2012年1月31日火曜日

■春節で日本へ一時帰国 今度帰国する際には日本の土地や有力企業を漁りに来る中国人買収団で溢れている!?


■春節で日本へ一時帰国
今度帰国する際には日本の土地や有力企業を漁りに来る中国人買収団で溢れている!?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/31669
2012年01月30日(月)

北京のランダム・ウォーカー

 中国が春節(旧正月)連休のため、久々に日本に一時帰国した。北京から成田へ向かう飛行機は、中国人旅行客で満員で、化粧品から宝石、時計、電化製品に至るまで、これから降り立つ日本での買い物談義にワイワイガヤガヤ。隣席に座った30代の中国人カップルに、「なぜ中国でなく日本でわざわざ買い物するの?」と聞いたら、「日本にはニセモノがない」「中国は税金が高すぎる」と明快な答えが返ってきた。

 その後、東京のそこここで、中国人団体観光客の買い物姿を見つけた。寿司屋や懐石料理の店でも、中国人が和食に舌鼓を打っているのを目撃した。日本のメディアはこれを「春節特需」などと、こぞって取り上げていた。

 だが、考えてみれば日本人の観光客だって北京で万里の長城に登るし、北京ダックだって食べる。それを中国メディアは「日本特需」などとは呼ばない。つまり中国人は、世界第二の経済大国の国民として、遅ればせながら「春節休暇を海外で過ごす」というライフスタイルを開始しただけのことだ。ちなみに中国での今年の春節旅行の一番人気は日本ではなく、モルジブだった。2位がハワイで3位がヨーロッパ。日本はその次である。

 私は北京から来たとはいえ、「春節特需」の主役たる中国人旅行客ではない。だが中国人旅行客とはまた別な意味で、短い東京滞在中、「不思議な国ニッポン」に、タメ息をつくことしきりだった。

 私が成田に着いた時、国会では野田首相が施政方針演説を行っていて、思わず街頭テレビの前で歩を止めて、首相の演説に聞き入った。野田首相は、今年を「日本再生元年」にすべく、社会保障と税の一体改革が必要であり、それと同時に政治・行政改革を行う。多くの現役世代が一人の高齢者を支える「騎馬戦型」から一人が一人を支える「肩車型」に日本社会が急速に移行していく中で、いますぐこれらの改革が必要である。

 外交においては、大西洋の時代からアジア太平洋の世紀へ世界の歴史の重心が大きく移りゆく時代であり、チャンスとリスクが交錯している。日本の再生は、豊かで安定したアジア太平洋地域なくしてあり得ない・・・と述べた。そして最後に、「私は大好きな日本を守りたいのです。この美しいふるさとを未来に引き継いでいきたいのです」と結んだ。

 それは、誠に格調高い演説だった。久々に日本語の演説を聴いたせいもあったかもしれないが、私は感動すら覚えた。だがせっかくの名演説も、野党の野次が入り、途中何度も中断された。いつも北京で見ている温家宝首相の演説には、会場からは拍手しか入らないので、野次というのは新鮮だったが、どうにもいただけない。またその後、野党の各党首がマスコミに囲まれて、首相の演説を精一杯批判していたが、これも理解に苦しんだ。
 私はこの施政方針演説を、耳をそばだてて一言一句漏らさず聴いたが、百パーセント正論を吐いていると思った。小泉首相が退任して以降、日本の最高権力者にふさわしくないような政治家が現れては消え、ということを繰り返していたが、ようやく常識・良識・見識のある政治家がトップに立ったと嬉しくなったものだ。

 ところが野田首相は国会内で、寄ってたかってイジメに遭っているではないか。なぜこんなことになるのだろう? 日本の昨年の流行語大賞は、国民一体となって大地震からの復興を果たしていくという想いを込めた「絆」ではなかったか。

 翌日晩、与党・民主党の旧知の幹部議員たちが、一時帰国の歓迎宴を開いてくれた。そこでも話の中心は、「消費税解散」と「ポスト野田」である。解散もポスト野田もいいが、日本はトップの首を挿げ替えて、それで良くなるのか?

 昨年11月、玄葉外相が訪中した際、楊潔篪外相は、8人目となる日本の外相と握手した。翌月に野田首相が訪中した時、胡錦濤主席は、7人目となる日本の首相と握手した。今回、国会で野田政権をイジメ倒して、中国首脳がそれぞれ9人目の外相、8人目の首相と握手することが、日本の国益にとってプラスになるとでも思うのか。

 消費税に関して言えば、EU諸国は20%程度だし、中国も約17%だが、それによって国民が瀕死に喘いでいるという話は聞かない(EUのソブリンデット危機は消費税とは無関係だ)。しかも野田首相は、消費税率アップの事由も明確に述べ、かつ衆議院比例区の80議席削減、公務員給与の約8%削減も謳っている。

 ところが、野党ばかりか、民主党内からも消費税反対ののろしが上がっているではないか。野田首相の方針は民主党のマニュフェスト違反だというのがその理由だが、これほど世界情勢と国内情勢(地震、原発事故も含む)が劇的に変化している中で、2年半前の「常識」がいまも通用すると考える方がおかしい。

 しかもマニュフェスト発表当時の野田首相は、一介の野党議員にすぎなかった。それから与党になり、財務大臣を経験し、視野も広がって消費税アップは止むなしとの結論に至った。だから昨年8月の民主党代表戦でも、同月に『文藝春秋』に発表した論文でも、消費税率アップに触れている。つまり野田首相としての齟齬はないのだ。

 そもそもいま日本は、こんな小さな「コップの中のケンカ」をしている場合ではない。隣の中国はいま何をしているか。この春以降、エネルギー危機が起こる可能性が高まってきたと見て、中東に頼らない原油と天然ガスの確保に、国を挙げて取り組んでいるのだ。具体的に一例を挙げると、カギを握るのは親イランでエネルギー大国のロシアと見て、4月に大統領選を控えたプーチン首相に恩を売り、取り込みを図っている。また今後、欧米とイランとが一触即発になった場合、どうやって最大の国益を確保するかを模索している。

 また、秋のアメリカ大統領選でロムニー候補が勝利した場合、アジア太平洋政策はどう変わるのかについての分析を開始した。それは、主要ポスト候補者の経歴から、予算編成、第7艦隊の再編具合、対中政策の変化に至るまで多岐にわたるものだ。加えてアメリカへは、2月初旬に習近平副主席を送り、秋に胡錦濤総書記から「政権交代」するための準備に余念がない。

 この春起こる可能性があるエネルギー危機というのは、当然ながら日本も他人事ではない。日本のエネルギーの約10%を依存しているイランを「経済制裁」の名の下に切った場合、どう補填するのか。日本へ向かう原油の8割が通過するホルムズ海峡が閉鎖されたらどうするのか。
 そうでなくても、この春、国内の原発が次々に止まる可能性がある。定期検査後の再開にノーの声が上がることが予想されるからだ。そうすると原発が賄っている全エネルギーの3割はどこから持ってくるのか。さらに、中東危機で原油価格が1バレル200ドルに急騰したらどうするのか。

 本来、国会で議論すべきは、こういった国の生殺与奪を握る大事ではないのか。日本の平和ボケと、内向き思考はかなり重症である。そんな日本を横目で見やりながら、中国は、「アジア代表」として台頭し、君臨していくのだ。

 私が数年後に日本に一時帰国する際には、同乗する飛行機には、日本での買い物を夢見る中国人観光客ではなく、日本の土地や有力企業を漁りに来る中国人買収団で溢れているのではないか---北京へ戻る機中で、そんな「近未来図」が、ふと頭をよぎった。



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