2012年8月17日金曜日

■何でもランキング 1位は熊野古道 歩いて楽しい「巡礼の道」


何でもランキング 1位は熊野古道 歩いて楽しい「巡礼の道」
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO42630080V10C12A6W01000/
2012/6/16付

 ウオーキングブームを背景に、日本の寺社を歩いて巡る「巡礼の道」が注目を集めている。その数は全国に数百あるといわれ、滝に打たれて厳しい修行にのぞむ修験の道もあれば、温泉に入ったりおいしいものを食べたりしながら寺社を巡る観光ルートもある。一般の人が楽しんで歩けるおすすめの巡礼の道を専門家に選んでもらった。


熊野古道
1位 熊野古道 680ポイント
 和歌山県にある本宮大社、速玉大社、那智大社の熊野三山への参詣道。2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部としてユネスコの世界遺産に登録された。10世紀初めの宇多法皇の熊野行幸が最初といわれる。道の途中に熊野神の御子神を祭る王子社が数多く点在し、信仰の道としての姿を今も色濃く残す。最近は自然の中で心身の健康づくりをテーマにしたウオーキングイベント=写真=が人気。本宮から大日山を越えて湯の峰温泉に向かう大日越えは1時間半程度で古道の雰囲気を味わえる。
 「手軽なルートから本格ルートまで体力などで歩く道を選べる」(佐藤由美子さん)「雨が降っても森が守りあまりぬれない。むしろ熊野独特の霊気が満ちて素晴らしい」(丹羽由実さん)「日本人の心のふるさとを考えさせてくれる」(林雅彦さん)
 わかやま観光情報 http://www.wakayama-kanko.or.jp/worldheritage/index.html


四国八十八カ所
2位 四国八十八カ所 590ポイント
 徳島、高知、愛媛、香川の4県にある弘法大師ゆかりの88カ所の札所を巡る。地元の人々が「お遍路さん」と呼ぶ巡礼者を飲食などでもてなす「お接待」や無料や低料金で泊まれる簡易宿泊施設「善根宿」を提供する文化を今に引き継ぐ。全長約1400キロメートルを歩く「通し打ち」は徒歩で約40日かかるが、何回かに分けて歩く「区切り打ち」も。数カ所だけを回る数千円の日帰りコースを企画する旅行会社もある。1番の霊山寺から88番の大窪寺まで(写真は43番明石寺)順番に回る順打ちと逆に回る逆打ちがあり、「うるう年に逆打ちすると功徳が数倍になる」との言い伝えから、うるう年の今年は特に逆打ちが多いという。
 「たくさんの寺を回る回国型こそ巡礼の本当の姿。お接待の文化も素晴らしい」(佐藤久光さん)
 四国八十八ヶ所霊場会 http://www.88shikokuhenro.jp/


お伊勢参り
3位 お伊勢参り 360ポイント
 お蔭参りともいい、2000年の歴史を持ち、天照大神を祭る三重県の伊勢神宮に参拝する。江戸時代には五街道の整備に伴い、日本全国から巡礼者が歩いて訪れ、村の有志からお金を集めて代表者が赴く「伊勢講」がさかんだった。神体を移す20年に1回の遷宮を来年に控え、神木を川から運ぶ「お木曳(きひき)」=写真=などの神事が着々と進んでいる。内宮、外宮を巡るだけでなく、周辺の神社や観光地に寄りながら回るルートなど、日程に合わせてコースを選べる。
 「庶民の物見遊山はここから始まった。昔も今も楽しみがいっぱい」(嶋崇さん)「遷宮で人気はさらに高まる。さわやかな風を感じる海岸線を回る平たんなコースもある」(畑顕治さん)
 伊勢市観光協会 http://www.ise-kanko.jp/jingu/index.html


4位 西国三十三カ所 350ポイント
 近畿の2府4県と岐阜県に広がる33カ所の観音霊場を巡る。観音菩薩(ぼさつ)が33の姿に変身してすべての人を救うという信仰に基づく。歴史は古く「格調の高い名刹が多く、関東の裕福層が京の祭りや大阪の芝居の見物も兼ねて数多く出かけた」(佐藤久光さん)という。2番紀三井寺や32番観音正寺では「巨大な平成仏にまみえることもできる」(竹村節子さん)。
 西国三十三所巡礼の旅 http://www.saikoku33.gr.jp/



5位 出雲国神仏霊場 320ポイント
 巨大なしめ縄で知られる出雲大社を起点に、島根県東部の宍道湖や中海を一周し、20の寺社を参拝する。神社と寺院双方を回る新しい巡礼の道として2005年に整備された。東京や大阪、名古屋、福岡発着で2泊3日程度で巡るモデルコースがある。「古代の神話を思い浮かべながら朝鮮半島や大陸とのつながりに思いをはせる」(六田知弘さん)
 出雲國神仏霊場 http://www.shinbutsu.jp/


6位 秩父三十四カ所 230ポイント
 埼玉県秩父地域に広がる34カ所の観音霊場。首都圏から家族連れの日帰りハイキングで楽しめるルートもある。4番金昌寺の石仏群や32番法性寺の奥の院がある岩船山の大展望が有名。山菜料理や手打ちそばを味わえる「秩父七湯」と呼ばれる鉱泉宿が点在し「温泉巡りを楽しめる」(加藤健司さん)。
 秩父三十四観音霊場 http://www.chichibufudasho.com/


7位 山の辺の道 220ポイント
 奈良盆地東側の山麓を南北に縫う古代ロマン散策の道。国宝の七支刀がある石上(いそのかみ)神宮、大和朝廷を創始したとされる崇神天皇の陵墓などを歩いて巡る。「道は歩きやすく、民家の脇を通ったり狭くなったり変化を楽しめる」(丹羽さん)
 天理市ホームページ「山辺の道南コース」 http://www.city.tenri.nara.jp/kanko/walk/yamanobe_minami/index.html


8位 五島八十八カ所 190ポイント
 長崎県五島市の福江島や黄島の寺を巡る。弘法大師が中国と行き来する際に寄港したといわれ、大師が日本を離れる時の言葉も碑に残っている。旅人をもてなす行事があり「おいしい料理とお酒、素晴らしい笑顔は生涯忘れられない」(板倉あつしさん)。
 五島八十八ヵ所霊場巡拝案内 http://www.gotokanko.jp/88/88top.htm


9位 鎌倉五山 170ポイント
 「鎌倉五山」と呼ばれる神奈川県鎌倉市の建長寺や円覚寺、寿福寺、浄智寺、浄妙寺を巡る。五山は、幕府が定めた禅宗の五つの大きな寺。今も大勢の観光客が五山巡りを楽しむ。都心から近く「のんびりと古都鎌倉の情緒を味わえる」(畑さん)。
 鎌倉ぶらぶら―鎌倉五山散策 http://www.kamakura-burabura.com/haiku1kodakamakuragozan.htm


10位 小豆島八十八カ所 150ポイント
 香川県の小豆島の札所を巡る。弘法大師が修行で訪れたことから、四国八十八カ所を瀬戸内の島に写す「島四国」の一つとして発展。笠ケ滝などの行場も歩ける。「一般の人が体験できる行場は珍しい。山岳密教の名残が各寺院にある」(山本七絵さん)
 小豆島霊場八十八ケ所の御案内 http://www.e-shodoshima.com/reijo/



■体力に合わせルート選び

 1位の熊野古道は紀伊山地の「熊野三山」への参詣道で、信仰の対象とされてきた滝や原始林、神社の建築群などを巡る。

 和歌山県観光連盟が運営する「わかやま観光情報」のホームページでは初心者向けのウオーキングプランを紹介。2~3キロで約1時間、6~7キロで約2時間のコースなどがあり、散策したいスポットや自分の体力と合わせて計画を立てられる。最近はストレッチをしながら熊野古道を歩いたり、川底から湧く温泉を巡ったりする「健康ウオーキング」を企画する地元の団体もある。

 ランキングには3つの「八十八カ所巡り」が入った。2位の四国八十八カ所は、番外の20寺院の「四国別格二十霊場」を加えると煩悩の数と同じ百八となる。番外寺院は「奥の院のような深山のお寺が多く、観光地化しつつある八十八カ所より落ちついてお参りできる」(月岡祐紀子さん)という意見もあった。

 8位の五島八十八カ所がある長崎県の五島列島にはキリシタンの殉教の歴史を伝える教会堂が数多くあり、同じ長崎県の平戸市の教会群とも合わせた「キリスト教の巡礼の道」として推す声もあった。

 八十八カ所巡りは福岡県の「篠栗(ささぐり)」、愛媛県の「大島」、愛知県の「知多」など全国に数多くあり、これらの道は今も多くの巡礼者が歩いている。新春にお参りする七福神巡りでは京都の「都」、東京の「隅田川」「元祖山手」「新宿山ノ手」などをすすめる選者もいた。

■東北には「修験の道」 女性にも門戸

 巡礼の道は全国津々浦々にあり、北海道では三十三観音霊場、沖縄では首里からみてニライカナイ(他界、理想郷)のある東方の玉城や知念などの聖地「御嶽(うたき)」を巡る東御廻り(あがりうまーい)が挙がった。

 東北には出羽三山の修験の道があり、その錬成道場は女性だけでなく、20歳未満でも親の同意や同行で参加できるなど門戸を広げている。地下に霊場があるところもあり、威光寺(東京)の「弁天洞窟」や慈眼寺(徳島)の鍾乳洞の行場「穴禅定」では、ろうそくに火をともして中に入り、行者気分を味わえる。

  ◇  ◇  ◇  

 表の見方 数字は選者の評価を点数化。文末は巡礼の道を紹介している主なホームページのアドレス

 調査の方法 一般の人でも歩ける日本国内の巡礼の道を、一つの聖地に巡礼する直線型と複数の聖地を巡る回国型にこだわらず、専門家に1位から10位まで挙げてもらい、順位を決めた。選者は次の通り(敬称略、五十音順)

 板倉あつし(旅行ライター)▽加藤健司(鶴岡八幡宮教学研究所所長)▽佐藤久光(元種智院大学教授)▽佐藤由美子(日本航空宣伝部)▽嶋崇(健康雑誌「安心」編集部副編集長)▽竹村節子(現代旅行研究所専務)▽月岡祐紀子(ごぜ唄三味線演奏家)▽丹羽由実(日本ヘルスツーリズム振興機構)▽畑顕治(フィットネス会社「みんなの体育」代表)▽林雅彦(明治大学教授)▽六田知弘(写真家)▽山本七絵(クラブツーリズム・カルチャー旅行センター)




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