2012年7月24日火曜日

■五輪メダルに縁のなかった80カ国が見習うべきはジャマイカやキューバの戦略


五輪メダルに縁のなかった80カ国が見習うべきはジャマイカやキューバの戦略
http://jp.wsj.com/World/node_482413?mod=Right_pickfree
2012年 7月 23日  19:38 JST

 五輪に関する問題を1つ。アフガニスタン、バーレーン、スーダン、モーリシャス、タジキスタン、そしてトーゴに共通することは何か。

 気候が温暖で人口の大部分がイスラム教徒であることのほかに、この6カ国はすべて2008年の北京五輪で初めてメダルを獲得した国だ。これらの国は、ただの観客から、オリンピックという名の鉱石を掘る真の炭鉱夫になったのだ。

狙いを絞る

 2012年のロンドン五輪に参加する204カ国のなかで、80カ国がまだどの競技においても、過去一度もメダルを獲得したことがない。メキシコとパナマに挟まれた中米6カ国のなかでメダルを獲得したことがあるのはコスタリカだけだ。アルバニア、イエメン、ボリビア、ヨルダン、カンボジア、フィジー、ネパール、ソマリアそして2つのコンゴもまだメダルを獲得していない。これは何も挑戦していないからではない。コンゴは1964年から、ボリビアにいたっては1936年から五輪に参加している。

 また、まだ1度しかメダルを獲得していないという国はちょうど20カ国だ。1996年アトランタ五輪の陸上競技で金メダルを獲得したブルンジ、2004年アテネ五輪のトラップ射撃で金を獲ったアラブ首長国連邦(UAE)が含まれる。UAEは、領土が大きいか、そうでなければ豊かな、もしくは両方とも兼ね備えた、まだ一度しかメダルを獲得していないものの、向こう数十年の間にメダルをもっと獲得することが期待される数少ない国の1つである。イラクやクエート、コートジボワール、セネガルといった国もそうだ。

 だが、過去数十年間に1つもメダルが獲れず、もう二度とメダルが獲れないかもしれない国は少なからずある。ハイチが最後に獲ったメダル(陸上競技で銀)は1928年のものだ。ニジェールは1972年に唯一の銅メダルを獲った。この銅メダリスト、ボクシング・ウェルター級のIssake Dabore氏は3回目の五輪出場だった。

 過去の五輪メダルをほとんど持って帰った「持てる者(メダル獲得国)」は明らかに大きく、豊かな国々だ。米国は1896年に初めて近代五輪が開催されて以降、2500を越えるメダルを獲得している。一方、ドイツは東西分裂時代と統一後に合わせて1500を越えるメダルを得た。中国は400をちょうど越えたが、すべて1984年以降に獲得したものだ。

 それほど大量ではないにしても、メダルを狙っている、もしくは獲得し続けようとしている国はおおむね、ある基本戦略をとっている。特定の競技に特化することだ。ジャマイカは陸上の短距離で頭角を現した。1948年から55個のメダルを獲得したが、すべて400メートル以下の競技で獲ったものだ。エチオピアは長距離で38個のメダルを持っている。チリはかつてボクシング、陸上、馬術、スキート射撃でメダルを獲ってきたが、2004年以降は1つの競技でのみメダルを獲っている。テニスだ。また、マレーシアが持っているメダルはすべてバドミントンで獲得したものだ。

 別の戦略は、他の国の人材をリクルートすることだ。原則として五輪は、その国が合法的市民だと認める選手の参加を許す。カタールは1992年以降、陸上と重量挙げで2つのメダルを獲ったが、これはソマリア出身のランナーと、ブルガリア出身の重量挙げ選手、サイード・サイフ・アサド選手の活躍によるものだ。今夏、カタールはナイジェリア出身のランナー、フェミ・オグノデ選手をメダル獲得候補として出場させる。

 メダル獲得数を増やしたい国はキューバにも目を向けている。キューバはこれまでに194個のメダルを獲得。国民1人当たりの数として最も多い国の1つだ。キューバは数十年間、五輪選手の育成コーチを外国に送り続けている。これは「革命」の同志であるアフリカと中南米の国に対し、外国支援の1つの形態として行われている。しかしこの10年ほど、キューバは財力のある国に対し、報酬を得てサービスを提供している。キューバは5月、五輪出場予定の100カ国を越える国へ1万5000人のトレーナーを2010年以降に送ったことを明らかにした。インド、ヨルダン、アルゼンチンの各国は今夏、ロンドンへボクサーを送りこむが、数年をかけて1種目だけに磨きをかけてきたキューバのコーチが選手に同行する。

北京五輪の6カ国

 前回の北京五輪で初めてメダルを獲得した6カ国に話を戻そう。メダルを獲得した経験のない国が、どのように初めてメダルを獲得した国になったのか、そのヒントがわかる。まず言えることは、個人競技であることだ。2008年、タジキスタンは柔道で初めての銅メダルを獲った。アフガニスタンはテコンドーだ。モーリシャスはボクシングで、バーレーンとスーダンは両国とも男子陸上競技だ。小国のトーゴの場合は、フランス出身のベンジャミン・ブクペティ選手がカヌーで初めてメダルを獲ったアフリカ人となった。

記者: Joel Millman



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