【コラム】シャネルの値段をつり上げる中国
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2012/03/04 05:51李性勲パリ特派員
中国の富裕層が世界の観光業界、ブランド業界のお得意さまであることは今更ニュースでもない。しかし、その現場を実際に目撃すれば、「こんなにまで…」という言葉が自然に出てくる。
フランスは今、冬のセールが盛りだ。ずっと狙っていた服、靴、かばんにパリっ子たちが財布を開くシーズンだ。しかし、パリっ子たちは最近、「欲しい品物を買うためには、中国人が買い占める前にデパートに行かなくてはならない」と話す。果たして本当なのかと思い、早朝に百貨店に足を運んだ。
午前9時20分、開店10分前に観光バス1台が百貨店前に止まった。中国の大型連休、春節(旧正月)を迎え、フランス旅行に訪れた約30人の中国人観光客だった。彼らはまだ開いていない百貨店の入り口に集まり、シャッターが上がると1階の売り場に直行した。そこにはシャネル、ルイ・ヴィトン、グッチなどのブランドが集まっている。記者は商品ではなく、買い物客の姿と言葉を求めて、売り場を回った。
シャネルの売り場には、中国人の買い物客5人と中国語ができるマネジャー2人がいた。売り場の入り口に並んでいた5人の客も全員が中国人だった。フランス人といえば、マネジャー2人と警備員2人だけだった。ルイ・ヴィトンの売り場では、中国人客20人が買い物に熱中していた。たまに韓国語も聞こえた。そこで20分余り観察していたが、中国人と韓国人を除けば、日本人4人と英語を話す買い物客3人を見掛けただけだ。フランス人には1人も出会わなかった。
もちろんフランス人がいないのは、地元っ子があえてそんな早朝に買い物をする必要がないためだ。しかし、夜の百貨店の様子もさして変わらなかった。中価格帯のブランドの売り場にはフランス人が多いが、セールもしていないブランド店では中国人が絶対多数を占めた。
そんな中国人観光客にいい加減に接客するわけにはいかない。最近、パリのシャルル・ドゴール空港では中国語による放送を開始したが、北京語だけでなく、方言の広東語による放送も行っている。深セン、広州の富裕層が対象だ。空港の利用方法を中国語で説明するスマートフォン専用アプリも開発された。「英語が分からなければ、フランス語で答える」のが普通のフランスでこんな待遇を受けられるのだから、中国人の肩にも力が入る。そうしたせいか、中国人観光客は高価なハンドバッグを2-3個まとめ買いするケースが多い。
ブランド業者がそれを放っておくはずはない。価格をじわじわと引き上げている。原材料価格の上昇が理由と説明するが、誰も真実だとは思っていない。もともとブランド品の価格は原材料価格や流通費用などで決まるものではないからだ。そうやって値上げされた商品は、韓国に行くと、「ブランド至上心理」とも反応して、さらに高値になる。それでも買うという人が韓国でも列を成している。韓国で3秒か5秒に1個売れるというブランド商品は、シャンゼリゼ通りでは目にすることはできない。
韓国人のブランド好きも中国に劣らない。消費は自由だ。しかし、ブランド価格上昇の主因がデザイン、品質、希少価値ではなく、中国の富裕層だということを知ると、少々複雑な思いだ。
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