2012年6月14日木曜日

■【コラム】 日本を滅ぼす超高齢社会(6)―誰も知らない国債乱発の弊害


【コラム】 日本を滅ぼす超高齢社会(6)―誰も知らない国債乱発の弊害
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0614&f=column_0614_032.shtml
2012/06/14(木) 10:58
       
 民主党の野田政権(民主党内部でも消費増税をめぐる意見はばらばらであるため、ここでは民主党政権と言わないことにする)は「社会保障・税一体改革」を打ち出しているが、野党、党内、世論からの猛反発に遭遇し予想以上に実現が難航している。その最大の要因は国債の乱発にあると筆者は考えている。

 いまの財政収入は社会保障給付費を賄うことができない。もし国債の発行を止めたら社会保障はたちまち窮状に陥り国民の生活保障は崩壊してしまう。そうすると、別の選択肢を選ばざるをえなくなる、つまり、消費税率の引き上げなどを含め増税することは唯一の道となるはずである。

 しかし、多くの政治家や有識者、マスコミなどが言っているように、増税に対する国民の意見は非常に厳しい。逆に、国債発行に関して国民は意外と寛容である、というよりも、黙認ないし容認しているというべきである。近年の報道を見ても、消費税関連のニュースは国債発行より圧倒的に多いことが分かる。これはまさにマスコミや世論、国民は消費税問題に関心が高く、国債発行にあまり注目していないことを意味する。こうした背景のもと、消費増税反対の人は多いのに対して、国債乱発の深刻性や弊害を認識している人は非常に少ない。

 筆者は勤務大学で社会福祉士の国家試験科目として「社会保障論」を担当しており、折に触れて社会保障財源の確保について自分の考えを開陳し、学生たちとの意見交換に努めている。最近は「不思議コーナー」を設けて、社会保障関連の「不可解な」ことを取り上げている。

 その第1回目は「消費増税反対と国債乱発容認」というテーマであった。このコーナーはもともと授業時間90分を効率よく使い、勉強にメリハリをつけるという意図もあるが、今回の話は大きな衝撃を与えたようで、受講生約110名中、30名以上が感想文でこのテーマに対する自分のコメントを書いた。筆者は寄せられた感想文を通して、現在の若者が消費増税や国債発行についてどう考えているかをある程度把握できたと思う。

 第一に、若者は国債への認知度が低く基本的な知識すらほとんど持っていない。「国債が例えば10年後の税金で返済されるということを初めて知り驚いた。」「国債の話を聞き、とても恐ろしくなったが、無知だった自分にも恐ろしくなった。」「言われるまで意識していなかったけど、言われると確かにと思った。」「この授業のおかげで消費増税についてよく考えるようになった。国債のことはあまりわからないが、詳しく知りたいなと思った。」

 第二に、消費税の負担だけに気を取られて、国債乱発の深刻性や弊害に対してまったく認識していない。「消費税率が上がると、出費が多くなるから、やはり簡単に賛成できないね。」「私も消費税は反対だと思う。どんどん消費税は上がっていくのに、国はお金を何に使っているのか全然わからない。」

 第三に、社会福祉の個々の制度や仕組み、技術的な部分に関心が集中しており、社会保障の財源をどう確保すべきかなど横断的、マクロ的な視点が欠けており、経常的に考えるような習慣はまだ身に就いていない。

 以上は4年制大学の社会福祉学科で社会保障論も専門科目として学んでいる学生の状況である。ましてやこうした専門的な学習を経験していない者は社会保障財源の確保といった視点から消費増税と国債発行の関連性を考えることが難しいだろう。

 しかし、反面、国債乱発の深刻性や弊害を説明すれば、ほとんどの人は消費増税の必要性に一定の理解を示すようになることも分かった。

 「国債が例えば10年後の税金で払われるのは、今は痛くも痒くもないが、将来大きな打撃を受ける。今までこういうことを知らなかったので、反対することなく黙認してしまっていた。大人の中にもこのシステムを理解していない人がいるのではないだろうか。採算が合うように、税金を使って国債を減らさなければならないという危機感を持った。自分たちの子供には重い負担がかからないように、きちんとこのことを教えてあげたいと思う。」

 「目の前の痛み(消費税)よりも目に見えない痛み(国債)の方が怖いだね。国債が少しでも減っていくといいだよね。」

 「国債について消費税よりも安易に考えていた。もっともっと深く考えるべきだと感じた。」

 以上は大学生2年生の意見であるとはいえ、大人も真剣に耳を傾けるのに値するほど重みがあると感じた。

(執筆者:王文亮 金城学院大学教授)



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