2011年12月29日木曜日
■外国人観光客への無料航空券1万枚配布キャンペーンはお流れ
外国人観光客への無料航空券1万枚配布キャンペーンはお流れ
http://news.infoseek.co.jp/article/afpbb_2847876
AFPBB News(2011年12月29日15時01分)
【12月29日 Relaxnews】観光庁は26日、東日本大震災以降落ち込んでいる外国人観光客を呼び戻すために計画していた1万人を対象とした日本への往復航空券無料配布キャンペーンについて、2012年度の予算案に計上されなかったとして、実施を見送ったと発表した。
政府観光局の海外オフィスは、この計画が初めて発表された10月以来、日本への関心が急上昇したと報告しており、政府の決定に遺憾の意を示している。
一方、政府観光局は、国内の大部分は震災による影響を受けていないと強調。東京、京都、箱根、大阪、広島、札幌、沖縄などの人気観光地はまったく影響ないと述べている。
ロンドン(London)オフィスの広報は、「無料航空券がないからといって、日本訪問をやめないでほしい。この他にもお得なサービスがたくさんあるし、日本はこれまで以上に温かいもてなしで観光客を迎えてくれるでしょう」と話している。(c)Relaxnews/AFPBB News
[参考]
大阪スタイル
https://app.blog.eonet.jp/t/app/weblog/post?__mode=edit_entry&id=43419567&blog_id=144161
■旅の恥はかき捨て、ってこのことか?(いや、なんのこっちゃ。)
https://app.blog.eonet.jp/t/app/weblog/post?__mode=edit_entry&id=43419567&blog_id=144161
ところで、観光庁が企画した訪日誘客のための「航空チケット1万人プレゼント」が、なにやら税金の無駄遣い、と不評らしい。
東日本大震災と大津波、そして原発事故で日本の観光は崩壊の危機にある現在、多少、訪日の客足は戻ってきたというものの、3月以降の訪日観光客は(詳細は省くが)東アジアを中心に大幅に減少している。そのなかで、観光庁が次々に繰り出す企画はどれもこれも不評だ。ジャニタレの嵐を使ったプロモーションVPは「ニャー」だけでは日本の観光地を紹介しきれてはいない。しかも「ニャー」は外国人には意味不明。そんなニッポン行きたくない、となっている。そして、この一万人航空チケット無料プレゼント…。一貫した戦略まるでナシ。どれもこれもバラバラ。お役所仕事の最たるものである。
本日付けのウォールストリートジャーナルでも、すでにこの航空チケット無料プレゼント記事が掲載され、また、ニューズウイークでは、「こんな企画はムダ」との掲載記事もある。先日は、広告代理店の電通にクールジャパンのプロモーションを丸投げしたばかり。これが吉とでるのか凶とでるのか?
いずれにしても、すでに「航空チケット無料プレゼント」は世界中を駆け巡っている。「いやあ〜、あれはなかったことにして!」というのは、この期に及んで果たして口に出せるのか、どうか? 観光庁の出方に注目である。
●参考
「外国人観光客無償誘致」に賛成できない理由とは?
http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2011/10/post-351.php
2011年10月11日(火)11時22分 ニューズウィーク日本語版
プリンストン発 新潮流アメリカ by 冷泉 彰彦
以下、転載。
■観光庁:外国人観光客1万人無料招待で「日本の安全」PR~Fly to Japan!事業~墜落の危機?
http://www.net--election.com/news_aewcWGTrms.html
2011年10月13日 10:00 ネット選挙ドットコム
旅費無料で予算要求11億86百万円計上に批判の声
観光庁は、東日本大震災後に来日する外国人観光客の激減に対し、旅費無料で1万人の一般観光客を日本に招待する方針を固め、12年度予算の概算要求に11億円を盛り込んだことを、10日の読売新聞(YOMIURI ONLINE)が報じ、ネットで批判の声が上がっている。
記事によれば、日本滞在中にネットで世界へ情報発信してもらい、「日本国内の滞在が安全・安心であることを口コミで世界的に広げる効果を見込んでいる」という。
観光庁の予算概算要求は同庁のサイトにアップされていて、当該予算は11億8千万円。具体的施策としては、
○Fly to Japan! 事業【新規】(国際交流推進課)
要求額1,186百万円
震災支援への感謝の意を伝えるとともに、未だ放射能等への不安を抱える外国人の訪日を後押しするため、全世界から10,000人の外国人を日本へ招請し、「安全・安心な観光地・日本」と「新しい日本の観光スタイル」をSNS等を通じ全世界へ発信する。
併せて、応募者への訪日イメージ調査の結果を活用し、訪日イメージの回復策を実施するほか、宿泊や買物等による国内旅行支出について、帰国後の補足・分析を実施する。
とし、航空券を提供するとしている。
「円高」と「原発事故」対応への不満が批判を加速?
しかし、原発事故が収束しておらず、食品等において暫定基準値を設けている国への「観光」を、「旅費無料」だから「安全・安心である」ことをPRしに来てとか、復興増税を国民に求めるなかで、効果も定かでないことに11億円の予算を計上することに対し、ネットでは「ばかばかしい」と批判の声があがっている。
「円高」と「原発事故」が外国人観光客の激減の原因で、被災地の人たちのことを考えれば「ムダ金」を使っている場合じゃないという意見も多い。
観光庁は、「主要旅行業者の旅行取扱状況速報(平成23年8月分)」では、
○海外旅行は、対前年同月比で2.3%増加となった(6ヶ月ぶり増加に転じた)。なお、一部の旅行会社によると円高傾向が大きく作用し、特に近場の台湾や韓国などアジア方面を中心に回復基調にある。
○外国人旅行は、対前年同月比で40.5%減少した(6ヶ月連続減)。一部の旅行会社によると依然として福島原子力発電所事故の影響がその要因となっている。
○国内旅行は、全体的に回復基調にあり、対前年同月比で2.0%増加となった(6ヶ月ぶり増加に転じた)。
と報じている。
つまり、<一部の旅行会社による>というもってまわった表現で、「円高」と「原発事故」が外国人観光客の激減の理由であると指摘している。実際に、同速報では、「旅行商品ブランド(募集型企画旅行)の取扱状況」として外国人観光客が6,822人と、前年の17,024人と比べ、1万人以上減り、前年比40.1%となっている。
「ビジット・ジャパン事業」と「Fly to Japan! 事業」
観光庁は、昨年の事業仕分けで、「ビジット・ジャパン事業」が、「効果測定が不十分、広告宣伝費のあり方を見直すべき、施策の重点化を図るべき 等」の理由で、予算の3分の1縮減を言い渡され、22年度86億48百万円が23年度60億55百万円となった。今回の予算を見ると、「ビジット・ジャパン事業」をさらに約10億円減らし、「重点化を図る」意図からか、「Fly to Japan! 事業」(どちらも国際交流推進課の事業)に12億円として付け替えた。
「ビジット・ジャパン事業」は、予算からみると観光庁の中核事業だ。それを踏み込んで減額したことは評価できるかもしれない。さて、「Fly to Japan! 事業」。実施するなら、先ずは「ビジット・ジャパン事業」の中で、こっそりと100分の1程度の規模でやってみて「効果測定」すればどうだろう?
ニューズウィーク日本版「Tokyo Eye」(8月24日)で仏フィガロ紙記者アルノー氏が「嵐がニャーと鳴く国に外国人は来たがらない」というタイトルで、
日本がここまで世界の笑いものになる例がほかにあるだろうか
知的な読者を前に非常に心苦しいが、観光庁が制作したPR映像を見ていない人のために内容を説明しなければならない。これを読んで、見たくないと思ってもらえれば本望だ。
嵐のメンバーがそれぞれ日本の観光地を訪れ、招き猫のまねをして「ニャー」と鳴く。それだけだ。この映像は7月から世界133カ国・地域の在外公館、国際空港や飛行機、駅のモニターなどで流れている。要するに観光庁が宣伝しているのは嵐で、日本はそのステージにすぎない。制作費はもちろん、国民の税金だ。
素晴らしい国を自らばかにする。そして、その現実を誰も理解していない。日本人はそれで本当に構わないのか。
と観光庁を痛烈に批判した。「航空券を提供するから日本の安全性をPRしに来て欲しい」と全世界に発信する、観光庁の「Fly to Japan! 事業」は、<世界の笑いものになる>もうひとつの例、と思う人も多いことだろう。
■観光庁CFのミスは極めて初歩的だという理由
2011年08月22日(月)11時43分 ニューズウィーク NW
プリンストン発 新潮流アメリカ by 冷泉彰彦
人気グループ「嵐」を起用した「日本への観光キャンペーンビデオ」については、本誌の8月24日号掲載のコラム「嵐がニャーと鳴く国に外国人は来たがらない」で仏フィガロ紙記者、レジス・アルノー氏がバッサリ切り捨てていました。その記事を紹介する本誌編集部の小暮さんのコラムもかなり辛口でしたので、さっそく映像を見てみました。
私は、この欄で批判したCNNに制作と放映を依頼したらしい外務省の「アリガトウCM」と同じ種類の「間違い」が起きているのかと思ってみたのですが、少々違うようです。今回の「嵐がニャー」のミスは極めて初歩的なものです。それは「人間ゆるキャラ」とでも言うべき演出が、全くドメスティック(国内限定)だということに気づいていないという問題です。
このCMのコンセプトは単純です。嵐のメンバーが、日本の各地(東京、京都、鹿児島、沖縄、札幌)に行ってそれぞれの風物を紹介するのですが、その際に「お客さんいらっしゃい」という意味で「招き猫」を持ってゆき、嵐のメンバー、もしくはその土地の人という設定の登場人物に「ニャー」といって「招き猫の格好」をさせて、それを「決め」のポーズにするという演出です。
どんな効果があるのかというと、有名人がネコの真似をすること、またそのネコの真似が「招き猫」のポーズになることで、一種の「ゆるキャラ」的にフォーカスしたキャラクター・イメージが親近感と共に発生するからです。またその「招き猫」ポーズが、ファンシーグッズのキャラクターと同じようにイノセントなものであり、それが高圧的とか権威的という悪印象を与える可能性がゼロだという、極めて「安全」なものだからです。
では、どうしてそうした「人間ゆるキャラ」が歓迎されるのかというと、価値観の多様化した社会では、二枚目路線、国際派、マッチョ、知性派や芸術家肌など「特定の価値観に基づいた権威」が万人に受け入れられるということはなくなったからです。そんな中、価値観に共感できないまま、権威だけのメッセージが来ると多くの人は不快に思うようになる、そんな社会になっているのです。
そこで「高低の感覚」ではほぼゼロの度数に当たる「ゆるキャラ」でアプローチするのが「不特定多数」対象の表現では、当たり前になってきたわけです。私はこうした文化的な環境は少々「面倒な社会」だと思いますが、どうしようもない社会的・文化的な因果関係の順序でこういう状況になったということは否定できないし、むしろ他の文化圏に先んじて実験的に試行がされている現象の一つというイメージも持っています。要するにそのまま受け入れるしかないということです。
ですが、こうした文化的な環境と、それに基づいた「人間ゆるキャラ」がPRの表現として有効だというのは、日本国内限定だということは間違いありません。観光庁は、そのことに全く気づいていない、今回のミスが初歩的なものだというのはそういう意味です。
一方で、細かな点を見てゆくとキリがありません。120カ国以上に流すのであれば「ビールで乾杯するな」(アルコールへの忌避文化を持った地域には使えなくなる)とか、「ジンギスカン(?)をクローズアップするな」(地域によっては肉食タブーもある)、「そもそもネコがニャーと鳴くとは限らない」(言語によって鳴き声も変わります)、「鹿児島とか札幌とか沖縄とか、地図で示せ」(日本初心者向けではないのかもしれませんが)、とか具体的にも色々とツッコミどころはあるわけです。
そもそも「招き猫」いうのはアジア圏、特に中国圏では「カネを落とせ」とか「商売繁盛」という狭い意味に使われることが多いものです。特に台湾などでは金ピカの「招き猫」も長年人気がありますし、そもそも小判を抱いたものが多いなど、ストレートに「カネ」というイメージに結びついているわけで「日本をPRする」には相応しくないとも言えるでしょう。そもそも文化圏によっては「招き猫」というキャラクターを知らない人もいるわけで、その場合は「ネコの真似をして、まるで人をバカにしている」という悪印象になるかもしれません。
いずれにしても、今回のCFはビデオクリップとしては相当の作り込みがされているにも関わらず、国内向けの表現技法を海外向けに使ってしまったという、異文化コミュニケーションにおける凡ミスとしか言いようがないケースです。海外の人に「これはつまらないものです」と言って贈り物をしたらまるで相手を愚弄しているように受け取られるというようなミスと同質、同レベルの行動に、巨額な税金が投じられるというのは厳しく批判されなくてはなりません。
■嵐の日本PRを外国人がメッタ切り
http://www.newsweekjapan.jp/newsroom/2011/08/post-231.php
2011年08月19日(金)10時30分
フロム・ザ・ニュースルーム by Newsweek日本版編集部
「日本がここまで世界の笑いものになる例がほかにあるだろうか」――今週発売の本誌8月24日号掲載のコラム「嵐がニャーと鳴く国に外国人は来たがらない」は、こんな強烈な一文で始まる。
この「Tokyo Eye」というコラムページには毎週、東京在住の外国人コラムニストが交替で寄稿している。今週のコラムを書いたのは東京在住の仏フィガロ紙記者、レジス・アルノー氏。コラムの内容は、観光庁が外国人観光客を誘致するために制作したPR映像を批判するものだ。
このPR映像では、人気グループ「嵐」のメンバーがそれぞれ日本の観光地を訪れ、招き猫のまねをして「ニャー」と鳴く。PR映像の詳しい突っ込みどころについてはコラムをお読みいただければありがたいが、アルノー氏が問題視しているのは、この映像で外国人を魅了しようという観光庁の「勘違いぶり」だ。いわく、「日本はなぜ『最高の顔』で自分を売り込もうとしないのか。洗練された職人や建築家、知識人、画家、料理人ではなく、国内限定のスターを宣伝に使うなんて」。
アルノー氏は以前も、「観光庁のPRサイトは日本の恥」というコラムで観光庁による外国人向けPRを批判したことがある。だが、アルノー氏の観光庁批判は日本に対する愛情の裏返しだ。彼にとって一連の批判は、日本人が「素晴らしい国を自らばかにする」のをなんとか阻止しようという孤独な抗議デモ。冒頭で紹介した今週号のコラムを編集していた際、私が「今回のコラムはあなたのcynic(皮肉っぷり)が炸裂してる!」とメールを送ると、「僕はcynicじゃなくてromantic(ロマンティスト)だ。自分のことを、『日本の最後のウヨク』だと思っている」というメールが返ってきた。
アルノー氏は、問題のPR映像が世界133カ国・地域の国際空港や飛行機などで流れることを憂いてコラムを書いた。だが幸いなことに、私が先週、東欧を訪れた際に使ったパリ、プラハ、ブダペストの空港では「ニャーと鳴く嵐」にお目にかかることはなかった(個人的には、観光庁に「ニャー」とさせられた嵐のみなさんに同情している)。その代わりにパリのシャルル・ド・ゴール国際空港で真っ先に目に飛び込んできたのは、 イギリス銀行大手HSBCの巨大な看板広告だ。看板1枚につき各国のイメージを1つずつ描いたその広告で、日本のイメージとして描かれていたのは「漫画を読む相撲取」だった。なるほど、日本人が考える「日本」と外国人が描く「日本」には、いまだに大きな差があるようだ。
とはいえ、アルノー氏自身は以前のコラム「観光庁のPRサイトは日本の恥」で、「日本の価値を決めるのは、その95%が醜い高層ビルなど形あるものではない。その周りに存在する人間だ」と書いている。それは、例えば「外国人が日常的に体験する数えきれないほどの親切や気遣いの心」だと。
「外国の印象を決めるのはその国で出会った人間」――これは、先日の東欧訪問でも身に染みて感じたことだ。数カ国語でメニューが記載されているようなレストランで実際の2倍の値段をぼったくられ、鉄道駅でスリに鞄を開けられるという体験をしたプラハよりも、出会った人すべてが親切だったウィーンのほうがどうしても印象がいい。プラハの街並みは美しく、親切な人にも会ったと思うのだが、残念なことに嫌な経験というのは1つでも強烈に記憶に残るもの。反対に外国で思いがけない親切や気遣いに出くわすと、それだけでその国の印象が数割増しで美化されることもあり得る(私が単純なだけかもしれないが)。
こうした傾向は、外国人にも通じるようだ。例えば、ブダペストで訪れたハンガリー産ワインの店では「日本がとても好き」という店員に出会った。理由を聞くと、「この店に来る日本人客はワインにまつわる様々なことに通じていて、彼らにはワインを尊ぶ文化がある。それに比べて、欧米人は何十種類も試飲したあげく、酔っ払って床の上でつぶれてしまう」と肩をすくめた。ブダペストのタクシードライバーは、こちらが日本人だと分かると「偉大なマエストロ、小林研一郎!」とクラシック談義を始めた(小林はハンガリー国立フィルの桂冠指揮者)。
スシやサケ、マンガやスモウもいいが、日本と言って「日本人」が出てくるとなんだか嬉しい。観光庁がPR映像など作らなくても、外国人にとっては日本人1人1人が広告塔になり得るということだ。もちろんそれは、いい意味でも悪い意味でも。ましてや、外国人に向けて「ニャー」などと鳴かなくても。
■観光庁のPRサイトは日本の恥
http://www.newsweekjapan.jp/column/tokyoeye/2009/12/post-101.php
2009年12月21日(月)11時57分
今週のコラムニスト:レジス・アルノー
最近、観光庁が日本のPRのために作ったウェブサイト「Live Japan!」を見ただろうか。
見ないほうがいい。
私は初めて見たとき、このサイトは中国政府にハッキングされたのだと思った。日本の魅力を台無しにして、旅行者を横取りしようという魂胆だろうと。
観光庁の狙いは、外国人にこのサイトの「特派員」として日本の魅力を書き込んでもらうことで、彼らの家族や友人を日本に呼び寄せようというもの。サイトをデザインした人にとっては、日本の色とは赤と黒らしい。成田空港を汚染している「Yokoso Japan!」というポスターと同じ色だ。
私は思わずパソコンの画面から目を離し、わが家の(ささやかな)庭に目をやった。そこあった光景こそ、真の日本の姿だ。
窓の外には、日本の秋の色が見事なシンフォニーを奏でていた。東京の空は澄みきった青さで、まるで太平洋のよう。木々は紅葉し、黄色く染まったイチョウの葉は私の実家の食卓を飾っていたマスカットを思い出させる。もみじも冬に向けてさまざまな色を見せてくれるし、皇居の周りには深い緑が広がっている。東京をちょっと見回すだけでも、こんなにも色彩豊かな景色が目に飛び込んでくるのだ。
それなのに、日本を世界に紹介するために観光庁が選んだ色は、赤と黒。
■日本が世界に誇る財産は人情
彼らには、自分の国が見えていないのだろうか。世界中のデザイナーが日本文化に夢中だというのに。デザイナーだけじゃない。クリスマス前のニューヨークは、新発売の黒澤明監督作品DVDボックスの話題でもちきりだ。私の友人は、漫画や寿司、武道を通して身近になった日本文化を実際に体験しようと、日本を訪れる日を夢見ている。ところが、彼らが期待に胸をふくらませて航空券を買い、宿泊先を予約しようとすると......「赤と黒」にずっこけることになるのだ。
さらにがっかりなのは、外国人を使って日本をPRするという観光庁の発想が、実は的を得ているということ。外国人はいつでも、日本にとって最高の広告塔。彼らは日本を褒めてもけなしても、失うものもなければ得るものもない。別に彼らの生活やキャリアが、日本の魅力にかかっているわけじゃない。
日本に降り立つ外国人は、フランスの思想家レジス・ドブレが言うところの「純真な目」をもっている。彼らは日本の都市や田舎の摩訶不思議をまっさらな目で見る。この嘘のない第一印象は、貴重な宝だ。実際、観光庁のサイトが立ち上がってすぐの投稿には、新鮮で好意的なものが多い。赤と黒のサイトにはもったいないくらいだ。
実を言うと、私は観光庁に同情してもいる。私が思うに、日本の財産のほとんどは形のないものだからだ。日本の価値を決めるのは、その95%が醜い高層ビルなど形あるものではない。その周りに存在する人間だと思う。
外国人が日常的に体験する数えきれないほどの親切や気遣いの心。そして静寂。私を訪ねてくる外国人は皆、東京の静かさに驚く。さらに、スピードや効率化が最優先される現代で失われがちな、人と人とのつながりを大切にする姿勢。日本を訪れる人がそれまでの急速な時間の流れから解放される瞬間は、まるで壁に刺したメモ書きのように、心の中に留められることになる。私の心もこうしたメモでいっぱいだ。
■成田でセレブに語らせろ
例えば、レストランで見知らぬ日本人が私の分まで支払って何も言わずに去っていったこともある。また、父を連れて京都にある「1日4人様限定」のレストランを訪れたとき、父はこう言った。「4人のためだけのレストラン----私が人生ですべきだったのは、まさにこれだな」。
寺の僧侶が、仏陀について日本語で20分も説明してくれたこともあった。頼んだわけでもなく、私は彼の言葉を何ひとつ理解できなかったのにもかかわらずだ。(このような思い出を語りだすときりがない。実は草稿段階であまりに詰め込みすぎたために、編集者から次回以降のコラム用にと大幅にカットされたほどだ)
日本の魅力を伝えたいなら、外国人がタダでやってくれるだろう。帰国する外国人を成田空港でとっ捕まえて、カメラの前で旅行の思い出話を語ってもらい、その映像を売り出すのだ。
よほどのことがない限り、日本に失望した、という外国人に出会うことはないだろう。成田なら有名人に出くわすこともあるかもしれない。例えば、俳優のロバート・デ・ニーロ。ニューヨークの和食レストラン「ノブ・ニューヨーク」を共同経営するデ・ニーロは日本の大ファン。昨年は自分の誕生日を祝うため、家族を連れてニューヨークから東京に飛んできた。
フランス料理のシェフ、ジョエル・ロブションもいいだろう。彼に聞けば、(オープン・キッチンやコース料理など)フレンチやイタリアンレストランで見られるものの多くは、実は日本から取り入れたのだと教えてくれるかもしれない。日本のブランド「サマンサタバサ」とモデル契約している歌手のビヨンセも狙いどころだ。みんな、ここ日本と利害関係にあるセレブたちだ。
それなのに、彼らに日本への愛を語ってくれと頼まないのはどうしたわけか。こうした人々がいつか、世界の観光業界でわけもなく大切にしまわれてきたトップシークレットを明かしてくれるはずだ----「日本は最高だ」と。
●Régis Arnaud レジス・アルノー
1971年、フランス生まれ。仏フィガロ紙記者、在日フランス商工会議所機関誌フランス・ジャポン・エコー編集長を務めるかたわら、演劇の企画なども行う。
■日本の本当のPR役は嵐でもSMAPでもない
http://www.newsweekjapan.jp/column/tokyoeye/2011/10/post-396.php
2011年10月11日(火)11時40分 ニューズウイーク
李小牧(リー・シャム)
新宿・歌舞伎町のわが湖南菜館をよく利用してくれる友人の会社が最近、観光庁の中国人観光客誘致事業の入札に参加した。たった15分のプレゼンテーションと10分の質疑応答で8億円の予算の行き先は決まる。残念ながら友人の会社はダメ。落札したのは大手広告代理店だった。
友人によれば、1つのポイントは「現地に事務所があるかどうか」だったらしい。友人の会社は小さいので、優秀な中国人スタッフはいても現地に社員を駐在させる余裕はない。確かに落札した大手広告代理店はたくさんの現地事務所を抱えているが、私はかねてから観光庁のやり方に疑問を持ってきた。
大手代理店を通じて中国のテレビや新聞、雑誌にいくら広告を出したところで、中国人の心には響かない。スポンサー料を払って日本を紹介する旅行番組を作っても同じ。広告やパンフレットをまじめに見る中国人は少ない。中国人が重視するのは今でも口コミだ。
観光庁は中国人記者を日本に呼び、原稿も書いてもらうつもりらしい。ただ、今もコネが幅を利かせる中国で、有力な人脈なしに著名記者や人気キャスターを日本に呼ぶのは簡単ではない。
要するに、中国から観光客を呼ぶにはカネでなく人と人の関係が大事なのだが、観光庁はそこをあまり理解していない。このコラムでフランス人記者のレジス・アルノー氏が指摘した「嵐が観光地でニャーと鳴くだけのPR映像」がその証拠だ。中国人にとってアイドルは子供が見るもの。いくら予算を使って日本のトップアイドルを起用しても、大半の中国人はバカにされたように感じるだけだろう。
■「宝物」は足元に眠っている
たくさんの中国人観光客を呼ぶために嵐やSMAPは必要ない。サクラや富士山を宣伝する巨大な看板を北京や上海に作る必要もない。きれいな旅行パンフレットも要らない。「宝物」は自分たちの足元に眠っている。日本に住む在日中国人や、中国に詳しい普通の日本人だ。
中国人観光客に見てもらうべきなのは、「富士山」「温泉」「秋葉原」といった表面的な観光地だけではない。例えば誰でも好きなだけ酔っぱらえて、ラブホテルが100軒もある歌舞伎町は日本の自由と民主主義の良さを象徴する場所だ。東北の被災地の現実を見てもらうのもいいかもしれない。弾丸ツアーではなく、説得力をもってリアルな日本人の生活を紹介できるのは、在日中国人のほかにはいない。双方の文化をよく知る中国残留孤児たちに協力してもらうのもいいだろう。
去年の上海万博で日本産業館は大盛況だったが、そこで高級日本料亭の支配人を務めたフードビジネス・プロデューサーの柿澤一氏は中国の新人類「80後」をスタッフとして使いこなしながら、「ベーコンおにぎり」のように、これまでの枠を超えた中国人の好みに合う日本料理を提供した。彼のような中国人ニーズを知る日本人の知恵も借りたらいい。
もちろん口コミには限界があるから、情報発信には今や口コミを超える影響力を持つ中国版ツイッター新浪微博を利用する。日本の北京大使館の微博は記事が少なく内容もいまひとつだが、これを反面教師にして「モノではなく人間を売る」つもりでどんどん発信してもらえば、日本への関心は自然に高まるに違いない。
有力なメディア関係者とのコネは私に任せてもらいたい。知識人に人気の新聞「南方都市報」に連載もしているし、香港フェニックステレビの人気討論番組『鏘鏘三人行』のキャスターも知り合いだ。実は日本に関する番組をやりたいという申し出も受けている。旅行番組で取り上げてもらうより、一般の討論番組やニュース番組でリアルな日本と日本人を知ってもらうほうが、長い目で見て中国人観光客を引き付けるはずだ。
愛する日本のためだ。今回に限り、バックチャージはなしでいい(笑)。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿