2012年6月18日月曜日

■米国の子ども養育費は約2400万円、大学の学費含まず


■米国の子ども養育費は約2400万円、大学の学費含まず
Real Time Economics
http://jp.wsj.com/Life-Style/node_461450?mod=Right_pickfree
2012年 6月 15日  12:40 JST

 新たな報告によると、昨年子どもを1人もうけた中間所得層の両親は、その子を育てるために向こう17年間で約30万ドル(約2400万円)費やすと予想される。
 
 米農務省は子どもの養育制度や里親制度のガイドラインの作成に使用する目的で、子どもへの家計支出に関する年次報告書を作成している。それによると、子ども1人を育てるのに支出する金額は、中間所得層に属す両親と子ども2人の家庭で年間1万2290ドル~1万4320ドルと推計された。中間所得層は年間の課税前所得が5万9410ドル~10万2870ドル(約470万円~820万円)と定義されている。

 また最高所得層の家庭が子ども1人にかける金額の平均は、最低所得層の家庭がかける金額の2倍以上となった。昨年、最低所得層の家庭に生まれた子ども1人に今後17年でかかる金額は推計21万2370ドル、最高所得層は49万0830ドルとなった。
 
 報告によると、子育てにかかる費用のうち、最大の比率を占めるのが住居費で30%、それに保育・教育費の18%、食費の16%、交通費の14%、医療費の8%と続く。
 
 この報告は約50年前の1960年から出されている。60年当時の推計結果を2011年ドルベースでインフレ調整すると、中間所得層に属す親2人の家庭は子ども1人に対し、17年間で19万2000ドルを費やすだろうという計算になる。ここ50年で最も大きく変化したのは、保育・教育にかかる費用の比率で、1960年ではわずか2%に過ぎなかった。
 
 地域的に見ると、養育費用が最もかかるのは北東部の都市部で、最もかからないのは農村地域だった。
 
 100万ドルの4分の1以上にもなるこの養育費総額を聞いて既におじけづいている人は、以下のことも覚悟したい。それはこの報告が向こう17年間、つまり子どもが17歳になるまでしか対象にしていないということだ。したがって、子どもを大学に行かせるとなると、親の支出はもっと増える。農務省報告でも、カレッジボード(米大学入試センター)の推計として、2011~12年度の4年制の私立(非営利)大学の学費が平均で年間2万8500ドル、生活費(寮費と食費)が1万0089ドルになると付記している。

[リアルタイム・エコノミックス(Real Time Economics)では米経済、連邦準備理事会(FRB)の金融政策、経済理論などに関する独自取材ニュースや分析、論評をリポートする]

記者: Phil Izzo





■ハーバードはどうしてホームレス高校生を何人も合格させるのか? 
http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2012/06/post-445.php
2012年06月15日(金)11時55分 冷泉彰彦

 この春、ノースカロライナ州のローンデールという小さな町に住む、ドーン・ロギンスさんという女子高校生のもとに、ハーバード大学から一通の封書が届きました。この春高校を卒業するロギンスさんは、何校かの大学に願書を出しており、既に分厚い入学案内を同封した合格通知も受け取っていたのです。ですが、ハーバードから来たのは薄い封筒でした。

 これは不合格通知に違いないと思って開封したロギンスさんは、文面を見てビックリすることになります。そこには、いかにもハーバードらしい文面で「小職は合格者選考委員会の決定に従って、あなたを2016年卒業見込み生として入学を許可する旨、ここに通知することを喜びとする者であります」と書かれていました。ロギンスさんは、ハーバード大学に合格したのです。地元のバーンズ高校としては開校以来初めての快挙でした。

 現在18歳のロギンスさんは、貧困とドラッグ中毒に囲まれて育ちました。父親は家庭から去り、母親は新しい交際相手が犯罪を繰り返すたびに保釈金を払い続けて経済的に破綻、ロギンスさんは最後には遺棄されてしまいます。家族が失踪し、住む家のなくなったロギンスさんは祖母を頼りますが、祖母もまた深い問題を抱えており、いわゆるゴミ屋敷の住人でした。

 高校に進学した時点では、不登校が目立ち、学校は彼女を「ドロップアウト候補」とみなしていたそうです。ですが、彼女はそこから自分の力で這い上がって行ったのです。「私はバイオ(生物)が好きでした。バイオを極める中で何か新しい発見に関わって行きたい、それが夢になったのです」というロギンスさんは、高校から「生徒と用務員の二重在籍」を認めるという特例を受けて、放課後は校舎の掃除をして生活費を得て、勉強に打ち込んだのだそうです。

 決して進学校ではないバーンズ高校では、バイオなど理科の科目の高度な段階の授業は受けられないことが分かると、学校は通信教育で高度なレベルの単位が取れるように配慮もしたのだそうです。「人生、辛いことばかりでしたが、勉強に打ち込んでいる時は他のことは考えなくていいので、私は幸せでした」というロギンスさんは、ハーバードでは生物学を学ぶと同時に、自分と同様の境遇にある子供たちを救済するためのNGOの立ち上げ準備に入っているそうです。

 ハーバードがホームレスの学生を合格させたということでは、他にも2000年に入学して、同大学卒業後に心理カウンセリングの会社を立ちあげているニューヨーク出身のリズ・マレーさんの話が有名です。彼女に関しては、入学時点で「ニューヨーク・タイムス」が支援をしたり、全国メディアも取り上げたりしたからです。マレーさんの場合は、都市型の退廃した生活に陥った両親からネグレクトを受ける中で、15歳の時に母親がエイズで死亡、父親はホームレスの救護所に入ってしまって、自分は遺棄されています。こうした経験を踏み台に、現在のマレーさんは、同様のケースに陥った人々を救済する活動をしています。

 ちなみに、こうしたストーリーは「いかにも東海岸のリベラルなカルチャー」という印象を与えるかもしれませんが、マレーさんの物語も、今回のロギンスさんの物語も、FOXニュースをはじめとした保守系のメディアも大変に熱心に伝えています。アメリカの保守思想というのは、小さな政府を実現するためには弱者を切り捨ててもいいという「割り切り」はしないのです。政府に頼らない中で、個々人の努力と相互扶助でコミュニティが維持されるようにしたい、そのためには何よりも機会の平等と、実際にサクセスストーリーを応援し続けることが大事だというのが彼等のイデオロギーの核にはあるからです。

 それにしても、どうしてハーバードは何度もホームレスの学生を合格させるのでしょう? 理由は簡単です。アメリカの大学が考える「合格基準としての学生像」に合致するからです。大学により細かなところは違うようですが、基本的にアメリカの大学のコミュニティで色々な人と関わる中で私なりに理解した「合格基準としての学生像」というのは、非常にシンプルなものです。

(1)入学そのものが目的ではなく、入学後の学習に強いモチベーションを持っていること。(2)授業における建設的な問題提起、教師や先行研究への知的批判、大学コミュニティでの活躍など在学中に大学に貢献できる資質であること。
(3)大学という場を活用して伸ばした能力を生かして、将来には社会的・経済的・学術的な成功者となりうる潜在能力を有していること。

 要は、入ってから益々頑張り、周囲にいい影響を与え、将来のサクセスで大学の評価を高めてくれそうな人物ということです。マレーさんも、ロギンスさんもそうした基準に合っているという判断をした、それだけのことだと思います。もう一つ付け加えるなら、ハーバードなどの伝統校は、その伝統を絶えることなく継承するためには、より「濃い履歴」を持った学生を入学させたほうが良いということを経験で知っているのだということはあるでしょう。

 そんなわけで、彼女らをハーバードが合格させたことは驚くには値しません。ですが、3万通を超えるという願書の中から、例えばロギンスさんの願書に「キラリ」と光るものを見つけるのは、大変に難しいことだと思います。ちなみに、ロギンスさんのSAT(国語と数学の統一テスト)のスコアは2400点満点中の2110点だそうです。この数字だけ見ればハーバードの合格圏のやや下であり、また1万人近い膨大な受験者が集中するゾーンでもあると思われます。

 どうしてハーバードは、そこからロギンスさんを「見つけ出した」のでしょうか?

 それは、先ほどのロギンスさん宛の合格通知にあった「選考委員会」のシステムにあると思われます。つまり複数の専門家が、願書の一字一句、それこそ履歴書、エッセイ、推薦状、内申書を徹底的に読み込み、合格基準に合致した学生であるかを評価してゆくのです。大学によっては、一種のポイント制を導入して諸要素を総合評価し、合格ライン以上の学生は信憑性チェックだけでスルーさせる一方で、ボーダー上の学生に関しては一人ひとりの合否について時間をかけてディスカッションして決めるという手順を取っているそうです。

 恐らくハーバードは、こうしたプロセスに最も手間暇をかける大学なのでしょう。ロギンスさんに合格通知を出したというのは、PR効果を狙った思いつきや政治的なメッセージなどではなく、合格判定の精度の高さ、貪欲なまでの人材の発掘力の結果という理解をするべきなのだと思います。



0 件のコメント:

コメントを投稿