【コラム】 日本を滅ぼす超高齢社会(5)―税金の先食い
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0612&f=column_0612_112.shtml
2012/06/12(火) 21:02
超高齢社会の最大の危機は、労働力人口の減少がもたらす生産性の低下、経済規模の縮小および財政難であるといえる。
日本では、急速な少子高齢化の進行により、年少人口と労働力人口は予想以上のスピードで減少の一途を辿っている。社会保障は国民の連帯や世代間の支え合いがなくては成り立たないもので、現金給付と現物給付(サービス給付)を受ける側としての高齢者が急速に増える一方で、給付を支える側としての現役労働者が減るばかりの状況では、早晩立ち行かなくなることは目に見えている。
また、グローバリゼーションの進行に伴う所得格差の拡大は日本の「国民皆保険・皆年金」体制を危機的な状況に陥れており、この体制を土台にした社会保障体系全般をも基盤崩壊の危険に直面させ始めている。
「国民の不安を煽るような発言では」と批判されるかもしれないが、決してそうではない。
非正規労働者やワーキング・プアの増加などによる健康保険の離脱および国民健康保険被保険者の低所得化、国民年金の保険料免除者の増加や未加入・保険料未納の多発、後期高齢者医療制度の行き詰まり等々、すべて社会保障の赤信号点滅として深刻に受け止めなければならないではないだろうか。
実際、日本の社会保障給付はとっくに収入と支出のバランスが崩れており、必要財源の多くは莫大な借金で賄われている。しかし、このような厳しい現状は必ずしも国民の間で広く知られているわけではないし、政府や政治家たちは知っていても政治的リスクを負いたがらず、思い切った方向転換に乗り出すような気配はほとんど見られない。
社会保障の各制度において行われている給付の規模や傾向を示すものとして社会保障給付費がある。国立社会保障・人口問題研究所がまとめた報告によれば、2009年度における社会保障給付費の総額は99兆8507億円であり、対前年度増加額は5兆7659億円、伸び率は6.1%である。社会保障給付費の対国民所得比は29.44%となり、前年度に比べて2.70%ポイント増加している。これを国民1人当たりでみると78万3100円になり、対前年度伸び率は6.3%である。こうした社会保障費総額はこれまで着実かつ急速に増大してきたが、その背景には社会保障制度の整備や人口高齢化の進行等が反映されている。
社会保障給付費の増大はいい面もあれば、悪い面もあるということはいうまでもない。受給側から見ると望ましいことであるが、負担側からすると当然問題である。その財源をみると、社会保険料が55兆4126億円で収入総額の45.5%を占める。公費負担が39兆1739億円で32.2%を占める。他の収入は27億2461億円で22.4%を占める。また、対前年度伸び率をみると、社会保険料が3.5%減少したのに対して、公費負担が19.8%、他の収入が139.2%それぞれ増加した。公費のうち、国が29兆3146億円、地方自治体が9兆8593億円である。
つまり、2009年度、社会保障の各制度においては総額99兆8507億円を給付したが、その中の39兆1739億円は公費である。この公費負担は実に全体の3分の1を占めている。
いわゆる公費とは、政府が何らかの方法で集めた収入である。問題は政府の収入はどのように調達しているかということである。
日本の税収はバブル経済の崩壊、不況の長引き、世界的な金融危機などを経て減少の一途を辿り、歳入のかなりの部分を借金とりわけ国債発行に依存しなければならなくなった。
財務省は毎年度、国の資産と負債などの額を企業の貸借対照表のように表す「国の財務書類」を公表している。それによると、2010年度末の時点で、負債総額は前年度末より23.3兆円多い1042.9兆円であった。一方の資産は21.9兆円減の625.1兆円であった。つまり、国の「負債」が「資産」を上回る「債務超過」の額が417.8兆円にのぼる。前年度末に比べて45.2兆円増えた。その主な原因は国債を発行して負債残高が膨らんだというのである。2012年度は民主党政権が当初予算から編成に関わった初年度である。マニフェスト実現のための費用や、地方交付税が増え、41.7兆円分の財源が足りなくなり、国債発行などで賄った(「朝日新聞」2012年5月29日付)。
そして2011年度末に国債や借入金などを合わせた政府の借金が959兆9503億円にのぼり過去最大となった。前年度末比で35兆5907億円も増えた。借金の内訳をみると、国債が同30兆7730億円増の789兆3420億円、政府短期証券が同6兆826億円増の116兆8673億円、借入金は同1兆2468億円減の53兆7410億円であった。この借金残高は今も増え続いており、12年度末には初めて1000兆円を超えると財務省は見込んでいる(「朝日新聞」2012年5月11日付)。
国債は、税収の不足を埋めるために発行される「赤字国債」と、橋や道路等を作るために発行される「建設国債」とに分かれる。国債発行は償還期間の長短を問わず、税金の先食いであることは間違いない。
厳しい経済情勢が続くなかで、日本の税収は伸び悩んでいる。すると、政府は急増する社会保障給付費を国債発行で賄うようにしてきた。2009年度以降の国の一般会計においては、税収よりも多額の国債が発行されている。そのため、現在の社会保障給付費は、少なくない部分が赤字国債によって賄われている。上村敏之氏の試算では、2009年度の時点で社会保障関係費における高齢者向け社会保障サービスに充当されている赤字国債は約10兆円である(上村敏之「社会保障・税一体改革の背景と行方―将来世代と雇用への配慮が不可欠―」『週刊社会保障』NO.2660 2012年1月2-9日)。
財源が足りなかったら、増税よりも国債発行。増税しようとしたら、与党内の意見調整とか、野党との協議(綱引き)とか、国民への説得とか、マスコミ対策とか、もう面倒くさいから国債発行でいいじゃん!国債発行の最大の利点はまさに「誰も反対しない」ということである。その結果、国債残高はどんどん膨らんでいって、すでにとんでもない額に達しており、しかも今も毎年乱発し続けている。これは日本の現状である。その深刻さに気付いている人はいったい何人ぐらいいるのだろうか。
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