2012年6月22日金曜日

■【コラム】率直に言おう、ユーロ圏崩壊はもはや時間の問題だ


【コラム】率直に言おう、ユーロ圏崩壊はもはや時間の問題だ
http://jp.wsj.com/Finance-Markets/Foreign-Currency-Markets/node_465107?mod=WSJFeatures
2012年 6月 21日  18:34 JST ウォールストリートジャーナル

 ドルをばらまき続ける連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和第3弾(QE3)を実施してくれるはずという根拠のない期待が過去2日間にわたってファンダメンタル分析を退けたことで反発した株式市場に騙されてはいけない。世界は厳しい現実を受け入れる必要がある。ユーロが最終局面を迎えたのだ。

 それは、6月17日に行われたギリシャの再選挙で理論上では最良の結果が出たにもかかわらず、6月18日のユーロ圏金融・債券市場の反応が悲観的だったことで明らかになった。僅差で勝利して第1党となった中道右派の新民主主義党(ND)が、第3党となった全ギリシャ社会主義運動(PASOK)との連立政権を発足し、欧州連合(EU)の債権国にとっては多かれ少なかれ有利な政策を押し通せる見通しが立ち、窮地に立たされていたギリシャには生き延びるチャンスが与えられた。にもかかわらず、その後ユーロ圏では失望感ばかりが広がり、スペインの長期国債の利回りは、ユーロ導入後の最高値を更新した。

 投資家は週末を迎えるにあたり、奇跡が起きる可能性に備えたかのようだった。NDが単独で過半数の議席を獲得する勝利を収め、ギリシャの新政権とEUの両者から、ギリシャがユーロ圏から離脱するリスクを排除するために、救済条件を修正するといった旨の信頼を回復させるような声明が出るのを待っていたのかもしれない。そうした奇跡が起きなかったとき、投資家はヘッジを解いて「誰が首相になっても、ギリシャがユーロ圏を離脱せざるを得なくなるときがいずれやってくる」と判断したのだ。こうした見方は今やコンセンサスとなっている。

 実際、多くの人にとってギリシャのユーロ離脱は既定の結論であり、この問題は過去のものとなっている。今、問題視すべきはスペインである。その経済規模はすでに救済を受けているユーロ圏諸国、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルを合わせたものの2倍近くにもなるからだ。

 スペインはすでに銀行の救済資金としてEU諸国から1000億ユーロの支援を取り付けている。これをドルに換算し、スペインの12倍にもなる米国の国内総生産(GDP)との比率で調整すると、その額は1兆2700億ドル相当になる。これは2008年に米国議会が米国の銀行を救済するために承認した不良資産救済プログラム(TARP)を5770億ドルも上回る規模である。

 ところが1000億ユーロでは足りないだろうというのが最新の懸念であり、非常に気がかりなところだ。スペインの銀行には総額で3兆ユーロもの保有資産があり、これは同国のGDPの約3倍に相当する。こうした資産に含まれる不良債権には償却を必要としているものも多いが、不適切な会計処理や、流動性が非常に低い不動産市場などのせいで、値洗いプロセスに遅延が生じている。

 最近、スペイン国債の格付けを投資不適格級の「CCC+」に下げた格付け会社イーガン・ジョーンズの社長、ショーン・イーガン氏は、スペインの銀行システムに関して、すでに約束された1000億ユーロに加えて、新たに最大で3000億ユーロの支援が必要になるかもしれないと考えている。

 そうした巨額の支援は、すでに限られているEUの救済基金を枯渇させるだけである。さらに悪いことに、その基金への出資国からスペインが抜ける分、残された国々の負担は増加する。そうした国々には、同じように債務問題を抱えるイタリア、ユーロ圏の破綻したパートナーのためにこれ以上の支援をすることに国民が断固反対しているドイツなどが含まれている。

 言い換えると、ユーロ圏は崩壊する運命にあるという結論にどうしても至ってしまうのだ。ギリシャの離脱がほぼ確実なだけではなく、スペインもユーロ圏全域に悪影響を及ぼす危険なドミノになる可能性が高い。

 ただし、それがすぐに起こるかというとそうではない。ギリシャの急進左派連合(SYRIZA)は再選挙で政権を取るのに十分な票を獲得できなかった。すべてのユーロ加盟国が財政緊縮と通貨同盟の信頼性の維持に取り組むことを確約している現状に、終止符を打ちたいと公言する政府はまだ存在していない。つまり、ユーロ圏が実際に崩壊するのは、かなり厳しい状況に追い込まれてからになるだろう。

 ユーロ圏の崩壊は避けられないというのが市場のコンセンサスである一方、実際にそうなるまでにかなり長い期間を要することになるだろう。これは現在の世界市場の沈滞ムードがしばらく持続することを示唆している。2008年のリーマンショックの後のように、投資資金がユーロやその他のリスクが高い通貨から一斉に逃避するということはないかもしれないが、ドルやその他の避難先に緩やかに絶え間なく流出する可能性はある。そうなると投資で利益を上げるのは難しくなる。

 欧州債務危機に決着が付くまでのプロセスは長く、痛みを伴うものになりそうだ。

(マイケル・ケーシー氏は、ダウ・ジョーンズ経済通信/ウォール・ストリート・ジャーナルが創設した外国為替ニュースサービス、DJ FXトレーダーの米州部門マネジングエディター。『The Unfair Trade: How Our Broken Global Financial System Destroys the Middle Class』の著者でもある)



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