2011年11月27日日曜日

■観光業、風評被害克服へ奮起 東北再興 放射能と闘う


観光業、風評被害克服へ奮起 東北再興 放射能と闘う(4)
2011/11/26 6:05 日経Web

 11月10日、東京都内のホテルで福島県の観光をPRする「ふくしま七転び八起き観光キャラバン交流会」が開かれた。佐藤雄平知事や県内旅館の女将ら関係者300人以上が出席、会場は熱気に包まれた。


土湯温泉では9月以降、廃業が相次いだ(福島市)

 来場者に福島牛や会津地鶏など地元の農産物を使った料理を振る舞い、スパリゾートハワイアンズ(福島県いわき市)のフラガールが華麗なダンスを披露した。佐藤知事は「福島の観光業界は東京電力福島第1原子力発電所の事故による風評被害に苦しんでいる。一度来て安全・安心を確かめてほしい」と訴えた。

 福島駅からバスで約40分。安達太良山と吾妻連峰を望む土湯温泉は秋の観光シーズンにもかかわらず客の姿はまばらだ。9月以降、いますや旅館など数軒の旅館が廃業し、玄関には「お知らせ」がひっそりと張り出されている。


■経営破綻は5軒

 帝国データバンク郡山支店によると、大震災以降に経営破綻した福島県内の旅館・ホテルは5軒。震災で施設が損傷し、風評被害で将来の展望が開けない。営業を続けて負債を膨らませ取引先などに迷惑をかける前に、自主的に廃業を選んだ経営者もいる。

 もっとも暗い話題ばかりではない。風評被害の克服に向けて立ち上がる観光関係者も出てきた。
 会津若松市の奥座敷、東山温泉。利用者協同組合は日本政策金融公庫から融資を受けて、30年ぶりにポンプや配管などの施設を更新する。

 経営環境が厳しいことに変わりはない。それでも避難者の受け入れで組合に加盟する旅館が現金収入を手にし、気持ちに余裕ができたことが投資に踏み切った一因だ。理事長を務める、くつろぎ宿の深田智之社長は「泉質の良さを訴えて、観光客を呼び戻したい」と意欲を示す。

 北塩原村でリゾートホテル「ホテリ・アアルト」を経営する八光建設(郡山市、宗像剛社長)は周囲の森林を活用し、地上数メートルの高さに遊歩道を整備する構想を練る。マレーシアの観光施設「キャノピーウォーク」にならったもので、11月初めに現地を視察した宗像社長が決意を固めた。

 一帯は国立公園区域にあるため、環境省や地権者らと慎重に調整を進める。宗像社長は「五色沼など風光明媚(めいび)な裏磐梯の自然を活用して『日本の湖水地方』として売り出したい」と話す。


■官民二人三脚で

 いわき市の湯本温泉街は来年2月8日のハワイアンズの全館開業を千載一遇のチャンスと見る。原発事故収束に当たる作業員らに宿泊施設を提供してきたが、観光客の受け入れも再開した。客足は鈍いが、復興需要や避難所提供で得た資金を元手に建物の改修を計画する旅館も出てきた。

 旅館コンサルタントの井門隆夫氏は「行政が主導するキャンペーンの効果は一過性に終わる可能性が強い」としたうえで「客のニーズを把握している観光業界からアイデアを募り、行政が裏方に徹して支援するのが望ましい」と指摘する。福島の観光復活は官民の「二人三脚」以外にない。(この項おわり)


0 件のコメント:

コメントを投稿