2013年2月22日金曜日

■【コラム】 日系ファッション雑誌の日本離れ 今後必要な中国ビジネス戦略


【コラム】 日系ファッション雑誌の日本離れ 今後必要な中国ビジネス戦略
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0222&f=column_0222_015.shtml
2013/02/22(金) 10:06

必ずしも「日本の雑誌=人気コンテンツで全て成功」ではない

「日本の雑誌は中国で凄く売れていますよね」

「日本の雑誌のモデルさんタレントさんはいつも中国のファッション誌の表紙で出ていますよね。なので中国でも皆オシャレな子は彼女たちを知っていて中国でも大きな人気があるのではないですか?」

 とよく聞かれます。中国女性ファッション誌の上位を占める雑誌は日本の雑誌社とライセンス契約を結び、それを翻訳。そして中国オリジナルのページを作って中国内で販売している「日系ファッション雑誌」です。

 そのような雑誌が100万部、200万部と今でも右肩上がりで売れている事は事実です。オリンピック前後の日系ファッション誌の爆発的な成長と共に「雨後の筍」の如く日系ファッション誌が増え続けました。

 ただ、ここで「必ずしも 日本の雑誌=人気コンテンツなので中国で受け入れられ、それらのすべてが成功している」と思うのは間違いです。私が知る限りでも日系ファッション誌で部数が伸びない雑誌。休刊となった雑誌。売れている雑誌に吸収されてしまった雑誌。2012年だけでも何件もありました。

 では、何故このような「売れる雑誌」「売れない雑誌」が出てくるのでしょうか?

中国で「売れるファッション雑誌」と「売れないファッション雑誌」の違い

 ここにはいくつかの大きな理由があり、これは必ずしも雑誌業態に限らず中国に関わる日系企業の方が知るべきヒントが多く隠されているように感じます。「日本で売れている商品は中国にそのまま出しても売れる」という考えが必ずしも正しくないのと同じように日本で人気のある雑誌が中国で人気雑誌になるわけではないのです。

 例えば日本で人気絶頂だった時期に中国版の「CANCAM」は休刊しました。また、日本ではおそらく20万部よりも少ない発行部数のファッション誌が中国ではその10倍近くの200万部出ています。

 では、その違いは何でしょうか?

 まずひとつは中国の雑誌社自体の強さ。先述の雑誌に関しても休刊したのは大手出版社ではなく、200万部を売っているのは中国最大手の出版社です。そもそものパートナー(出版社)の持つ力の違いは中国内で展開していく中で非常に大きなポイントであったかと思います。

 そしてもうひとつは中国の女性のファッションやライフスタイルの状況に適合しているかどうか。日本ではファッション文化も成熟しているため、雑誌のジャンルも多岐に渡り、かなり専門的なことにまで踏み込んでいる雑誌なども多くあります。

 しかし、まだまだファッションというカテゴリーが成長している段階にある中国では、ニッチになりすぎると分かってもらいにくい、大多数を取りにいく雑誌としては難しいという部分は大いにあると思います。(ただ、分かる人、好きな人は日本以上にレベルが高い人もたくさんいますし、そこに対して多額のお金を使うことも厭わない人が多くいることもまた事実ではあると思いますが)

 そして決定的に大きな違いとなったのは「現地化できたかどうか」です。

 日系ファッション誌は日本からのコンテンツのみでなく、「中国人モデル」発掘と育成に力を入れ「中国ページのコンテンツ」の充実を図りました。しかし、規模と予算、そしてそこに使う労力には雑誌社毎に非常に大きな差があり、現在では200万部の雑誌社のモデルオーディションには数万人の応募が毎年殺到。テレビで特番が組まれ、中国女性の憧れの的になっています。

 今では人気日系ファッション誌は全て中国人モデルを中心とした雑誌作りに成功し、彼女たちを使ったビジネスモデルを完全に作り上げることに成功しました。つまり、「日本のファッション誌の翻訳雑誌」から「日系オリジナルファッション誌」へと変化を遂げることが出来たのです。

 こうなってくると「中国モデルありきの誌面作り」が出来る雑誌社は強いです。自分たちが思うままに誌面を作っていき、広告を取ってきて、それを使ってまた更にモデル達を育成し、誌面作りに活かし・・と好循環が出来上がります。

 冒頭に書いていた「日本のモデルが出ている雑誌の表紙」というのも中国側にしてみれば契約上の問題でやむ終えず行っているだけで事実「日中問題」の際に日本人モデルが表紙に使えなくなった際は当然中国人モデルをここぞとばかりに表紙にしてほとぼりが冷めた現在でも日本人モデルに戻したくないと思っています。

 当然、中国人モデルを使う方がそこも広告のスペースとなるわけですし、実際に誰も知らない日本の芸能人よりも読者になじみのあるモデルや育てていきたいモデルを表紙に据えたいと思うのはビジネスの観点からしても当然の流れでしょう。

現在、中国のメディアは日本のコンテンツをどう考えているのか

 今回の日中問題の件で一番衝撃的だった話があります。

 某ファッション誌の編集者が「日本のコンテンツが日中問題が収まるまで雑誌で使えないかもしれないって聞いたけど、そんな事起きたら雑誌、大変じゃない?」という質問に対して「そのときはそのときで何とかなるでしょ。別になくても普通に売れると思うよ」とあっけらかんとしていた事です。

 確実にこの数年間で日本のファッション誌コンテンツの重要度が変わってきており、「誌面になくてはならいないもの」から「なくなってしまってもどうにかなるもの」にまで成り下がってしまったことに大きなショックを受けました。

 また、私は現在日系人気ファッション誌のモデル審査員やイベントなどのお手伝い、アドバイザリーを行っているのですが、先日その日系雑誌編集長から新雑誌の相談を持ちかけられました。彼女の考えは「日本のファッション雑誌コンテンツと契約をしない」でした。

 理由は自分達でコンテンツを0から作るほうが自由に出来るから。日本のコンテンツをフルで受け入れると色々と制約が出てしまう、なら全て自分達でやりながら必要なものだけ自分達で取材をしたり、話を持ちかけるほうが早い。

 つまり「ノウハウがないのでとにかく契約してコンテンツを全部使う」から「自分達で必要なものを選択して使う」スタイルに完全にシフトチェンジしてしまったのです。

日本のコンテンツはまだまだ魅力的だと映っている。

 しかし、そこに対して何もしなければ誰も知らないままで終わってしまう。このような中で日本から進出する、またはしている会社が気をつけるべき点はどこなのでしょうか?

 まだまだ中国で「日本」というカテゴリーに対する価値は高いと思います。しかし、そこに「見せ方(付加価値のつけ方)」「組む相手」「現地化」がそろわない限りは宝の持ち腐れになってしまう可能性は非常に高いです。

 このような点が中国ビジネスにおいて非常に重要であると思います。



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