に戸惑うホテルの日本人宿泊客からの苦情などだ。お台場の温泉テーマパーク、大江戸温泉物語では、温泉で歯を磨いたり、体を洗う使用済みのタオルをお湯に浸けているという日本人客からの苦情が聞かれる。

 大江戸温泉物語では中国人観光客相手の売り上げを増やすため、中国の主要都市にマーケッティング責任者を派遣したり、土産品店には中国人観光客に人気の商品を取り揃えるなど、力を入れている。こうした努力が実を結び、春節の連休当初から、同温泉の客数は全体で1日当たり約1700人に増加している。通常は1日当たり1300人程度だ。

 大江戸温泉物語の副支配人、古山律子氏は、「震災後、ここまで回復してくると思っていなかった」と語った。その上で、「今は春節が終わって、2月がどうなるのか心配」と続けた。



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