2011年12月22日木曜日

■日本政府観光局(JNTO) 都市を活性化させる装置として有効なMICE(マイス)の誘致や開催を支援する


■日本政府観光局(JNTO)
都市を活性化させる装置として有効なMICE(マイス)の誘致や開催を支援する   
http://diamond.jp/articles/-/15128         
ダイアモンドオンライン

 国や地域に大きな経済波及効果をもたらすとされるMICE。外国人旅行(インバウンド)増加への取り組みを行う日本政府観光局(JNTO)では、特に2010年の「MICE元年」をきっかけに従来にも増して、MICEの日本開催への誘致支援活動を積極的に推進している。

  「JNTOが目指しているのは、インバウンド・ツーリズムの振興を通じて『観光立国』の実現を促進すること。特に国際会議やインセンティブ・ツアー(企業報奨旅行)は、開催や受け入れをした都市の国際的な知名度向上のほか、地域に大きな経済波及効果をもたらします。JNTOでは、国際会議観光都市(52都市)やコンベンション推進機関と連携しながら、MICEの誘致と開催支援業務を積極的に展開しています」と語るのは、JNTOの松山良一理事長である。


一般観光の7倍の
経済効果があるMICE

 日本政府観光局(JNTO)理事長 これまでMICE経済波及効果は数字として表されてこなかったが、JNTOは今年11月、2010年に日本で開催された国際会議の経済波及効果額を算出、発表した。

  それによると同年の日本の国際会議開催件数は、前年比1.8%増の2161件、外国人参加者数は、前年比33.1%増の14万4958人。いずれも過去10年で最多となっている。これは同年にAPEC、COP10などの特殊需要が発生したという背景もある。

  そしてこれらの国際会議がもたらした経済波及効果は、前年比15.7%増の5154億円に及んでいる(JNTO独自の効果測定システムによる)。

  内訳は、直接的経済波及効果額1371億円、間接的経済波及効果額3783億円である。MICEの開催が各地域や国に大きな経済波及効果をもたらしていることが、あらためて数字の上で明らかになったといえる。


MICEの経済波及効果は、一般の観光に比べると数倍大きい

 MICEの経済波及効果は、一般の観光に比べると数倍大きい。このことを証明するデータもある。

 JNTOや神戸市の経済波及効果調査でそれぞれ監修を務める渡辺厚氏によると、MICEの参加者1人当たりの経済効果は、一般の観光の7倍あるという。

 「神戸国際観光コンベンション協会が09年に調査した結果(注1)ですが、それによるとコンベンション参加者数は、観光客全体の4.2%にすぎなかったが、生産誘発額は観光産業全体の30%あった。つまり1人当たり7倍の経済効果があることがわかったのです」(渡辺氏)

 1人当たりの経済効果が大きいのは、参加者の滞在日数が一般の観光に比べて長く、しかも公費が使えるため、消費額が増える傾向にあるからだ。

 世界のMIICE産業に詳しい、MPI日本事務局会長の東條秀彦氏は、「MICEの先進国である米国では、MICE産業は全米の製薬産業にほぼ匹敵する規模だと言われている」と説明する。
 「経済活動を活発化し、地域社会に恩恵を与えるMICEは、もはや“都市(地域)活性化のために必要な装置”であると考えるべきなのです」
 

「開催地ならではのおもてなし」が
成功の条件

 国際会議協会(ICCA)の統計によると、2010年の国際会議の開催状況で日本は前年から順位を上げ、世界第7位となった。とはいえ都市別では、国内最多の東京が68件で世界第27位、アジアではシンガポール、台北、北京、ソウル、香港、上海、クアラルンプールに続く第8位という状況である。ここ数年、中国、韓国での件数が大幅に増加しているなかではやや、遅れをとっているのが現状だ。

 「首都圏には東京国際フォーラム、パシフィコ横浜、幕張メッセなどの施設があるが、宿泊施設が分散するなど使い勝手が悪い面があり、大規模なMICE開催に対応できないケースがあるのです」と東條氏は指摘する。実際に大規模なインセンティブ・ツアーの誘致に当たり、会場の都合がつかないため海外の開催地に譲ったケースもあるという。


日本のMICEは、量よりも質の高さで勝負するべきだ」

 とはいえ、日本独自のクオリティの高さで勝負すれば、誘致の可能性はむしろ高くなるという見方は多い。「施設などの整備が一巡した今、開催地ならではのおもてなしが多様に提案でき、それらを実現するために必要な街を挙げての受け入れ体制を構築することがMICE開催地の評価に繋がる」と言うのは渡辺氏だ。

 たとえば静岡県文化・観光部が実施したMICE観光満足度調査によると、MICEの参加者が催事と開催地に評価を与えるのは、「開催地ならではのおもてなし」に対する満足度が高いときであることが判明。その結果、静岡県では県内の産業観光や“茶摘み体験”など参加体験型のプログラムを発掘し、“ユニークべニュー”を多角的に拡大、誘致に成果を上げているという。

 東條氏も「日本のMICEは、量よりも質の高さで勝負するべきだ」と主張する。
 たとえばサミットが行われたザ・ウィンザーホテル洞爺では、韓国のグローバル企業がスイートを借り切って戦略会議を行った。あるいは報奨旅行でも貢献度が高い社員には、規模が小さくても予算の高いツアーが提供される。そうした“プレミアム・インセンティブ(&ミーティング)”の誘致に力を入れてはどうか、という提案である。

  東條氏は、「日本には伝統文化が残る美しい地方都市が多く、キャパシティが問われなければ、高級温泉旅館など、MICEを誘引する魅力的な施設は数多くある」と潜在的なMICE資源を指摘する。


MICEを促進する
公的機関の役割

  JNTOでは今、冒頭で理事長が語ったように、MICEの誘致や開催を積極的に支援している。具体的には、開催都市選定の手伝いから、理事長による招請状の発出、PR用の画像やDVDなど各種資料の提供など。また海外事務所を通じての国際団体本部へのアプローチ、開催地決定に影響力のある海外キーパーソンの招請を行っている。開催決定後は、寄附金募集・交付金交付制度の案内をはじめ、観光情報の提供などを行う。

  またJNTOとともに、大きな役割を果たしているのが、各地のコンベンション・ビューローだ。その主な誘致支援メニューには、コンベンション施設や宿泊施設の紹介、視察の受け入れやビッドペーパー作成の資料提供、プレゼンテーション用ツールの提供のほか、国際会議開催助成金の交付や、開催準備資金の無利子貸し付けなどがある。

 地方ごとに独自の取り組みも行っており、一つの例を挙げれば、名古屋観光コンベンションビューローでは今年9月から、MICEを取り扱う旅行会社を対象に「名古屋MICE推進助成金」制度を開始した。

 「名古屋を訪れる外国人10人以上の団体に、市内3泊以上かつ半日の観光旅行を条件に、1件当たり10万円の助成金を提供するというものです。愛知県にはグローバル企業が多く、海外からのお客様が常に数多く来訪している。こうした地域のポテンシャルを生かしてMICEの推進を図るのが狙いです」と事業部コンベンショングループの木野有恒氏は説明する。

  今年は東日本大震災の影響による停滞はあったものの、各ビューローの働きもあり国際会議の誘致は復活しつつある。キーパーソンの招請を積極的に行い、豊かな日本文化を印象づけることで、日本初開催の国際会議の誘致にも数件成功している。ある意味で、日本の国益にも繋がるMICE振興。その動きは、今さまざまな場面で本格化している。


■MICEは経済成長のエンジン&インフラ
~観光庁のMICE推進検討委員会~

 観光庁もMICEの推進に力を入れており、この7月には「MICE推進検討委員会」を設置し、今後のMICE政策の審議を進めている。

 9月に行われた中間とりまとめでは、MICEには「幅広い経済波及効果」とともに「ビジネス機会やイノベーションを生み出す効果」が大きく、いわば、わが国経済の成長エンジンであると同時にインフラでもあると指摘している。

 韓国、中国、豪州などが先んじてMICE振興に国を挙げて注力しており、このままでは日本のMICE競争力を維持できないと警鐘を鳴らし、官民が力を合わせてMICEを強力に推進する必要があると訴えている。
http://www.mlit.go.jp/kankocho/iinkai/kako.html


温泉旅館、震災復興地で国際会議を開催

Case
地域資源の活用と創意工夫で
地方都市での国際会議開催を成功させる

 国際会議は大都市ばかりではない、工夫を重ねれば地方都市での開催も成功する。地方でのMICE開催は、観光振興に新しい視点をもたらし地域の活性化にも繋がる。

 2010年8月18日から3日間、山形県上山市の“かみのやま温泉”月岡ホテルで、「計算機と情報科学に関する国際会議ICIS2010」が開催された。参加者は約200人で、半数近くがアジアや欧米からの外国人。実行委員長を務めた山形大学大学院准教授の松尾徳朗氏は、「大都市での開催に飽きている参加者が多く、科学技術分野の国際会議では前例のない地方の温泉旅館への誘致に逆にチャンスがあると考えた」と説明する。


■国際会議を温泉旅館で開催して成功

 旅館の和室や温泉は好評で、外国人参加者からは「温泉、浴衣という体験により日本に来ていることが実感できた」「仲居さんをはじめ、人々が驚くほど親切なのが印象的だった」「大都市を離れ地域の多様性を感じることができてよかった」などの声が聞かれたという。

 受け入れに際しては、現地までのアクセスを画像付きで詳しくHPで説明したり、多様な食生活を考慮してビュッフェスタイルの食事を用意、また時差を考えてチェックイン時にあらかじめ布団を準備するなど、きめ細かな配慮を行った。地元のコンベンション・ビューローも会場内に観光案内デスクを設置、英語対応のガイドを手配した。

  「かみのやま温泉では1度に来た外国人観光客の数としては最高で、観光振興の新しい視点が発掘され、地域活性化の機運が高まったと聞いている。地域資源をフル活用し、自治体やコンベンション・ビューローに協力してもらえれば、地方の温泉でも十分に国際会議が開催可能、今後はこのようなかたちの国際会議が増えてほしい」と松尾氏は語る。


■震災復興地、仙台で国際会議を開催

 今年10月30日から4日間、宮城県の仙台国際センターでは「微小光学国際会議(MOC)」が開催された。同センターでは震災で天井の一部が落ちるなどの被害があったが、復旧後の初の国際会議となった。MOCは参加者200~300人規模の会議で、偶数年は海外、奇数年は日本で開催するのが慣例となっており、北日本では初の開催となった。

 震災の復旧後、初の国際会議となった第17回「微小光学国際会議」。天井の一部が落ちる被害があったパーティ会場 「パーティでは地元の物産やお酒を出すなどできるだけ地方色を出し、海外からの参加者にも好評だった。この時期、仙台で国際会議を開催したこと自体、日本の復興をアピールできたと思う。地方での国際会議の開催は、助成金というインセンティブもあり参加費主体で会議を運営できる利点もある。首都圏での開催と比べてセッションの集中度も高く、運営のノウハウがしっかりしていれば地方で国際会議をやる意義は大きい」と中島教授は語る。



0 件のコメント:

コメントを投稿