■中国人観光客を増やすには
市場を育てながら共に歩むべき
http://diamond.jp/articles/-/17440
2012年4月19日 莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
4月15日から、安徽省政府代表団、経済貿易訪日団などが、大挙を成して日本を訪問している。この原稿が掲載されるときは、まだ高知県など訪問しているさなかだろう。実は安徽省の今度の日本訪問は、うちの事務所が大きくかかわっている。特に安徽省旅遊局一行の訪問内容などのほとんどは、うちの事務所が手配したものだ。
形式に流れず
互いに真剣に議論
安徽省旅遊局関連の訪問内容は盛り沢山だ。まず、山梨県観光部との座談会と懇親会がシャングリラホテル東京で行われた。世界遺産である安徽省の代表的な観光スポットと、日本を象徴する富士山を被写体にする写真展を、この夏と秋にかけて、日本と中国両方で開催することが決まった。写真展の開催を通して、民間の相互訪問と交流を強化しようとするのが、双方の狙いだ。
続けて、石川県観光交流局、山口県宇部市、山口県観光交流局、日本航空、リョービツアーズ、JTB、ダイヤモンド・ビッグ社、観光経済新聞、トラベルジャーナル、中国語ジャーナル、博報堂、WizBizなどの地方自治体や企業、メディアと幅広くしかも内容の伴う交流を行った。特に、立ち上げたばかりの市民団体「日本・安徽省の友」とも、今後の草の根の交流について活発に意見を交換した。
視察訪問や企業誘致などの目的で、日本を訪れる中国の訪日団が主催するイベントの多くが形に流れてしまい、実を結ぶことが期待できそうな交流がなかなか見られないのが、昨今の現状だ。手前味噌になるが、今度の安徽省旅遊局と日本の地方自治体や企業、メディアなどとの交流には、真剣勝負なところが結構あった。日本での安徽省の知名度が低く、若い世代向けのアピールが弱く、そうした旅行商品も少ないという現状が指摘され、どのような対策をとれば、こうした問題の解消につながるのか、互いに真剣に議論し合っていた。
日本側も中国語の原稿やプレゼン資料などを事前に丁寧に準備して、ウィンウィン関係の樹立を中心にいろいろと提案したりしていた。山口県宇部市の場合は、久保田后子(きみこ)・宇部市長自ら関係者たちを率いて、座談会の会場に乗り込むほどだった。
東京での日程を済ませた後、安徽省旅遊局の一行が静岡県の伊豆を訪れ、地元の地方自治体や観光団体、業界の関係者との交流も行った。JTBの関連会社が積極的にその交流を仕掛け、根回したことが印象に残った。川端康成の『伊豆の踊り子』が中国で広く読まれているだけに、伊豆の売り込みも安徽省旅遊局の関係者たちの心に響いた。
安徽省と友好省県関係を結んでいる高知県も、安徽省旅遊局の訪問先になっている。高知県観光振興部も事前にいろいろ地道な努力と根回しをしていた。こうした目に見えないところの努力で、今度の安徽省旅遊局一行の訪問が実現でき、同県と安徽省との観光分野での交流を、新しいレベルにまで引き上げることができる土台を作れたと思う。
大都市しか見ていない
日本の大手旅行代理店
一年前に、インバウンド分野において安徽省などの中国の地方政府や旅行業界と交流したらどうだと関係者を通して、とある大手旅行社に提案したことがある。まったく相手にされなかった。理由は、安徽省などは市場としての順位がまだ低い、という。依然として上海、北京、広州などの大都市しか見ていないようだ。近視眼的な見方というしかないが、残念ながら、それが中国の観光市場を見る日本の現実だ、と認めざるを得ない。
しかし、中国国内の変化が早い。ここに面白いデータがある。トラベルサイトの「途牛旅遊網」によれば、今年の春節期間中、中国の一部の地方都市では、海外ツアーが国内ツアーを上回るか、それに匹敵する人気が見られた。海外ツアーを選択した観光客の割合が非常に高い、という。
たとえば、杭州では、海外ツアーを選択した観光客の割合が、ツアー申込者全体の42.7%(前年と比べて29.1ポイント高い)を占めた。青島は48.91%(同22.8ポイント高い)、内陸部の都市である成都に至っては、なんと66.1%(同23ポイント)もある。
そのなかで、中東、アフリカ、フランス、イタリア、スイス、オーストラリア、ニュージーランドなど高付加価値コースを選んだ人数が5割~6割を占める。ドバイ、南アフリカも人気が高い。平均単価は1万6000元以上(約20万円)、という。
海外旅行ブームが急速に中国の地方都市や内陸部の都市に浸透している証拠だと見ていいだろう。だが、こうした動きを、日本の旅行会社または地方自治体が、果たしてしっかりと捉えているのだろうか。心もとない。
安徽省は中国では決して大きな省とはいえない。それでも6700万人いる。市場順位がまだ低いと言われたその安徽省は今月26日に、安徽省の省都・合肥市と大阪を結ぶ直行便が就航することになっている。直行航路が開通したら、安徽省からより大勢の観光客が日本を訪れてくるだろう。次は旅行商品の開発だ。その意味では、安徽省の旅行社にとっても、すでに交流を始めている日本の地方自治体と一緒なら、新しい旅行商品を作りやすい。
成熟した市場から果実をもぎ取ることは誰にでもできる仕業だ。しかし、先を見つめて市場を育てながら相手とともに発展していく道を誰よりも先に歩み出すには、その市場を見る判断力と行動力が求められる。先に踏み出した地方自治体、企業は絶対有利になるだろう。
東京の座談会の会場で、小林明・山梨県観光部長の手を握りながら語った胡学凡・安徽省旅遊局の言葉は印象に残る。「これまで培った関係を大事にし、観光という目に見える結果に持っていきたい。そのため山梨県とはこれからも一緒にやっていく決意だ」。直行便が就航する直前のこの言葉には、いろいろな意味とメッセージを込めている、と私は思う。
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