2012年6月5日火曜日

■都市化問題に苦慮する中国政府、次の一手は


中国  都市化問題に苦慮する中国政府、次の一手は
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0605&f=business_0605_078.shtml
2012/06/05(火) 11:29
       
 大きな国土面積を有し、耕地面積でも世界第3位にランクする中国はいつまでも農業立国で国を支えていくわけにはいかない。富の最適分配をめざして出発した新生中国はこれまで数々の政治、経済改革を経て、自己矛盾と常に闘争しながら脱皮し、世界市場に近づいてきた。近代化を目指すべく新しいステージ入りをしてきている。

 現代中国では、都市数が増えているばかりでなく、都市化水準もうなぎ登りに上昇している。新中国成立前の132都市から08年には655都市まで増え、都市化水準もそれまでの7%強から同年の46%まで、2010年末には51%超まで向上した。
驚きの数字である。

 日本の約25倍面積を有する人口13億超の大国では、常に都市経済の創出が意識され、都市建設が急速に進み、都市部住民の生活品質と生活環境が大いに進化してきた。かつて街中で、舶来の米国スターバックスでコーヒーすることの社会的ステータスには、誰もが憧れていた。ストリートショップで簡単に満腹感に浸ることができたラーメン一杯10元前後の時代。当時の「スタバ・コーヒー」は一杯30元以上していたことを覚えている。

 都市部での賃金も上がり始めた。上海市内で働く女子社員は月々の給料を頭のテッペン(帽子、ヘアカラー等)から足のつま先(マニュキュア等)まで費やし、パソコン学校や語学学校詣で、同僚との外食の機会までも格段に増えた。そんな生活が地元メディアでも報じられるようになり、新天地の都会を目指す農村地帯からの人口流入は後を絶えず、結果、都市部住民が爆発的に増えた。

 都市化奨励政策が積極的に講じられたことも一因。また一般庶民間でも「憧れに」煽動される形で次から次へと人口が流入し、大きな社会現象となった。総人口100万以上の都市は建国時のわずか10都市から08年には122都市まで増え(同年、日本での100万人都市数はまだ10数都市)、同年、全国GDP(国民総生産)の62%を占めるようになった。沿海地域に密集する都市群が中国経済発展のハブまでその機能を高めてきた。

 光と陰。物語はここから始まる。都市部に流入した農民は後を絶たず、都市常住人口は1999年末〜2010年までに53%増加の約6億7千万人(日本総人口の5.4倍)まで増えた。そのうち現地都市戸籍を有する人口は全国平均で約49%であり、街中で出会う2人に一人はその土地の戸籍を持たないとい状況だ。

 彼らはいったい、どこに住んでいるのだろう。流動人口が高いわりに、持ち家率が高いという統計がある。例えば上海市では、2010年末現在、都市世帯数は433万世帯で、持ち家比率世帯は79%と異常に高い(日本08年末現在、全国平均で61%、東京で44%)。もっとも持ち家と言っても、47%が「住宅制度改革」で国有企業から払い下げた「福祉住宅」。その他にも築30年超の集合住宅や60〜70年代に建築基準を緩めてたてられた集合住宅(「小梁薄板房」)や、専用キッチンやトイレがなく、老朽化が進む家屋(「石庫門裏弄」)やバラック(「簡屋」)などに身を寄せている人が少なくないとのこと。

 都市部に流入した人口数を世帯数に直すと、約9300万世帯超が2010年末までの間に都市部で増加した世帯数だ。それに対して不動産開発企業が立てた「商品房」と呼ばれる住宅と企業自身が従業員に用意した「非商品房」住宅は合わせても4500戸超と、その数の半分にも満たない。おまけに不動産開発企業が手がけたのは殆ど大型、高級型住宅が中心であり、流入人口大半の中・低所得者の実需にほとんど合致しない。

 そこにメスを入れたのが今回の政策支援住宅の「保証性住宅」の供給引上げ政策である。火急性は高い。「2015年までに中・低所得世帯の20%までに供給ピッチをあげていきたい」と現在進行中の第12次5カ年計画では謳っているが、2010年末現在ではまだ9.4%の水準。地方財政難でなかなか進まない計画に、都市部の中・低所得層間で不満が高まっている。

 大都会で接する先進文化や物質文明は、彼らには手が届かないものが多く、一歩間違えれば人間を変えるだけの威力がある。「ストレス」、「欲求不満」。10人、20人ではなく、数億人単位を相手にした問題だ。社会不安のもう一つの火種となろう。「雇用」問題と同じように「住宅」問題の早期解決は何をおいても最重要課題であり、今後の政策実行が注目される。



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