2013年3月19日火曜日

■【社説】根深い中国の環境汚染


【社説】根深い中国の環境汚染
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323893104578361591896272094.html?mod=WSJJP_hp_bottom_3_3_bucket_3_right
2013年 3月 15日 16:15 JST

 北京で進行中の中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は、さまざまな社会問題が表面化している微妙な時期に開催されている。それだけに中国高官たちは、環境破壊が明るみに出たことでばつの悪い思いをしているはずだ。北京の大気の状態は「健康によくない」と「人体に有害」の間で推移し、上海の飲料水の大半を供給している川では6000頭以上の豚の死骸が怪しげに現れた。

 これを受けて、中国で最もよく知られているコメンテーターの1人で、ハイテク起業家でもある李開復(カイフー・リー)氏が自身のマイクロブログに次のようなジョークを投稿した──ある北京市民が言った。「窓を開けるとただでタバコが吸えるのだから、われわれは最も幸運な市民だ」。すると、ある上海市民が反論した。「だからなんだよ。われわれは蛇口をひねるだけでポークスープが飲めるんだぞ」

 川から回収される豚の死骸の気分が悪くなるような写真は、中国の水質・土壌汚染が息が詰まるようなスモッグと同様に深刻であることを再認識させるものだ。そうした豚がどこから来たのは捜査中だが、うわさによると上流にある農場で家畜が病死、当局は病気にかかったり死んだりした家畜の食肉解体場への売却を厳しく取り締まってきたという。そうしたこともあって、農場主たちは豚を川に捨てるという昔からある廃棄物処理方法に立ち返ったのかもしれない。

 ポークスープスキャンダルと呼ばれているこの事件は、中国人が政府に対して抱いている3つの不信――企業や政府高官の利益ではなく公共の利益を守るための計画が欠如、公害を引き起こしている企業に責任を取らせることができないほど政治が腐敗、そして、災害時にもタイムリーな情報が未提供――に輪をかけた。皮肉なもので、この事件はあの新型肺炎(SARS)の大はやりの10周年ともほぼ重なった。

 当局は汚染統計を「国家機密」に分類するなどして問題を隠ぺいし続けている。それでも政府のさまざまなレベルから、問題解決には汚染源への操業停止命令以上のことが必要になるということを示す情報が出てきている。汚染の影響があまりにもひどく、住人が移転を余儀なくされ、費用のかかる浄化作業が始まっている地域もある。重金属中毒との関連が疑われる病気が多い村もあれば、どういうわけかがん患者が集中している地域もある。政府から補償金が支払われることはめったにないので、農民たちは生きるために農産物を市場で売り続けている。

 昨年、ある次官は中国の河川の40%で汚染が深刻であること、人が触れることもできない有毒な川も20%に達するということを認めた。また90%の都市で地下水が汚染されているという。中国の北半分ではすでに水不足に陥っていることから、中国政府は排水路計画や脱塩といった解決策の費用に危機感を募らせている。一方で環境保護運動家の潘岳氏が次期環境保護相の最有力候補に挙がっており、多少は政府の信頼回復に寄与するかもしれない。

 中国国民からのプレッシャーもある。環境保護運動家たちは最近になって関心を高める効果的な手段を発見した。地元の川で泳ぐ地方政府高官に対して報酬を提示するというものだ。今のところ、それを手にした高官はいないが。ジャーナリストや「市民記者」たちは化学物質の流出がいつ起きたかを暴露するなどして情報公開に取り組んでいる。SARSが流行した10年前と比べると、情報の隠ぺいはずっと難しくなっているのだ。

 この問題の根本的な原因は中間レベルにある。省、市、郡の高官たちが環境を犠牲にしてでも経済活動を最大限に高めたがる背景にはインセンティブが存在する。警察や裁判所も管理下に置いているので、すべては高官たちの思い通りとなっている。

 先月発表された5人のエコノミストたちによる研究では、環境保護にかける費用と高官たちの出世には負の相関関係があることが示された。環境保護法を利用して地元企業を脅迫している幹部もいる。本当の、あるいはでっち上げの違法行為に目をつむるからと言って賄賂を請求するのである。

 中国の水・土壌・大気を守るには、その政治経済の改革が必要だろう。地元住人が規制の費用と恩恵のバランスを取れるように、市や郡のトップを選ぶ際に地方レベルの選挙を行うというのが理想的な解決策だろう。ところが中国共産党は権力独占をあきらめようとせず、1987年以来、選挙はほぼ権力がない村長レベルに限定している。こうした傾向が政治改革なしで改善される見込みはほとんどなく、その代償はすでに恐ろしいほど大きい。




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