2012年7月1日日曜日

■観光業者への風評被害賠償 東電提案に東北反発


観光業者への風評被害賠償 東電提案に東北反発
http://www.kahoku.co.jp/news/2012/07/20120701t75011.htm
2012年07月01日日曜日

 福島第1原発事故による観光業の風評被害の損害賠償をめぐり、東京電力が新たに示した福島県を除く東北5県対象の賠償案に対し、各県や地元観光業者から反発の声が上がっている。半年以上前から東電と交渉してきた山形県は、過去の議論が反映されていない点を問題視。ほかの4県では対象地域の拡大を評価する見方があるものの、東電への不信感も根強い。

 「山形の個別の事情を伝えていたのに突然、話が東北に広がったので驚いた」。山形県旅館ホテル生活衛生同業組合の佐藤信幸理事長は6月25日にあった東電との会合後、戸惑いを口にした。

 同組合は昨年11月に東電との交渉を開始。県内の風評被害の存在を証明しようと、市町村の観光客入り込み数、入湯税の納付額、主要旅行代理店の山形への送客実績などの資料を提出してきた。

 それだけに今回の賠償案に、スキー修学旅行の解約など山形の事情が一つも盛り込まれなかったことへの落胆は大きい。事故後、山形市の蔵王スキー場などを訪れるスキー修学旅行は減少し、観光サクランボ園も打撃を受けた。

 県庁内部からは「これまでの交渉は全く無意味。国や東電に対応を求めた吉村美栄子知事の顔も立たない」との声も漏れる。

 一方、初めて賠償対象に加えられた県からは一定の評価も。青森県旅館組合は「県内の修学旅行は9割が北海道から。大部分が解約されたので賠償は助かる」と話す。

 岩手、宮城両県の旅館組合は「まだ東電からの説明がない」と話すが、ある組合関係者は「両県は一部で復興需要があったため風評被害の賠償は難しいと思っていた」と明かす。

 全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の東北ブロック協議会は「賠償対策検討委員会」をつくり、一致して東電との交渉に当たってきた。

 「東電の賠償案の提示は一方的。電気料金の引き上げのときと全く同じだ」と批判するのは、委員長を務める秋田県旅館組合の松村譲裕理事長。「今回の賠償案では対象外となる旅館が出てしまう」と、業者間に格差が生じることを危惧する。

 賠償案の受け入れに関して、松村理事長は「東北の枠組みを保って交渉を続けるべきだ」と主張するが、「県ごとに判断が変わる可能性もある」(佐藤理事長)との見方も出ている。

 福島以外の東北5県の旅館組合は近く会合を持ち、今後の対応を協議する。福島県と米沢市では、観光業の風評被害の賠償が認められている。


[東電の新賠償案] 東京電力は6月25日、山形市であった山形県旅館組合との会合で、福島県を除く東北5県を対象にした新たな賠償案を示した。
賠償を受けられるのは、原発事故後に解約された旅行が

(1)昨年3月11日の時点で予約されていた
(2)同年4月22日までに解約された
(3)参加者に18歳以下を含む
(4)東北以外からの旅行

-の条件に当てはまる場合に限るとした。

賠償額は解約で失った利益の50%とした。



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