2011年12月14日水曜日

■幸せ行き切符求める姿今も


幸せ行き切符求める姿今も
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2011年12月13日

 1987年の冬、北海道広尾町の小学生だった山村貴之さん(36)は叔父一家に連れられ、広尾駅から列車に乗り込んだ。この日を最後に廃線となる広尾線の「さよなら列車」。いつもより長い9両編成で、ゆっくり北へ。山村さんたちが降りた幸福駅は、記念式典を終えていたせいか、人影はまばらだった。駅を背に撮った記念写真の中の自分は、太陽の光がまぶしくて、目を細めていた。
 70年代、幸福駅は2駅隣の愛国駅とともに、「愛の国から幸福へ」のキャッチフレーズで一大ブームとなった。木造の駅舎には、人々が幸せの願いを込めて張った写真や切符、名刺がびっしり。近寄ると、紙が風に揺れ、文字の消えかけた「年代物」が下からのぞいた。

 帯広市内の風景を撮り続ける北畑徹大さん(71)は毎週末、幸福駅前で家族連れやカップルを撮影してきた。「ジャンプして」「キスしちゃいなよ」。たいていは笑って応じてくれる。心の余裕があるから、と北畑さんは思う。「普通でいられるって、幸福なんだよ」

 今は神戸市に住む山村さんはこの秋、久しぶりに幸福駅を訪れた。午後は、さよなら列車に一緒に乗った、叔父の長女で10歳下のいとこの結婚式。「ここ、何もないでしょ」と言いながらもうれしそうだ。「線路はなくても、今も変わらない風景が残っている」。隣で、昨年結婚した妻の秋野さん(36)が、優しいまなざしで夫を見つめていた。


■沿線ぶらり

 国鉄広尾線は、帯広駅(北海道帯広市)と広尾駅(広尾町)間の84キロ。民営化目前の1987年2月1日に廃止された。

 旧幸福駅―旧愛国駅間はバスで約15分。交通記念館となった旧愛国駅には切符やパネル、SLなどが展示されている(2月末まで[日]のみ開館)。幸福行き切符をかたどったモニュメントは撮影スポット。愛国神社はそこから徒歩20分。参拝者芳名帳に願い事を書くと祈願・奉納してもらえる。
 問い合わせ、ハッピーセレモニーの予約は帯広観光コンベンション協会(電話0155・22・8600)へ。


■興味津々

 旧幸福駅前で4月下旬から9月末まで開かれるウエディング体験イベント「幸福駅ハッピーセレモニー」。衣装を着て幸福の鐘を鳴らし記念撮影する。2人1組3000円(切符、写真、衣装代などを含む)。約30分。



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