2011年12月7日水曜日

■若者層の需要喚起、「具体性」と「基本の見直し」の視点も-観光庁研究会


若者層の需要喚起、「具体性」と「基本の見直し」の視点も-観光庁研究会
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=51253
2011年11月22日(火)

123  観光庁は昨年7月、産官学の関係者で構成する「若者旅行振興研究会」を発足した。2010年7月から2011年6月までの第一期若者旅行振興研究会では、旅行業界が若者に対し適切な商品提供をしていないのではないかという仮説に基づき、ボランティア・ツーリズムやキャラクター・ツーリズム、フラッシュ・マーケティングによる商品販売などが検証された。その結果、若者に訴求する商品造りには「旅の目的の明確化」が不可欠で、適切な商品提供をすることで需要につながることや、「ICT(情報通信技術)ツールの活用」で旅行自体に興味がなかった層を取り込み、旅行の誘発がねらえることが発表された。

 11月18日にスタートした第二期の「若者旅行振興研究会」では、若者のなかでも1年間で一度も旅行に行かない「ゼロ回層」など、旅行回数が少ない若者に焦点をあてた取り組みや議論を行なう。第1回の今回は幅広い観点で問題提起がされ、その内容は多くの旅行会社にとって参考になるだろう。


リピーターになりやすいサービス精神旺盛な男性
「エリートクン」はスペック重視

 今回の研究会で話題の中心となったのが「男性」だ。じゃらんリサーチセンター研究員の横山幸代氏は「男旅」として調査データを紹介した。

 2009年に20歳から24歳を対象として実施した働く若者旅行実態調査は、男性の場合は旅行経験率は恋人がいる場合で15.6%も上昇することや、働く男性の3割が家族旅行をする傾向を示している。また、2010年に20代から60代の男女に対して実施した「男性の旅行意識調査2010」では、男女の旅行感の違いが比較され、「同行する異性に喜ばれる」旅行をイメージしている男性の割合は13.4%と、女性に比べて9.9ポイントも差があり、「サービス精神にあふれている感覚が女性よりも大きい」ことが明らかとなった。

 その一方、女性の68.7%が「行ったことのないところへ行くのはワクワクする」と答えたのに対して、同様の回答をした男性の割合は51.3%と大きな差が見られる。この結果に対し、横山氏は「男性は女性と行く場合はいわゆる観光旅行に行く」という傾向があり、なるべく行ったことのあるところに行く方が自信がもてるため、「男性はリピーターになりやすい。一度つかまえるとライフタイムバリューが上げられるのでは」と見ている。

 また、これらの調査結果から横山氏は「オトコの消費仮面」として、男性を「エリートクン」「うんちくクン」「アーリーアダプター」「匠クン」「いい人クン」の5つのクラスターに分類している。20代から30代の独身男性が多く集まっているのが、「エリートクン」とする層で、色々な経験にポジティブで本格的なものに惹かれる傾向が見られるという。

 例えば、「エリートクン」は若さゆえに消費経験値を上げたいという気持ちが表われているため、高層階から見える夜景などスペックを重視するようだ。横山氏は「この気持ちに火をつければ旅行に誘引できるのでは」と、アピールするためのヒントを示唆した。


写真だけでは「刺さらない」若者
動画サイト活用で新たなチャンスが生まれるか

 このほか、若年層に訴求していくためには何が鍵となるのだろうか。研究会ではメンズファッション誌の販売部数ナンバー1を誇り、10代から20代の若者から支持を得ている雑誌「smart」の編集長を務める太田智之氏を迎え、ヒントを探っている。太田氏は、かつては街のおしゃれな人を撮って掲載するファッションスナップが人気企画だったものの、今は人気が落ちてしまったという。ファッションスナップは、読者が自分ならどのような着こなしをするかといった「写真と読者の対話」に楽しさがあったというが、太田氏は「(今の)若者は写真を見たときに情報の相互やりとりをしなくなったのでは」と推測している。つまり、旅行系の本に置き換えて考えると、若者が旅行先の風景写真を見ただけでは「刺さらない」かもしれないというのだ。

 同様に、ダイアモンド・ビッグ副本部長の奥健氏は、2003年から学生を対象とした海外ボランティアツアーを卒業旅行の商品として企画してきたが、学生が納得感を得るためには「リアルなところを完璧に見せることが重要」だという。ボランティアツアーの募集パンフレットには風景写真だけでなく、日程表に沿って参加者や現地の人の表情を写した写真も交えながら、具体的に何をするのかを詳細に示すことで、初めての旅行となる学生でも参加できるように誘引している。

 「見せ方」という意味では、第一期の研究会でも取り上げられたように、若年層の用いるコミュニケーションツールの活用もポイントとなる。楽天トラベルの執行役員で事業推進第二部長の上山康博氏は、楽天会員の15歳から26歳の高校生、大学生を対象とした「若年層のコミュニケーションに関する調査」の結果を発表。それによると旅行、レジャーの情報収集には「インターネットやパソコンに数字が偏っている」という。

 また、調査では他の人と情報交換にはmixi、facebook、TwitterなどSNSが使われることが示されたが、Youtubeが74.5%、ニコニコ動画が59.0%と動画サイトも「思った以上に使われている」。その一方、上山氏は動画サイトには「観光、旅行、ツアーに関わるヒットコンテンツはほとんどない」と指摘する。こうした現状に対し、上山氏は「アニメと旅行商品の合体」など、閲覧者の興味をひくような動画を作成し、誘客をするという方法にチャンスがあるのではないかと見ている。


「旅をしたくない」ではなく、「仕方がわからない」
「前提を疑って」得られる若者旅行のヒント

 若者を旅行に誘引するための方法が画策される一方、「前提から疑っていく」をキーワードに雑誌編集をしている太田氏は、若者は旅行がしたくないのではなく、「旅行の仕方がわからないのでは」と指摘する。例えば、ファッション誌の編集者はごく基本的な事柄を扱うことは避ける傾向にあるが、「本当は、読者は知らないのではと疑ってみる」という発想で、着こなしを「一から教える」企画を打ち出したところ、反響が大きかったという。

 「いくらなんでもそれは知っているだろう」と思われるようなことに改めて向き合うことは、意外な突破口となるかもしれない。日本交通公社主任研究員の川口明子氏も「自分も若い頃は旅行の仕方がわからなかった」と共感する。「旅慣れていない頃は旅行会社の店舗に入るのも怖かったし、対応が冷たいと怖くてひるんでしまった」と話す。

 川口氏はまた、最近の旅行者の傾向自体の「前提」にも着目した。「日本人の大きな流れでいうと、旅慣れてきたので団体から個人へ、個人旅行のネット手配という認識があるが、若い人は旅行の仕方を知らない。知らないと動けない人が多いのでは」という。実際に、研究会に参加した学生からも「パッケージのプランの方が旅行に行きやすいというのはあると思う」という声が聞かれた。

 前提を疑い、改めて観光・旅行業界の基本的な部分を見直すことも、若者と向き合う上では大きなヒントとなり、若者層の需要喚起で重視すべき事項の1つとなりそうだ。



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