2012年6月15日金曜日

■【コラム】 日本を滅ぼす超高齢社会(7)―消費増税反対の大合唱


【コラム】 日本を滅ぼす超高齢社会(7)―消費増税反対の大合唱
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0615&f=column_0615_041.shtml
2012/06/15(金) 11:14
   
 日本には消費税反対の長い伝統があり、マスコミは急先鋒を務めており、政治家の多くも根強い反対派である。そのため、消費税の導入や税率の引き上げを支持する政党や政治家は間違いなく選挙で大きな痛手を受ける。今の民主党内の反対意見も選挙絡みのものがほとんどであると筆者は見ている。「消費税率の引き上げを支持するなら、選挙で戦えない」というのが政治家たちの本音である。結局は国民の多くが消費増税に反対するからである。

 では、なぜ消費増税に反対するのだろうか。ここではその理由を整理したうえ検証してみる。

 (1)無駄削減論。民主党内消費増税反対派のリーダーである小沢一郎さんはよく口にするのが、「増税の前にまずは無駄の削減をするべきだ」ということである。この論調は一見するともっとも理に叶っているようだが、実は大変に無責任な主張である。税金の無駄遣いは確かにいろいろなところにあり、特に目に見えないような浪費は国民の政治不信・政府不信を増幅させている。一方で、少し冷静に考える必要もある。

 第一に、無駄遣いは見付かり、一度省いたら、その分は二度と出てこないはずである。対して、社会保障給付費は毎年一定の額を予算として確保しなければならず、その性格は無駄遣いの省きとは完全に異なっている。

 第二に、無駄遣いは金額にしていくらあると見積もるべきなのか。数千億円はもちろんのこと、仮に1兆円あるいは5兆円と見積もっても、1年間の社会保障給付費に比べると微々たる額である。この論調はまるで無駄遣いを徹底的に削減すれば、社会保障の財源はちゃんと確保できるような印象を国民に与えているので、まずその虚妄性を明らかにしなければならない。いうまでもなく、税金の無駄遣いを許すわけにはいかない。重要なのは、消費税のあり方を無駄遣いの削減から切り離して議論すべきことである。

 (2)公職者身切り論。国民に負担を求めるなら、まず政治家自身は定員削減、公務員は給料削減をするべきだ、というのがこの論調のポイントである。これは(1)の無駄削減論にも通じる。要は、余計なものをバサバサと切り捨てておかなければ、国民に負担を求めても理解が得られないというのである。

 本来、国会議員の定数と公務員の給料はどうあるべきか、消費増税とは別の独立したところで議論を展開していくべきである。国会議員の定数は多すぎる、公務員の給料は高すぎるという判断であれば、消費増税をしなくても、それぞれを一定の水準まで引き下げなければならない。逆に、もしそうでなければ、消費増税と連動して引き下げる必要はないと考えるのが筋である。

 国会議員は政治家として民主主義の大きな一翼を担う存在であり、一定の数およびそれなりの処遇を保証することは民主主義の健全性を守り、国民の最大の利益につながる。また、公務員の特殊性および国民へのサービスの量と質を保証するという観点から考えると、公務員の数は少なければ少ないほどいい、または公務員の給料を国民の平均水準まで引き下げれば問題解決になるというのは安易なものである。

 (3)景気対策優先論。景気が悪いから、増税はすべからず。この論調は特に経済界の中で高まっている。消費税率を引き上げると、需要が減少し消費が冷え込み、経済はますます悪化する。したがって、消費税率を引き上げるよりも、まず景気の回復を優先的に考えなければならない。

 これも一見もっともだが、無責任な意見としかいいようがない。というのは、経済は停滞しても、景気が悪くても、社会保障の給付は国民に約束した通りにきちんと行わなければならないからである。その財源の確保を怠ったら、たちまち社会保障の給付が滞ってしまい、国民の生活保障ができなくなる。その結果、社会全体が不安定になり、デモや暴動が頻繁に起こる。ちなみに、ほかの先進諸国でも不景気が続いており、税金の引き上げによって社会保障の給付を行っている国は少なからずある。

 (4)低所得層負担増論。消費増税となると、買物をする限り、誰でもその分負担が増す。逆進性の強い消費税の税率の引き上げにより低所得層の負担感がより大きくなる。これも現在消費増税反対論の最大の理由である。しかし、この論調は少なくとも以下のポイントが抜けている。

 第一は、消費税率の多種化である。スウェーデンなどほかの先進諸国のように、消費税率を商品の種類によって分けて定めることは可能かつ必要である。例えば、日常必需品に今の税率のまま、ほかの商品や贅沢品にはより高い税率を適用する。このような工夫を講じれば、低所得層の負担増はかなり避けられるはずである。

 第二は、消費増税を財源とする社会保障の安定化と充実化は低所得層にとって受益も増えることである。現行社会保障の枠組みを維持したいなら、非正規雇用者や低所得層による社会保険の離脱を防ぐ必要がある。ほかには、生活保護の受給資格の見直しや、社会手当の所得制限の緩和なども考えなければならない。こうして見ると、社会保障の整備と健全化は最終的に低所得層の生活の安定と保証にもっとも大きく寄与することが分かる。消費増税は低所得層の負担増になるという論調は、片方のことを強調しているだけで、もう一面を無視あるいは隠したと批判されても仕方ない。

 (5)社会保障目的税論。これは一定の妥協を示すものである。それによれば、消費増税の分は社会保障の安定化等の目的で使われてもよいが、ほかのところ例えば財政健全化のために使われるなら反対である。しかし、そもそもなぜ消費増税分を財政健全化のために使ってはいけないのか。言い換えれば、社会保障のためなら消費増税を認めるが、財政再建では消費増税を認めないということになる。その背後には、日本の財政再建がなかなか進まない最大の理由が見え隠れしている。

 国債はどんどん乱発しても、借金はいくらしても痛くも痒くもないから、財源が足りなかったら、国債なり借入金なり目の前のことを糊塗できたら深刻に考える必要ない。このような認識を持っている人は決して政治家や官僚だけではなく、大学生の感想文で書かれているようにほとんどの国民もこのような状態にあるのではないだろうか。



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