2011年12月8日木曜日

■新広告枠入札システムが日本上陸


新広告枠入札システムが日本上陸
オンライン広告の価値はどう変わっていくのか
2011年12月5日      ad:tech tokyo 2011 Report
 アドエクスチェンジ(広告枠入札)に代表されるアドネットワークの進化が、今年に入り米国から日本のマーケットにも波及してきた。DSP(Demand-Side Platform)やSSP(Supply-Side Platform)などの新しいプラットフォームは広告主にどんな価値を提供するのか。「ad:tech tokyo 2011」では、サービスの提供者、利用者などそれぞれの立場で先端プレーヤーたちがその将来性を語った。

「アドネットワークスとアドエクスチェンジは、本当にオンライン広告の価値を高めるか?」より


米国では87%の広告主が入札で広告枠を購入

 米国から端を発したアドテクノロジーは、ネットワーク広告の世界でも急速な発展を遂げている。その顕著なものが、「アドエクスチェンジ(Ad Exchange、広告枠入札)」と「RTB(Real-Time Bidding、リアルタイム入札)」だ。

  従来、ネット広告を出稿する際は、はじめに自社商品のターゲットユーザーがいると想定される複数のメディアを広告主が選択、出稿先が決定すると各メディアのフォーマットに沿って入稿し、配信開始後メディアごとに最適化を行い、かつ、配信終了後のレポーティング内容やその分析を個別に行ってきた。

  しかし、アドエクスチェンジやリアルタイム入札の登場で、広告主は目的に応じて複数のメディアを横断的に選び、一斉に広告配信することが可能となった。

  このテクノロジー発祥地、米国の状況について日本マイクロソフトの味澤氏は、(1)RTBを通して87%の広告主が広告枠のバイイングを行っている、(2)ネットワーク・アドエクスチェンジのディスプレイ広告費の中で20%が自動化されたバイイングの仕組みを使っている、(3)RTB費用は、2010年度に日本円にして250億~270億円の費用だったものが、2011年度には650億円程に達するのではないかと予想されている、(4)4.35%のオンラインでの広告予算がRTBバイイングに使われている、(5)5.43%の媒体がRTBを通しての広告枠の販売を行なっていると報告。アドエクスチェンジを通じての購買している状況が定着してきたと述べた。

 これを受けて、グーグルの佐々木氏は、同社調査によって日本においてもインダイレクトでアドネットワーク、アドエクスチェンジ経由で広告枠買いたいという広告会社や広告主が増えている状況を紹介した。

 マイクロアドの渡辺氏は、同社が提供するRTBについて説明。これを受けて結婚情報サービス会社・オーネットの島貫氏が、広告主の立場から「新しいテクノロジーで出稿できるのは、新たな機会、手法が目の前に現れたということ。広告の出稿担当者の頭の切り替えも必要なので、現在、担当者と活用について詰めている」と言う。

 こうした新しいテクノロジーを活用した広告手法の普及状況について、ネット広告代理店セプテーニの佐藤氏は、「この1年でビジネスとして主流になりそうな手ごたえを感じ始めている」とし、今年は、広告ビジネスを地殻変動させる元年になるという考えを明らかにした。


アドネットワークとアドエクスチェンジは共存するのか

 次に徳久氏は、RTBが基本的にオークションの仕組みを取り入れていることから、広告の媒体社が簡単に受け入れられるものなのか、心理的な抵抗感はないのかなどについて質問。

 これについて、佐々木氏は、「プレミアムな媒体社は、アドネットワーク、アドエクスチェンジの機能をフル活用することで広告在庫をフルに収益化することもできる。既存の販売方法に加え、収益化の一つの方法としてアドエクスチェンジを導入するのも効果的」などと指摘した。

 一部では、アドエクスチェンジの登場で、従来のアドネットワークはなくなっていくのでは、との見方もあるが、この点、味澤氏は、「特性が違うので、どちらがどちらかを駆逐するということはない」という見解を述べた。

 つまり、アドネットワークはオーディエンスデータがアドネットワークによって用意されているが、アドエクスチェンジは顧客自身が色々なオーディエンスデータを保有するサプライヤからデータを買い付け、自由に組み合わせることができ、あるいは、データのオプティマイズ方法もアドネットワークはアドネットワーク会社が考える入札方法、フリークエンシー、提携先などの最適化方法で設定がなされているが、アドエクスチェンジは顧客自身によりこれらを自由に設定できると説明した。

 ブランドを意識していたり、フルサービスを受けたい広告主には純広告、フルサービスは受けたいが、ある程度のギャランティーが欲しい広告主はアドネットワークと純広告、なかでもアドネットワークの比率が高くなる。一方、セルフサーブでインプレッションを広くマーケットプレイスから買いたい場合は、エクスチェンジの需要が高くなっている、というようにニーズに合わせて用途が変わってくるため、顧客のポートフォリオのなかでメディアバイイングがなされていくというわけだ。

スマートフォンやSNSの普及とディスプレイ広告の再評価

 こうした広告枠の入札システムの登場は、再度ディスプレイ広告(Webサイトの一部として組み込まれている画像広告)の存在価値が見直されるきっかけにもなっている。背景として、画像データがどこでも見られるスマートフォンや、グローバルなつながりを瞬時につくることができるソーシャルメディアが普及したことも大きいようだ。

 グーグルがディスプレイ広告に注力する理由について佐々木氏は、「スマートフォンなどのデバイスが急激に普及し広告在庫が爆発的に増えている昨今、よいコンテンツがあちらこちらに散らばっている」現状を鑑み、ここに商機があると判断したいきさつを述べ、「よいコンテンツが散在している状況を放置しておくと、ユーザーがせっかくアクセスしてきても、広告はなかなかマネタイズしにくい。ここにオーディエンスデータを組み合わせて、最適な人に最適な情報を届けるべき」と、アドエクスチェンジの必要性を説明する。

グーグルの佐々木氏は「優良なコンテンツをマネタイズするツールとしてアドエクスチェンジは格好の仕組み」と強調する

 味澤氏も、アドエクスチェンジによるスマートフォン向けサービスを念頭に、日本マイクロソフトとしては、ウィンドウズOSに限らず、スマートフォンに最適化したページやアプリケーションも作っていく意向を示した。

 また代理店の立場から佐藤氏は、新しいニーズとしてソーシャルメディア系広告の扱いが増えてきていると述べ、アドエクスチェンジの登場で「広告主が拠点に依らず世界でキャンペーン活動やマーケティング活動ができるようになる、そうした実感がこの半年、1年でわいてきた」と、新しいマーケットの可能性を語った。


■パネリスト
・日本マイクロソフト株式会社 アドバタイジング&オンライン統括本部本部長 味澤将宏氏
・グーグル株式会社 モバイル、メディア&プラットフォーム媒体ビジネス統括部長 佐々木亨氏
・株式会社セプテーニ 代表取締役社長 佐藤光紀氏
・株式会社マイクロアド 代表取締役 渡辺健太郎氏
・株式会社オーネット 代表取締役社長 島貫慶太氏

■モデレータ
・株式会社プラットフォーム・ワン 代表取締役社長CEO
  デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社 取締役CTO 徳久昭彦氏

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