2011年10月19日水曜日

■【危機の源流~ギリシャは今~】国民気質が招いた危機との見方も(上)


【危機の源流~ギリシャは今~】
国民気質が招いた危機との見方も(上)
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111013/biz11101314050008-n1.htm
2011.10.13 13:57

 世界遺産のパルテノン神殿は欧米の観光客でごったがえしていた。古代遺跡が集積するギリシャは今、債務危機に揺れているが、観光産業だけは別だ。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、ギリシャを訪れた今年1~4月の外国人観光客数は、前年同期比5・4%増。「ロシアやポーランドからの旅行者が増えている」(南雲淳一・在ギリシャ日本大使館書記官)ためで、パルテノン神殿をバックに写真を撮影する観光客は絶えることがない。だが、そんな活況を呈す観光業界に携わるギリシャ人ですら、現状に焦燥感を募らす。

 「ギリシャ政府は悪政ですよ」。パルテノン神殿やアテナの祭壇などが古代遺跡が残るアクロポリスの丘の入り口で、門番を務めるイオアニス・ダレージョさん(50)はこう吐き捨てた。
 遊び好きで、楽天的な国民性のギリシャ人だが、財政不安を背景に「今では服も靴も我慢して買わなくなったし、外食も控えるようになった」とダレージョさんは沈んだ表情をみせる。

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 ギリシャは、2009年に前政権がGDP(国内総生産)比13%にのぼる財政赤字を隠していたことが発覚、世界からの信用力が急低下した。財政赤字の許容範囲は欧州連合(EU)基準でGDP比3%とされるだけに、デフォルト(債務不履行)が現実味を帯びるようになった。10年もの国債の利率は24%に達し、欧州諸国では突出している。

 EUや欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)が財政支援に乗り出し、その代償としてギリシャ政府に緊縮財政を強く求めた。パパンドレウ首相が率いる社会党現政権は、労働人口の約4分の1にあたる公務員の給与を2割削減したほか、低減税率が適用されていたレストランなどで、消費税に相当する付加価値税(VAT)の税率を10%引き上げて23%にまで高めた。失業率は16%で、15~29歳の若年層では30%にのぼる。

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 「財政破綻(はたん)なんて知ったことじゃない」

 自分の国が財政危機に陥っても「当初は国民の大半がこう思っていたのではないだろうか」とギリシャ在住35年の日本人ガイド、国武律子さん(57)は推測する。「ギリシャ人はおおらかで、財政規律にしても、それほど真剣に受け止めていない」という国民気質が招いた危機との見方もある。

 ジェトロのアテネ駐在通信員の野嶋生代さんは「VATの税率が高いのは北欧並み。しかし、北欧のように高福祉・高負担というのではなく、高負担低福祉に国民は怒っている」と解説する。タクシー業界がストライキを断行するなど、おおらかだったはずのギリシャ人が政府対応に不満を爆発させ、抗議行動がエスカレートし始めている。

 国武さんは「娘を留学させるなど、せめて教育費の出費は惜しまない」と話すが、生活費は多くのギリシャ国民と同様、切り詰めて暮らしているという。

 ギリシャ政府はEUから支援を得るため、不動産課税の導入など新たな財政赤字の削減策を示すが、これらの取り組みは遅々として進んでいない。国民の耐乏生活にもかかわらず、ギリシャはデフォルトという最悪の結果にむけて突き進みつつある。

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 ギリシャが財政危機にあえいでいる。緊縮財政のあおりを受けて国民は生活防衛に躍起だ。そんなデフォルト危機の現場を歩いた。

 デフォルト 債務不履行のこと。ギリシャがデフォルトに陥ると「国際通貨基金(IMF)の管理下に置かれる可能性」(日本総合研究所の河村小百合・主任研究員)もあり、欧州をはじめとする世界経済に大きな打撃となる。過去の国家デフォルトには、ロシアやアルゼンチンなどがあり、IMFが追加支援に乗り出すなどした。



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