2012年6月30日土曜日

■大阪市:文楽補助金、全額カットへ 橋下市長は「面会断られた」 住大夫さん「知らなかった」

■大阪市:文楽補助金、全額カットへ 橋下市長は「面会断られた」 住大夫さん「知らなかった」
http://mainichi.jp/feature/news/20120630ddm012010067000c.html
毎日新聞 2012年06月30日 東京朝刊

大阪市の橋下徹市長は29日、公益財団法人「文楽協会」(同市中央区)への補助金について、予算ヒアリングのため申し入れた面会を人間国宝に拒否されたとして、「特権意識にまみれた今の文楽界を守る必要はない」と、全額カットする意向を表明した。

市は今年度本格予算案に昨年度比25%減の3900万円を計上しているが、橋下市長は議会で可決されても執行しない方針=写真は「曽根崎心中」の一場面。

文楽トップの人間国宝、竹本住大夫(すみたゆう)さんは「面会の申し込みがあったとは聞いていません」と驚き、「こっちが会いたいです」と話した。全額カットには「運営していけません」と話した。






■橋下市長 補助金カット問題 伝わらぬ文楽技芸員の思い 窓口「協会」に不手際
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120630-00000115-san-pol
産経新聞 6月30日(土)15時25分配信

 大阪市の橋下徹市長と文楽界の溝が日に日に深まっている。今年度の予算編成をめぐって橋下市長が29日、「文楽側が面談を拒否している」として補助金の全面カットを示唆、同日には文楽協会(大阪市中央区)の事務局長が突然辞任を表明するなど混乱する一方で、文楽を担う若手技芸員からは「そんな話は全然知らない。むしろ市長と話し合いたいのに」と戸惑いの声が上がる。食い違いの理由を探ると、文楽協会など窓口役の対応のまずさが浮かび上がる。(亀岡典子)

 ◆面談行われず

 「僕ら、いったいどうなるんでしょうか」。29日夜、30代の若手技芸員が不安げな表情を見せた。

 その日、橋下市長は、文楽側が市長との面談を拒否したことを明らかにし、今年度本格予算案に盛り込んだ3900万円の補助金支出を見合わせることを示唆した。その上で「何を勘違いしているんだか。特権意識にまみれた文楽を守る必要はない」と発言したからだ。

 しかし、文楽太夫の人間国宝、竹本住大夫さん(87)は「市長が会いたいという話はまったく聞いていない。私は一貫して会いたいと言い続けてきたのに…」と驚く。

 30代の技芸員も「若手の間で、橋下市長といつ話し合えるんだろうと話題になっていた。なぜこんな状況になったのか」と悔しさをにじませる。

 最初に橋下市長の面談要請が持ち込まれたのは、文楽の窓口である、文楽協会。だが協会側はごく一部の技芸員に、「市長が指定してきた日時は7月。6月中に予算が決まるのに7月に会うのは意味がわからない」「公開の場での面談など橋下市長に利用されて恥をかかされるだけ」などと説明し、市長との面談を断った。

 ◆幹部は府市OB

 橋下市長は「文楽協会、劇場、技芸員の3者の間でコミュニケーションがなさすぎる。責任の所在が明らかでない。文楽は構造的な欠陥をたださないといけない」とも批判している。

 確かに、文楽界の構造は複雑だ。太夫、三味線、人形遣い計82人の技芸員は、文楽協会と年間出演契約を結び、大阪・国立文楽劇場などに出演する。演目や配役を決定するのは劇場。協会と劇場、技芸員が一体になることはない。

 その上、文楽界の窓口役を担うはずの文楽協会の事務局幹部は、府・市のOBが占める。辞任した西口一男事務局長は大阪市職員OB、後任の三田進一氏は大阪府職員OBだ。ある技芸員は「府や市から協会にくる人は、たいてい5年以内に代わっていく。文楽を理解しないまま去っていく人も多い。事なかれ主義も蔓延(まんえん)している」と語る。

 ◆貧困との戦い

 橋下市長は、国や府、市の補助金を財源として協会から技芸員に支給される「養成費」の見直しを迫っているが、ここでも、窓口役の対応のまずさがあった。

 橋下市長に養成費の内容を尋ねられると、もうひとつの窓口役、大阪市ゆとりとみどり振興局は「文楽は世襲制ではないので指導するのに必要な経費」と、師匠が指導料を取るかのような説明をした。橋下市長は不信感を募らせたが、実は「養成費」は三味線の修理などの必要経費だ。

 文楽は庇護(ひご)されているとの印象が強いが、長い貧困との戦いでもあった。

 昭和8年に入門した文楽人形遣いの名人、故吉田玉男さんは先輩たちに、「まま(ごはん)、嫌いか」と聞かれたという。「ごはんを食べられなくていいのか」という意味だ。現在も若手の給料は芸歴10年で基本給は10万円に満たない。

 住大夫さんは「僕ら、贅沢(ぜいたく)はしてへん。こんな状況では文楽志望者が減ってしまう。芸能の伝承の根源的な問題」と嘆く。「現状を打破するためにも、ぜひ一度、橋下市長と話し合いたい」と話している。



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