2012年8月4日土曜日

■不景気でも、失業していても夏はやっぱりヴァカンスがフランス流


不景気でも、失業していても夏はやっぱりヴァカンスがフランス流
http://diamond.jp/articles/-/22512
【第3回】 2012年8月3日 七種 諭 [写真家]

 ヨーロッパは、この長引く経済問題で少し憂鬱な感じだし、かといってこの不況感はリーマンショックの前からあったという感じが僕個人としてある。

 そもそも、通貨がユーロにかわって以来、物価が便乗して上がり、ユーロが強くなってドルが下がった時点で、多くの仕事が海外に流出し、俗に言う国内の空洞化が起きたような気がする。仕事の予算が削られ、物価の高いパリでは生活が辛くなったように思う。ということは、かなりの長い間不況を感じて来たということだ。

不景気でもやはりヴァカンス

 オーランドに大統領が代わっても、あまり急な変化は見られないだろう。彼の政策がうまく行っても、彼の任期中に結果が見え始めることはあり得ないだろうとも思う。

 少し頭を斜めに傾けて考えると、この失業率(約10%)を改善するには、最初に忍耐がかなり強いられるだろうし。明るい話題は少ない。ここ数週間天気が悪く、寒かったりして僕らのギャラリー通りも人影少なく、ここの所さらに財布の紐が堅いと嘆いている。

 渋い顔をしながら隣のギャラリストは聞いて来る。

 「夏何処行くの?」

 頭が斜めに傾きすぎてますます憂鬱になってきたので、ポジティブに考えよう!ってな感じで、、、、、、、、「ねぇー夏何処行くの?」。そんな感じで、現状逃避、、、、ヴァカンスの話で盛り上がる。

不景気でも、しかし、ここはフランス。頂いた権利はしっかり消化する。

 何しろ夏、冬併せて6週間、子ども達の学校の夏のヴァカンスはそれプラス約1ヵ月ある。

問題は子どものヴァカンス

 子どものヴァカンス。これがまた問題だ。その余分に子どもが貰った1ヵ月間を大人はどのようにオーガナイズするのか?さすがに一緒に丸々2ヵ月のヴァカンスは取れないので頭が痛い。


アフリカ系の人たちの里帰りは、子どもが多いせいもあるがやたらと荷物が多い。超過料金を支払わないために重さを量り、荷物の入れ替えなどのためにそこら中でスーツケースが広げられたりする。
Photo by Satoshi Saikusa
 その期間、多くのフランス人は子ども達を田舎の家族に預けている様子。親戚がフランス国内にいない場合は、サマーキャンプ、子どもの友達の家族、パリでのサマークラス、等に頼る事になる。それをチェックして予約したりキャンセルしたり、時間を取られる。そしてうまくどこかに空きがあったとしても、仕事の合間に、その送り迎え等、これまた大変。

 そういうことを考慮してか、混雑を避けるために学校のヴァカンス時期は、フランス国内でも北と南か、西と東か忘れたけど、わざとずらして、ヴァカンスの施設をうまく活用させている。ヨーロッパ全体を含めると学校のヴァカンス時期は、かなりずれがあるみたいだ。

2月には夏の予約完了

 そんなこんなで子ども達のひと月のヴァカンスを埋め、そしていよいよメインヴァカンスとなるが、そのオーガニゼーションは凄い。ほとんどの家族はクリスマスの時に夏のヴァカンスの話が出て、冬の休暇が終わった直後には、夏のヴァカンス予定がある程度立っていて、遅くとも2月の末には予約を完了する。

 親が離婚していると、半分は父親とコルシカ、そして後の残りを母親とスペインでヴァカンスを過ごす子ども達、チケットの手配、空港への送迎も頭に入れたスケジューリングをうまくこなしている。

 フランス人は8月を中心にひと月くらいのヴァカンスをとる。大きい会社であればローテーションを組んで、7月に休みを取ってもらう人に8月に出勤してもらったり、7月、8月の代わりに9月に休みを取る人もいる。7月にうまくオーガナイズできる人は子どもの休みに合わせ早めに取り、8月の込んだ時期を避けることができる。9月に休む人は、子どものいないカップルや独身者がほとんどだ。

 規模の小さい企業、商店、フリーランスの人たちは、ほとんどの人たちが8月に休みを取る。ツーリスト向けのブティック、キャフェ、個人商店ではバイトやフリーランスの人を雇って8月営業し、家族で時期をずらしてヴァカンスを取るといったやりくりしているようだ。

 ヴァカンスはもちろん有給休暇だが、日本のボーナスほどはもらえない。最初の雇用契約の際にボーナス、有給等のコンディションが決められるのが通常だ。この契約が結構細かく、経営者側に負担になりやすいために、失業率を下げるという点では具合がよくないことは確かだと思う。

 イタリアでもなかなか人を解雇できない状態だったけど、制度が新しく変わったようだ。僕個人の意見としては進歩だと思う。働く側も緊張感を持って働けばいい結果をもたらしてくれ、経営者側も精神的に楽になって、人を雇用しやすい状況が生まれてくれれば、若いジェネレーションにもっとチャンスが与えられるとも思う。

失業者もヴァカンス

 話をヴァカンスに戻すと、統計上はヴァカンスにかけるお金は2000ユーロ前後のようだが、学生やあまり収入の安定してない人たちでも、なんとかヴァカンスをうまく手に入れている、そして多分ショマージュ(失業)している人たちもしっかりヴァカンスに出掛けていると思われる。別にゴージャスでなくても、ひと月間楽しく過ごしている。

 どうやってそんな神業ができるのだろう?

 夏の終わりに、または9月の頭にショマージュについては考えればいいと思っているんだろうか?なかなかそこまでの図太い精神にはたどり着けない。

 ヴァカンスに行けない子ども達のために、市や国のオーガナイズで簡単な海浜キャンピングを行ったりもしている。フランス人は最近でも、自宅にテレビなし、携帯なし、車なしの人も結構いて、その分をヴァカンスにつぎ込んでいる。

 夏のパリはかなりいい、人も少ないし、交通量少ない分静かだし、天気はからっとしている。ヴァカンスに出掛けられない若者や、子ども達はパリ・プラージュ(パリ・ビーチ)で満喫してるようだ。聞いた話ではかなり大きなプールが設置されていて、入場料無しで誰にでも解放している。こんな話を聞くと、消費税が高くても、我慢できるかな??????

 でも、やっぱり、パリに残ってしまうと気分が微妙に変わらない。夏前の疲れた気分を引きずったまま、日が短くなり始め、緑が枯れ葉色に変わる9月なってからの騒々しいパリを考えると、どうしても夏休みの時期はパリを脱出したくなる。これは僕、フランス在住の外国人だけではなく、ほとんどのフランス人の意見だ。日本に比べるとのんびりした印象のフランスだが、違う種類のストレスがあるのだ。

庶民派の大統領のヴァカンスは?

 庶民的な大統領のイメージを売り出しているオーランドは、庶民的にキャンプでもなさるのだろうか?

 この全党を挙げての庶民的なイメージ作りは、結果として異常に高いものについている。彼が電車で移動するたびに、空にはヘリコプターが彼の後をついてまわり、電車での移動もセキュリティが大変だろう。電車がトンネルや陸橋を通るたびに、テロリストに備えて警備もしなければならない。

 その他の大臣たちまでメトロで出勤するものだから、その場合もやはり黒塗りの車がカラで移動し、メトロの出口で待っているという有様だ。もうそろそろ、この演出も止めて頂きたいとみな思っている。

 “新大統領オーランド氏、ヴァカンスをキャンプで!??”

 もしそんなことになったら、ボディガードをキャンプ場にはべらし、政府のヘリコプターがキャンプ場で待機。結局、彼のテントの周りでキャンプをしている庶民は、誰も静かにヴァカンスを過ごせないという羽目になる。



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