2013年2月5日火曜日

■中国:大気汚染拡大 子供ら健康悪化の恐れ 「幼稚園が休み。こんな天気大嫌い」


中国:大気汚染拡大 子供ら健康悪化の恐れ 「幼稚園が休み。こんな天気大嫌い」
http://mainichi.jp/select/news/20130201ddm007030146000c.html
毎日新聞 2013年02月01日 東京朝刊

 【北京・工藤哲】中国各地で大気汚染の深刻な地域がさらに拡大し、中国国内の医療機関には、のどや目の痛みを訴える患者が詰めかけている。特に幼い子供や、屋外の活動が多い警察官などの健康悪化が懸念され、当局は対応に追われている。視界不良による交通事故も相次いでおり、影響の広がりに中国国外からも懸念の声が上がっている。

 中国環境保護省によると1月30日のデータで、大気汚染の高い数値を示しているのは北京や天津、上海、陝西(せんせい)省西安、江蘇省南京、遼寧(りょうねい)省瀋陽、黒竜江省ハルビンなどで約143万平方キロ。日本の面積の4倍近くに達した。

 北京市中心部の朝陽区にある病院では、31日午後、家族連れで駆けつけてきたマスク姿の子供の姿が目立った。「幼稚園が休みになった。こんな天気大嫌い」。北京市通州区の平紫〓(へいしき)ちゃん(5)はマスク越しに訴えた。父親のタクシー運転手、平海超(へいかいちょう)さん(29)は「数日前から『のどが痛い』と言い始めた」と不安がる。近くにいた康家麟(こうかりん)君(4)はへんとうが炎症を起こして水も飲めないため、点滴が必要という。

 各地では、連日の大気汚染が解消されず、外出する人もまばらだ。北京の日壇公園で清掃を担当する男性の王跌東(おうてつとう)さんは「ここ数日、人の数は半分に減った」と話す。

 中国メディアは31日、視界不良のため北京市中心部の高速道路で車100台が追突事故などを起こしたと伝えた。数百メートル先もはっきり見えない状態が続いており、飛行機が欠航し、主要道路の通行も規制されている。公用車の走行を控える対策も取られているが、北京で公用車875台の違反通行が判明するなど、徹底は不十分だ。

 通行量の多い幹線道路でマスクなしのまま交通整理をする警察官らの健康悪化も懸念されている。インターネット上での非難を受け当局は30日になってマスク着用での勤務を認め始めた。商店ではマスクや空気洗浄機が飛ぶように売れている。

 中国の大気汚染の日本への影響について、加藤勝信官房副長官は31日の記者会見で「ただちに影響があるというレベルではないが、引き続き環境省で調査するなど適切な対応を図る」と述べた。

 ◇「春節爆竹の制限を」

 【北京・成沢健一】深刻な大気汚染が続く中国では、生活スタイルや発展モデルを見直そうとする声が高まっている。インターネット上では重度の汚染状態が改善されなかった場合、春節(旧正月、今年は2月10日)の伝統である爆竹や花火の使用を制限すべきだとの意見が支持を集め、長期的な視点での意識改革を呼びかける論調も強まる一方だ。

 北京では昨年の春節の未明、呼吸器などの疾患を引き起こす微小粒子状物質「PM2・5」が1立方メートル当たり1593マイクログラムとなった。1月に入って記録された「深刻な汚染」とされる数値でも1000マイクログラムを超えたケースはなく、専門家らが大都市の中心部での爆竹や花火の使用禁止や削減を提言している。

 中国メディアによるアンケートでは「健康と青空のためには各自の努力が必要だ」などとして3分の2程度の人が提言に賛同しているが、「味気ない春節となってしまう」「1カ月もスモッグに覆われているのに、春節の数日にそこまでの対応が必要なのか」といった反対論も根強い。

 中国紙「中国青年報」は論評で「短期的な問題に過ぎない」と指摘し、環境保護を意識した市民の自発的な行動を訴えた。

 普段は対外強硬論が目立つ国際情報紙「環球時報」も社説で「深刻な大気汚染には合理的でないエネルギー消費や産業の構造、生活スタイルに加え、中国の発展モデルや体制の問題も見える」と強調。「北京五輪の前に外国メディアが北京の大気汚染を書き立て、それには道理があった。あの時にもっと外部の意見を聞いていれば、我々はその後の数年で環境保護に的確に取り組めたはずだ」と率直に認めた。



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