アップルはほんとうに米国に生産を移せるか?
http://jp.wsj.com/Business-Companies/Technology/node_560502?mod=WSJFeatures
2012年 12月 8日 14:07 JST
アップルは6日、2013年に1億ドル(約82億円)以上を投資してパソコン「Mac(マック)」の生産の一部を米国に移転すると発表した。
長らく中国にとどまっていた製造業の雇用が米国に回帰する可能性が出てきたとして、インターネット上では議論が盛り上がっている。
しかし、製造業の米国回帰は可能なのだろうか?
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のジェームズ・R・ハガティー記者はハーバード・ビジネス・スクールで経営実務を教えるウィリー・シー教授に詳しく話を聞いた。そのインタビューの内容をお伝えする。
WSJ:製造業に米国回帰の大きな動きがあるのか?
ウィリー・シー教授:ある種の製造業では米国回帰の動きが起きていると思う。製造業が海外に移転した時には、中国などの移転先と米国では人件費の差が非常に大きかった。多くの場合、米国では資本集約的に機械で製造していた製品も、労働コストの安い海外に生産を移した。これにより、10年にわたって低インフレが続いた。中国や東南アジアでは低コストで製品が生産され、貿易収支に大きな変化が起きた。
しかし、海外生産には関連する費用が発生する。経済学者はこの費用を「調整費用」と呼ぶ。米国と生産拠点の間を往復したり、工場と仕事を調整したり、長いサプライチェーンを管理しなければならない、ということだ。しかし、中国やその他の新興国で労働コストが急上昇すると、多くの企業は海外で生産するリスクやサプライチェーンの在庫、サプライチェーンの管理にかかる手間を意識するようになり、コスト差は追求するだけの価値がない、と考える。その結果、方向転換が起きつつあるのだろう。
今朝、私はオハイオ州に本社を置く小規模の工具メーカーの社長と話した。この社長は10年前に中国に工場を設立しようとしたが、調整が大変で、米国市場向けの製品はオハイオ州で製造を続けることにした、と話していた。このような事例を聞くことが最近、増えている。アップルだけでなく、大企業の多くが米国での生産を真剣に検討していると思う。
WSJ:米国が失った雇用は戻ってくるか?
ウィリー・シー教授:多くの製品の製造過程については、そうは思わない。米国に戻ってくる雇用はかつて米国から消えた雇用とは異なる種類になると思う。米国に戻ってくる雇用に必要な技能は以前より高く、労働者はコンピューターの使い方を理解したり、工程改善を行ったり、最新式の製造機械の使い方を知らなければならないだろう。こうした雇用が米国に回帰させるのは、製品の市場投入までの時間が重要で、迅速かつ即応性のあるサプライチェーンが必要な業種だろう。
一方で、天然ガスブームによって、石油化学やプラスチック、あるいはエネルギーを大量に消費する産業は一斉に雇用を米国に戻すだろう。こうした雇用の多くは、エネルギーコスト、さらに言えば労働コストも米国よりはるかに高い日本や欧州などから引き上げられる、と私はみている。しかし、電子部品のサプライチェーンは今や中国にしっかりと根付いており、中国から撤退する企業は多くないだろう。
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