大阪市:美術館構想、乱立 中之島図書館/府庁/中之島一帯、実現決め手なく
http://mainichi.jp/area/news/20120628ddf001040002000c.html
毎日新聞 2012年06月28日 大阪夕刊
大阪市中心部で美術館を拠点に集客を図ろうとする提案が相次ぎ、構想乱立の様相を呈している。橋下徹市長が府立中之島図書館(同市北区)を、松井一郎大阪府知事が府本庁舎(同市中央区)を、それぞれ美術館に転用するアイデアを披露、府市の有識者会議も美術館整備計画をまとめた。市内に美術館整備を待望する声はあるが、転用のための施設整備やコストなどハードルは高い。【熊谷豪】
「図書館を空けてやってもらえませんかね」。19日の府市統合本部会合で、橋下市長は中之島図書館の用途見直しを打ち出し、美術館に利用する考えを後日示した。同館は1904(明治37)年開館。重厚な洋風建築で、公立図書館としては全国でただ一つ国の重要文化財に指定されている。
一方、近現代の名作など約4500点を市が集めながら宙に浮いている市立近代美術館(仮称)について、府市の有識者会議(座長=橋爪紳也・府立大教授)は北区中之島の計画地に、8〜10の小型美術館を屋上に配置した大型美術館を整備する案を発表した。この市立近代美術館を巡っては、松井知事が1月、都道府県庁舎で現役最古の府本庁舎=1926(大正15)年完成=を転用する構想を明かしている。
しかし、3構想とも課題は多い。中之島図書館には、貴重な作品を保管するために湿度管理ができる空調など、不可欠な設備がない。エレベーターもないが改修には文化庁の許可が必要で、府教委は「防災などやむを得ない理由でないと認められないのではないか」と懸念する。有識者会議案の整備費は不明だが、約122億円をかける市の元の計画を橋下市長が「しょぼい」と白紙にした経緯がある。小型美術館の費用調達について「企業名を冠し寄付を募る」案も出たが、実現性は未知数だ。府本庁舎も、天井高が3・5〜5メートルで市所蔵の美術品の一部が展示できない▽床が収蔵品の重さに耐えられない恐れがある−−との課題を担当部局が松井知事に報告した。
さらに、大阪市に譲渡された旧サントリーミュージアム天保山(10年閉館、港区)も、美術館として存続する可能性がある。
結果的に構想乱立の火付け役となった松井知事は25日に中之島図書館を視察し、首をひねった。「何でもかんでも美術館というのでは、大阪は美術館ばっかりだという話になってしまう。適切に配置できるよう考えたい」