2012年7月24日火曜日

■ロンドン五輪、金メダル数で米国が首位返り咲き=WSJ予想


ロンドン五輪、金メダル数で米国が首位返り咲き=WSJ予想
http://jp.wsj.com/Life-Style/node_482329?mod=WSJFeatures
2012年 7月 23日  16:58 JST

 米国人にとって星条旗を掲げ、赤・白・青のストライプが入ったボクサーショーツを準備するときがやってきた。

 1992年以降初めて中国が五輪の金メダル獲得数で米国を抜いて首位に立ってから4年、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のロンドン五輪メダル獲得予想によると、表彰式では再び米国国歌が最も多く流されることになりそうだ。

中国競泳代表チームの中の数少ないメダル候補の一人、孫楊
 また、夏季五輪のメダル総獲得数でも、5大会連続で米国がトップに立つことが予想される。

 08年の金メダル争いでの中国の勝利は、広大な国土と13億人の人口、政府が後ろ盾する実績あるトレーニング制度を擁する新たな五輪超大国の出現を予期させるものと思われた。米コロラド州コロラドスプリングスにある米国オリンピック委員会本部内にさえも、12年も再び中国が金メダルと全体のメダル数でトップに立つとの予感が漂い始めていた。

 だが、ロンドンは非中央集中的で起業家精神あふれる米国のアスリート育成手法の正当さを証明する舞台となりそうだ。WSJの予想では、530人の選手で構成される米国選手団がロンドンで獲得する金メダルは40個、メダルは108個で、それぞれ38個、92個と予想されている中国を上回った。


WSJが予想したメダル獲得数の順位

 WSJの予想は、専門家への取材や選手の最近の国内・国際大会での成績を基にしている。だが、単に各種目ごとに1~3位の選手を選ぶだけでなく、さらに各金メダル有力候補の獲得確率を算出し、その確率を基に最も可能性の高い結果を予想した。

 例えば、92年以降五輪で1度も優勝を逃したことのないバスケットボール女子米国代表チームは、われわれの計算では金メダルの獲得確率は80%で、次の金メダル候補の獲得確率は10%。一方、テニス男子セルビア代表のノバク・ジョコビッチは、スイス代表のロジャー・フェデラーや英国代表のアンディ・マリーとのし烈な戦いを制する必要があるため、金メダル獲得確率はわずか40%。これら確率を算出したあと、今度はスポーツデータ分析会社ベースボール・インフォ・ソリューションズのオーナー、ジョン・デュワン氏の協力を得て、試合について1000とおりのシミュレーションを行ってもらった。

 その結果は歴然たるものだった。メダル総数の争いでは、米国が優勝または引き分けた回数は998回だった。一方、金メダル争いはもう少し不透明で、米国が746回で1位となり、304回で中国が2位だった。57回、7シナリオに関してはロシアが引き分けで1位になるという意表を付く結果になった。

 種目によっては実力が拮抗(きっこう)しており、差を付けるのが難しいものもあった。今年、開会式を前に早くも予選が行われる競技がある。サッカーだ。女子米国代表の1試合目の相手は11年ワールドカップの準決勝と同じ、才能あふれるフランス代表だ。米国はアビー・ワンバックとアレックス・モーガンの破壊力抜群のフォワード2人を軸に勝ち残り、メダルを獲得するとわれわれは予想しているが、1試合目も必見だ。

 個人種目に関しては、米国は従来メダルを独占している競技で従来どおりの強さをみせつけることが予想される。毎回メダルラッシュにわく競泳と陸上だ。これら2競技だけで57個のメダルを獲得し、米国の獲得メダル総数の53%を占める予想だ。競泳代表のマイケル・フェルプスは今回は8冠には挑戦しないが、優に金メダル5個、メダル7個は獲得するだろう。

 中国のメダル獲得数での成功は、純粋なアスリートの才能よりも、国を挙げての集中的なトレーニングに寄るところが大きい。そのため、ひたすら練習に取り組むことが物を言う種目で好成績を挙げている。例えば、中国が多くのメダルを獲得すると予想されている競技は、重量上げ(8個)や飛び込み(9個)、卓球(6個)だ。中国は08年、バドミントンと射撃で合わせて16個のメダルを獲得したが、競泳と陸上ではわずか2個だ。だが競泳の成績に関しては、長距離のスペシャリスト、孫楊のおかげで向上している。孫は1500メートルと400メートル自由形の両種目で優勝するとみられている。


開催国英国の期待の星、長距離ランナーのモハメド・ファラー
 英国も引き続き五輪で成績を伸ばすとみられるが、その期待を担っているは少数の有望なアスリートだ。1人は長距離ランナーのモハメド・ファラーで、5000メートルと1万メートル両種目で金メダル獲得という偉業を達成する可能性もある。一方、専門家を困惑させているのがドイツだ。予想メダル獲得数はわずか49と、人口が多く豊かで、冬季五輪で好成績を挙げている国にしてはかなり少ない。

 もう1つ注目すべき国の1つがジャマイカだ。地球最速の男、ウサイン・ボルトと世界トップの短距離チームを中心に、ジャマイカは金メダル4つを含め、10数個のメダルを獲得すると予想される。人口わずか290万人の国にしてはなかなかの成績だ。

足首のちょっとした痛みと数百分の1秒が勝敗分ける世界

 米国は現在、経済回復が立ち遅れ、米国民は大国としての自信をやや失いつつある。そのようななかで、もしかしたら米国は金メダル獲得数で首位返り咲きを果たすことになるかもれしない。また、現在大統領選真っただ中にあり、五輪の成績が良ければ、両候補ともそれを自らに都合よく利用する可能性がある。オバマ大統領は、自らが見守るなかで好成績を収めたと強調でき、ロムニー氏は02年のソルトレークシティー冬季五輪の組織委員会会長を務めた実績を大いに宣伝できる。

 米国選手団が好成績を収めると予想したものの、当然ながら結果はそのときなってみなければ分からない。五輪のようなワールドクラスの競技会では、足首のちょっとした痛みや数百分の一秒が勝敗を分けることになる。フェルプスと女子競泳代表のミッシー・フランクリンは米国に10数個の金メダルをもたらしてくれる可能性があるが、ひょっとしたらインフルエンザにでもかかってメダルなしに終わる可能性もある。

米国の強みは人材発掘制度

 米国の選手育成制度の強みは、資金と機会を最大限幅広い選手層にまでに行き渡らせることができる点にある。「米国にはクラブやコーチ、学校がこぞって才能ある人材を発掘するという競争力あるシステムがある」と、世界中の五輪組織と仕事をするスポーツコンサルティング企業ヘリオス・パートナーズのクリス・ウェルトン最高経営責任者(CEO)は述べ、「この国ではスポーツの才能があれば、見逃される可能性ははるかに少ない」と話す。

 米国の育成制度ではトレーニングはアスリート本人に任されており、そのためアスリート(とその親)は、最も優秀な指導者探しやトレーニングの資金集めにどん欲にならざるを得ず、いやでも起業家精神が養われる。

 例えば、06年のNCAA(全米大学体育協会)高跳び選手権で優勝したジェシー・ウィリアムズは、08年の北京五輪では決勝に進むことができなかった。その後も思うような成績が出せずにいたウィリアムズは、コーチを変え、カンザス州立大のクリフ・ロベルト氏の指導を仰ぐことを決める。

 ロベルト・コーチはウィリアムズのトレーニングとジャンプのスタイルを根本的に変えさせた。ウィリアムズはそれまで繰り返し行っていた300メートル走をやめ、今では主要大会までの準備期間は60メートル以上の距離を走ることはしない。練習では、バーに向かう助走の際にジャンプ直前の数歩で最高速度に達するようにすることと、つま先で走りながらジャンプするのではなく、足の裏全体でトラックをひっかくようにしてジャンプすることに力を入れている。

 こうした変更が奏功し、ウィリアムズは昨夏韓国で行われた世界陸上で金メダルを獲得し、ロンドン五輪代表にも選ばれた。「タイムズスクエアでも飛び越せる気がする」と、ウィリアムズは最近のインタビューで語っている。

記者: Matthew Futterman, Loretta Chao、Geoffrey A. Fowler



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