■愛を込めてさようなら、グルーポン前CEOからの別れの手紙

愛を込めてさようなら、グルーポン前CEOからの別れの手紙
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2013年 3月 04日 16:19 JST
By LESLIE KWOH


型破りのCEOだったアンドリュー・メイソン氏は別れのあいさつ状で自身の解雇についてジョークを飛ばした

 クーポン共同購入サイト運営の米グルーポンは28日遅く、アンドリュー・メイソン最高経営責任者（CEO、32）の更迭を発表したが、これで驚くことがあるとすれば、メイソン氏自身が従業員に辞任を伝えた厚かましくも気の利いた方法だろう。

　メイソン氏のあいさつ状は「People of Groupon（グルーポンのみなさんへ）」という呼びかけで始まっていた。これは、コメディアンで司会者のコナン・オブライエン氏が米NBCの人気トーク番組の司会を降板した際に出した、有名な「People of Earth（地球のみなさんへ）」で始まる声明に倣ったように思える。

　メイソン氏は続けて、「わたしはもっと家族と多くの時間をもちたいと決心した。というのは冗談で、今日、わたしは解雇された。なぜだと訝（いぶか）しがるなら、あなたは注意を払っていなかったということだ」と書いた。

　あいさつ状――「どっちみち漏れるから」とメイソン氏によって投稿された――は無邪気な散文で、自身の失敗を任天堂のゲーム「バトルトード」に例えたり （「初めてのプレイでテラチューブまで一度も死なずにはるばる行けたようなものだ」）、休養する時間をとって体重を減らすつもりだと告白したりしている（「ちなみに、自分の（余分な体重の）グルーポン40を減らすために良い減量キャンプを探している」）。

 メイソン氏の辞任はグルーポンでの同氏の運命をめぐる数カ月間に及んだ臆測に終止符を打つことになった。2011年末に鳴り物入りで上場を果たしたグルーポンだが、業績が悪化し投資家らを失望させてきた。第4四半期の損失は8110万ドル（約75億7000万円）を計上し、前年同期の6540万ドルを上回った。

　メイソン氏のあいさつ状はお払い箱にされたことを示す率直な内容だが、こういうものを出したのはメイソン氏が初めてではない。2011年9月に、米ヤフーのキャロル・バーツCEOは従業員宛てに、取締役会への捨てぜりふを記した短いメモを書き、「ヤフーの取締役会長からたった今、電話で解雇されたところだ」と明かした。

　また、昨年3月には米金融大手ゴールドマン・サックスの株式デリバティブ部門エグゼクティブディレクター、グレッグ・スミス氏（33）が米ニューヨーク・タイムズ紙に退社の理由を寄稿し、同社の「有毒で破壊的な」企業文化を攻撃した。2009年には米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ（AIG）の金融商品部門バイス・プレジデント、ジェイク・デサンティス氏がやはり米ニューヨーク・タイムズ紙で自身の辞任について発表し、もはや「機能障害を起こした環境」では働けないと宣言した。

　解雇された企業幹部の多くは職場を去るに当たって自分の感情を広く表に出したくなるのだろうが、ほとんどの場合は他の企業で上級幹部の席に落ち着く機会を損なうことのないように口をつぐんでいる。

 しかし、メイソン氏は実際、その点についてはうまく切り抜けられるかもしれない、と話すのはリーダーシップと戦略の指導を目的としたコッター・インターナ ショナルでエグゼクティブ・バイス・プレジデントを務めるキャシー・ガーシュ氏だ。その一因として、同氏はメイソン氏が会社という枠組みに決しておさまらない人物であることを挙げる。

　ガーシュ氏は「アンドリュー・メイソンは起業家である。次の大きな企業での仕事では政治的な正しさやポジションを狙ったりしない」と話す。

　さらにガーシュ氏は、彼の率直さは「ルールを破ることを恐れないリーダーを求めている」雇用主には魅力的かもしれないとつけ加えた。

　米経済誌フォーブスによると、メイソン氏は新規株式公開（IPO）前の一時、3億9000万ドルの資産を有していたという。また、すぐにはCEO職の候補者にはならないだろうという。（当面、シカゴのすし屋でときどき主催するパフォーマンスをよりどころにすることができる。）

 メイソン氏のあいさつ状には怒りなどまったくない。結びには「みなさんと会えないことをとても寂しく思います」とあり、最後に「愛を込めて、アンドリュー」とサインがしてあった。