高級ブランドの販売、中国を抜いて米国が再びトップに
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323977704578303260312067072.html
2013年 2月 14日 16:20 JST
By NADYA MASIDLOVER AND CHRISTINA PASSARIELLO
【パリ】中国の成長著しい高級品市場に世界はずっと注目してきたが、中国以外でも人知れず高級品市場がにぎわってきたところがある。米国だ。
シルクのスカーフで知られるフランスの高級ブランド、エルメス・インターナショナルは12日、米国での販売が第4四半期に21%増加し、1億8460万ユーロ(約231億4800万円)を計上したと発表した。これは同じく米国での販売が好調だったライバルのLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンやカルティエの親会社リシュモンの業績を上回っている。グッチを傘下に持つPPRは15日に2013年度の通期決算を発表する。
これだけの成長を経験した後でさえ、エルメスのパトリック・トーマス最高経営責任者(CEO)は米国にまだ「大きな成長の可能性」を見ているという。
米国経済は強い兆候を見せてきた。経済はリセッション(景気後退)から回復基調にあり、失業率は下落し、株式市場は記録的な高値をつけ、住宅価格も改善してきた。その結果、米国の富裕層は高級な衣服や装飾品、宝飾品、美容関連製品などに惜しげなくお金を注ぎ込んでいる。
仏化粧品大手のロレアルで米国部門を率いるフレデリック・ロゼ氏は「高級品部門の勢いは経済成長とかなり関連している」としたうえで、「米国はロレアルにとって成長の主な動力源だ」と話す。
消費者の景気に対する信頼感は不安定ではあるものの、アナリストらは高級品の購入が最も多い層は景気動向の不透明さを意に介さないと指摘する。また、米国の人口統計学上と旅行業界で起こっている傾向の変化がこの背景にある。
英大手銀HSBCの高級品市場のアナリスト、アントワーヌ・ベルジュ氏は「米国の高級品の消費動向はこれまでずっと、消費全体の傾向を上回る好調を続けてきた」と指摘する。
2008年の経済危機が米国の高級品市場に打撃を与えて以来、世界規模では中国市場が高級品セクターの主なけん引力だった。ユーロ圏の危機により欧州の消費が冷え込むのに伴い、中国の消費者の重要性がさらに増すことになった。多くの高級品メーカー幹部はアジアから欧州へ大挙して押し寄せた観光客が自分たちを救済するためにやって来てくれたと感じた。
しかし昨年、中国の経済成長が減速したことから、高級品市場で続いた長期的な活況もついに終わるとの恐れが生じた。中国で20年以上にわたって販売してきたLVMHのような高級ブランドは2ケタの成長を確保することが困難になった。
その結果、米国が販売の伸びで主導権を握ることになったのだ。
高級ブランドの多くは中国に進出するよりはるか以前に米国に店舗を構えている。世界最大の高級品メーカーで、ルイヴィトンやシャンパンのモエ・エ・シャンドン、また化粧品チェーンのセフォラといった複数のブランドを傘下に持つLVMHは先月、米国が2012年で最も強い地域だったと述べた。為替変動による影響や買収を除外し、米国での販売は12%上昇した。日本を除くアジア市場の伸びは10%だった。
人口動態上の変化も高級品産業の追い風となった。米国在住のヒスパニック系とアジア系が、高級品やファッション、化粧品といった市場で平均的な米国人よりも大きな購入層を形成している。ロレアルはランコムやジョルジオ・アルマーニといったブランド名で高級な香水や化粧品を作っているが、一般大衆向けのブランドも多く展開している。
これまでの米国市場は主に居住者のための市場だった。しかしこの状況に変化が現れる可能性が出てきた。そうなれば国内需要もそれに伴って強まるだろう。米政府は中国人観光客のビザ(査証)申請に必要な条件を緩和する方向に動いている。高級品を購入するため欧州を目指した多くの観光客を今度は米国へ向かせるのが目的だ。
米コンサルティング会社ラグジュアリー・インスティテュートのミルトン・ペドラザ最高経営責任者(CEO)は「(米国の)強い経済と中国人へのビザ申請条件緩和策は、今年は裕福な地元住民と観光客の両方から恩恵を受けることを意味する」と話す。
観光客の急増を期待し、高級ブランド各社は旗艦店を最も魅力的な場にしようと取り組んでいる。バーバリー・グループは最近、シカゴにある主力店舗を改装した。エルメスはカリフォルニア州ビバリーヒルズのロデオドライブにある店舗を拡張・改装する計画だ。同社は来年、マイアミの店――南米からの訪問客の玄関口――を新たに市内に建設中の高級アート地区「デザイン・ディストリクト」に移設し、さらに規模も拡大する予定だ。
エルメスのアクセル・デュマ最高執行責任者(COO)は「2012年は米国では新たな店舗の開設や改装など何もしなかった。(販売の伸びは)既設の店舗で実際になされたことだ」と話す。デュマ氏は年内にトーマス氏と同格の共同CEOに就任する予定だ。
エルメスの中南米と北米を合わせた販売は昨年、14%増の5億6700万ユーロを計上した。アジアは日本を除き、25%増の11億ユーロとなった。同社は米国のみの数字は出していない。同社全体の販売は総計で34億8000万ドルだった。
米国市場の成長に対してこうした企業の幹部は浮き立っているが、一方でそこには限界もあるという現実的な見解も持っている。07年まで、高級ブランド各社はワシントン州シアトルやテネシー州ナッシュビルといった小規模な街に数十の店舗を開設してきた。しかしアナリストらによると、こういった場所の一部では高級品の販売が期待したほどには伸びなかったという。
HSBCのベルジュ氏は「米国中部で高級品が売れるとの考えは行き過ぎだ」と指摘した。
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