2012年5月3日木曜日

■中国震災後のデータが明かす中国人の対日関心度意外に低い津波、高いのは震度、粉ミルク、化粧品



中国震災後のデータが明かす中国人の対日関心度意外に低い津波、高いのは震度、粉ミルク、化粧品
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35055
2012.04.25(水)

 昨年3月11日に発生した日本の東日本大震災は、中国においても前代未聞の「9級地震」と伝えられ、テレビが見られる環境の人の多くにとってインパクトの大きいニュースとなっていた。

 「9級地震」というのはとかくインパクトがあるようで、日本人の友人がいる中国人は電話やネットを通じて連絡をし、中国の子供ですら会って口を開けば「9級だよ、9級!」と連呼する始末。


 意外に関心の低い大津波情報

 震災後、日本の南海地震予測が発表されると、大津波が上海などの沿岸部に届くのではという動揺がネットを駆け巡った 東日本各地を飲み込む大津波の動画は中国の動画サイトでもアップされているが、大津波をネットで見たという人は筆者の周囲だと意外に多くなかった。

 一般庶民は、大地震と大津波とセットで「9級地震(マグニチュード9クラスの地震)」と認識、津波については津波なるものが大変だったらしい、というのがニュース番組内の一瞬の映像、ないしは新聞の一面の画像で伝わった程度である。

 もちろん情報に地域差はある。日々日本の話題がバスで地下鉄で地元向けテレビで紹介されていて親日な上海では、地震直後に日々報じられていたのはもちろんのこと、その後も日本の報道を紹介していた。

 情報を積極的に得ようとする一人っ子世代は、テレビ離れや新聞離れもしており、ネットで情報を収集しようとした(10~20代のネット利用率は約7割と高い)。


 地震情報で特に注目している地域は上海周辺、次いで北京だが、日本に興味があるという意味だけではなく、我が身に津波が襲いかかるのではないかという心配も 大事件が起きるとすぐに開設される特集ページは、東日本大震災も例外ではなく、多くの最新情報が逐次翻訳され記事化された。

 震災絡みのニュースも、特集ページのコンテンツもやがて更新が減った。先月の東日本大震災から1年経った3月11日、1年を写真で紹介する記事が掲載されたことで少し注目が集まった。

 福島第一原発事故の方も話題になってよさそうだが、こちらはニュースでもリアルの人々との会話でも認知されてはいても細かい情報までは知らない、ないしは興味がないように思える。

 特に事故直後は(中国と比べれば)小さい日本ではどこも危険程度の認識しかないように話していて感じた。実際、中国人旅行団体は東京にも足を運ぶまでに戻ったが、事故からしばらくは日本行ツアーは建前上存在しただけであった。

 データはそのことを雄弁に物語っている。特定の検索ワードの検索傾向についてグラフで参照できる「Googleトレンド」というサービスがある。

 中国からはグーグルの一部機能が利用できず、利用者も少ないのでGoogleトレンド自体は使えないが、中国でグーグル以上に人気の検索サイト「百度」にもGoogleトレンドと同じ機能の「百度指数」というサービスがある。


放射能に対する関心が高いのも最初の1カ月だけ

 中国のネット上で日本の震災が注目されたのは最初の1カ月程度だった
拡大画像表示 例えばこれで「日本地震」を調べれば、毎日の検索数やメディアの掲載数がグラフィカルに表示されるわけだ。

 「日本地震」も「核泄漏(核漏れ)」「核輻射(放射能)」も地震から数日、事故から数日が最も注目されて、その後注目度は低下、1カ月は注目を集めていたが、その後注目がされなくなる様子が分かる。

 同じように描かれた2つのグラフだが、その注目度は、地震直後の「日本地震」は63万、原発事故直後の「核泄漏」は3万2000と全く異なる。

 その後においても、地震は注目されたが、放射能関連の話題は少数の人々が注目するだけだった。中国人にとっては興味の度合いが違ったようだ。

 地震直後の注目度には遠く及ばないが、この1年間で中国国内で話題になった日本の震災絡み、原発事故絡みのニュースは、日本の復興についてではなく、中国のメーカーにとっても他人事ではないビジネス相手としての日本のニュースが主体だった。

 例えば日本旅行解禁を示唆するようなニュースや、「中国メーカーの電製品のハイエンドモデルは日本の部品を利用しており、中国家電業界としても負の影響が大きい」「日本の地震の影響で一部の車メーカーが広告を出さなかったことが影響して広告関連企業が伸び悩み」といったモノ作り関連のニュースである。


 また「日本で不動産投資する場合のリスクを再考しなければならない」といったコラムもあった。

 大地震がしばしば起きるということが改めて再確認され、日本の様々な地域で大地震が発生し、大津波が押し寄せる可能性があるニュースが日本で報じられると中国でも報じられ、少なからずネットユーザーは理解しがたい状態に複雑な感想を漏らした。

 また南海地震による大津波が発生した場合、上海に大津波が届かないかという心配から検索する動きも。またニュースにこそならないが、震度5程度の地震が発生したときには、日本に関心のあるネットユーザーは一斉に地震の詳細について検索するようである。


 自分の生活への影響に高い関心を示す

再び日本に大挙してやって来た中国人観光客 中国人はデマに煽られやすいと言われている。しかし、筆者の経験則だが実際は情報の取捨が日本人のネットユーザーの平均よりもうまい。

 この1年様々なデマが日本で流れたものの、それが中国で翻訳され情報が拡散することはあまり見られなかった。

 以上のように、ほとんどの中国人は検索の傾向をデータで見ても、実生活の人々との会話やテレビ・新聞から入る情報で見ても、原発事故の行方にも震災後の復興にも興味を示していないことが分かる。

 たとえ注目の中国で前代未聞の大地震が起きたからといって日本人は常に動向を見るわけでもなし、中国人が震災後の1年をウォッチしないこと自身、おかしいと言うつもりは毛頭ない。

 むしろ日本と連携しなければいけない産業のニュースでは常に注目していることを知っておきたい。


粉ミルクには非常に高い関心を示す

明治の粉ミルクに関するニュースは丁寧な解説画像付き 福島第一原発事故は、事故後時間が経過すると中国人と無縁と言ってもいい状態となったが、事故後の12月6日にもう一度中国人が振り返った。

 明治の粉ミルク「明治ステップ」から放射性セシウムが検出されたことが同社調査で分かったというニュースが引き金だった。

 明治の粉ミルクは中国国産粉ミルクに不信感を持つ都市住民の間では最も知名度があり、最も安心できる粉ミルクであった。

 明治(上海)は中国向けの製品はオーストラリア産だと発表したが、「日本で発売されているものこそ最高の品質」という考え方が根強くあるため日本からの輸入品も売られており、乳児のいる都市住民に衝撃を与えた。

 結局、明治の粉ミルクに大きく依存していることから、中国メディアが問題のある日本向け商品のロット番号について解説、安心して買える情報を提供した。放射能を心配する声はあるが、事件前同様の人気は戻りつつある。

 中国の消費者が求める日本の商品は、デジタル製品や車だけでなく、むしろそれ以上に乳児向けの粉ミルクや紙おむつ、老人向けの血圧計、女性向けの化粧品など高品質が求められている。

 震災から1年、化粧品に関しても大丈夫なのかよく個人的にも聞かれたし、ネットでも何度となく「資生堂やDHCの商品を買っていいものかどうか」という質問が飛び交った。

 中国での震災後の関心は、日本国内の状況よりも、中国企業に直接関わる企業の情報や、中国の消費者に信頼されている製品がどうなっているかにシフトしていた。

 粉ミルクや化粧品のような中国の消費者向けに口に入れる商品、肌につける商品を売っていく場合、普段から安心であるという情報を中国向けオフィシャルサイトなどで発信し、万が一放射性物質が検出されたときには、中国サイトにおいても迅速に情報を提供することが大事である。





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