2012年1月11日水曜日

■中国からのお客様を日本に呼び込むインバウンドビジネス


中国からのお客様を日本に呼び込むインバウンドビジネス
http://japan.internet.com/busnews/20120110/2.html
2012年1月10日 10:00 株式会社クララオンライン 家本賢太郎

 今回は、中国から日本への観光客に対するオンラインマーケティングについて触れてみることにします。外国語でのオンラインマーケティングには大きく二つあり、一つは「インバウンド」と呼ばれる訪日外国人旅行者に対する情報発信、そして訪日時の購買に繋げるためのマーケティング活動と、もう一つは経済産業省が最近積極的に推している「越境 EC」、即ち日本の EC サイトが海外の顧客に商品を売ろうとする流れです。本稿では、このうち特に中国からのインバウンドの動きを紹介します。

インターネットでのインバウンドビジネスの大きなタイミングは、「訪日前」と「訪日中」のフェーズに分けられます。「訪日前」とは、まず日本への観光に関心をもってもらうこと、そして日本に行きたいとなれば必要となる航空券・宿泊の予約を Web で提供し、そして旅行に付随する観光、飲食、買い物、体験ツアーなどの情報を提供することです。特に飲食や買い物では、古典的な方法ではあるものの、クーポンなどを配布することによって来店に繋げる手法は相変わらず有効です。

一方、「訪日中」とは、訪日した観光客をいかに確実に来店に結びつけるか、そして来店した観光客の買い物の利便性をどのように上げるかです。中国語が話せる店員を配置することはビックカメラやヨドバシカメラの例のように一般的になりましたし、銀聯カードでの決済に対応する店舗も増加し続けています。

さて、まず訪日外国人旅行者数を見てみることにしましょう。2010年実績で中国からは141万人、台湾からは126万人の実績(出典:日本政府観光局(JNTO))がありましたが、2011年は東日本大震災の影響により外国人観光客は大幅に落ち込み、執筆時点での統計(10月分まで推計値で公表済。出典は同)をもとにした筆者の予測では、中国・台湾共に100万人前後の水準になりそうです。

とはいえ、実はこの数値は2009年の水準とほぼ同等で、2011年後半でかなり取り戻してきたとも指摘できます。2009年には中国からの訪日個人観光ビザが解禁され、さらにその前年の2008年には中国人家族の訪日観光旅行に対するビザの発給開始があったことなど、日本は官民あげて観光での訪日数増を図ってきた流れがありました。この円高の環境下において、当初の日本の計画から3年程度遅れる水準はかなり厳しいものの、東日本大震災後の影響で一時的に減っていた日中間・日台間の航空便の提供座席数は今年に入って増える予測もあり、2012年は盛り返しが期待されています。

こうした状況の中、日本の観光庁も手を抜いてはいません。中国からの観光客を積極的に呼び込もうと、2011年12月には、中国人向けに日本の魅力を伝える Web サイトを開設し、日本にいる中国人が書いた日本各地の観光レポートを載せたり、日本各地の観光地・宿泊場所・買い物に関する情報を整理したりしています。日本政府観光局も北京事務所と上海事務所がそれぞれ新浪微博にアカウントを作りました。

訪日中国人向けの情報サイトとしては、既に3年以上の運営実績があるシェアリーチャイナの「杰街同步」も有名でしょう。東京や大阪などの主要エリアの観光スポット・買い物スポットに関する情報を集め、企業が広告やクーポンを載せて訪日中国人向けに情報を発信しています。例えば、ある紳士服店では、このように Web サイトを印刷したクーポンを持って来店すれば10%を割り引くなど、特典を用意して訪日時の来店を促そうとしています。

また、訪日外国人向け情報サイト「japan-guide.com」の簡体字版も有名です。japan-guide.com は Google で“japan”と検索すると検索結果の上位に出てくることで入口を拡げています。一方、中国にある日本関連の Web サイトも活発です。日本への観光客が多く閲覧する「日本之窓」や、日本の情報を集めた「貫通日本」があります。

また、最近この中国人向けのインバウンドビジネスの流れに加わったのが「不動産」です。この数年、中国人向けに日本の不動産情報を配信する Web サイトが増えてきました。日本は外国人による不動産取得に制限は設けられていません。国によっては外国人名義で登記は出来ない、あるいは中国のようにそもそも土地の私有制度が無い(買うことはできず、国から使用権を購入するのみ)こともあります。中国の富裕層にとって、土地の私有ができる点や、不動産全体の値段が手ごろな範囲で買えるのは魅力にうつるようです。

しかも、日本の不動産市場にとって、ただでさえ日本の不動産市場が伸び悩む中、現金払いで買っていくターゲットに力を入れないはずがありません。先日も、筆者が経営するクララオンラインの中国のパートナー企業の社長が、都内の一等地の物件について熱心に不動産業者の説明を聞いている様子を見かけました。滞在目的ではなく、多くは賃貸目的での購入のようですが、中には子供の留学時に住ませたいという声も聞こえてきます。ただ、日本向けの不動産広告を中国語に翻訳しただけというものが多く、情報も網羅的ではありません。

次第に中国の富裕層の関心が日本の不動産に向く中、2012年のインバウンドビジネスでは、中国人向けの日本の不動産販売を注目したいと思います。



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