2011年10月20日木曜日

■韓国に押し寄せる中国人観光客東北アジアの観光大国の座競う日本に危険信号


韓国に押し寄せる中国人観光客東北アジアの観光大国の座競う日本に危険信号
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/26038
2011.10.19(水)玉置 直司

 日本の東日本大震災の「反射利益」を得ているのは、韓国の自動車や電子・電機メーカーばかりでない。韓国に中国などから大量の観光客が詰めかけ、期待以上の特需を得ている。東北アジアの観光大国の座を競う日韓両国だが、今年は、韓国への海外からの来訪者数が初めて1000万人を超える可能性も出てきた。

 両手にデパートの大きなショッピングバッグを5つも6つも持って談笑しながら歩く女性3人連れ。ソウルの中心部でこういう女性グループと言えば、数年前まで決まって日本人だった。だが、よく見ると「ユニクロ」のショッピングバッグも。すれ違いざまに聞こえてきたのは日本語ではなく、中国語だった。
満室だらけでホテルの予約が取れない!


 ソウルではいま、すさまじい勢いで中国人旅行者が増えている。

 「おかげさまで12月中旬まで100%満室です。キャンセル待ちもたくさんいただいており、申し訳ありませんが、これ以上の予約は受け付けておりません」
 2011年10月10日。日本から知人が韓国を訪問するというので、ソウルの江南地区にある比較的混雑していない中級ホテルを予約しようとしたが、ネット予約がうまくつながらない。面倒なので直接フロントに行ってみたら、丁寧ながら断固とした答えが返ってきた。
 このホテル、つい2年前までネット予約すれば1泊10万ウォン(1円=15ウォン)以下で宿泊できた。いまは「格安12万ウォン」となっているが、部屋そのものがまったくない。ここだけではない。いま、ソウルのあちこちのホテルでまったく予約ができない状態が起きている。
 ソウルでホテルに30年以上勤務する知人に聞いてみたら「私も、こんなことは初めて。昨年末くらいからおかしいと感じていたが、今年春以降、まったく異常な状態が続いている」と語る。


長年不動の1位だった日本人観光客、3年内に逆転は確実か

 「ホテル予約非常事態」の主役は、何と言っても中国人だ。韓国観光公社がまとめた1~8月の統計によると、中国人来訪者数は前年同期比14%増の144万人となった。ウォン安や韓流ブームなどの追い風もあって、日本人来訪者数も前年比3%増の199万7000人となったが、伸び率では中国人にまったくかなわない。
 韓国の観光業界関係者によると、「3年後には中国人の来訪者数がこれまで長年不動の1位だった日本人を抜く」と見る。一部には、「もっと早い時期に追い抜くだろう」との声も出てきた。
 2011年9月には、前年に日本への社員旅行を大量キャンセルしたことでも有名になった中国の健康食品関連会社が、1万人を超える社員を8チームに分けて済州島やソウルに送り込んできた。この他にも、「社員旅行」の団体が相次いで韓国を訪問している。


震災の影響で目的地を日本から韓国へ変更

 健康食品会社の場合は別だが、他の企業の場合「訪問先として日本を希望する社員が多かったが、震災の影響で韓国に変更した例が何件かあった」(大手ホテル幹部)という。

 一般の団体旅行者でも、日本を敬遠して韓国に目的地を変えた例が続出しているという。
 こうした震災の「反射利益効果」ははっきりしている。韓国への外国人来訪者数は、2011年3月から5月までそれぞれ前年同月比微増にとどまっていたが、6月以降、突然伸び率が2ケタ以上になった。
 8月には過去最高の98万人を記録した。10月には100万人を超える可能性が高いという。
 2011年1~8月に韓国を訪問した外国人数は前年同期比8%増の618万人に達した。日本政府観光局の暫定集計によると、日本を訪問した外国人数は同33%減の394万人で大差がついてしまった。
 2010年の外国人訪問者数は、日本と韓国がほぼ拮抗していた。韓国への来訪者数は879万人、日本への来訪者数は861万人(韓国観光公社、日本政府観光局の統計)でその差はわずか。両国とも「1000万人誘致」を激しく競っていた。


日本より早く1000万人誘致達成へ

 ところが、日本への来訪者数は大震災を機に急減してしまった。これとは逆に韓国への来訪者数は急増し、韓国観光公社は「このままのペースでいけば2011年の来訪者数は960万人」と予測している。
 観光業界では、10月と11月の航空券やホテルの予約状況を見ると「1000万人乗せも十分に可能」との声も出てきた。韓国の観光業界は「日本よりも早く1000万人来訪」を実現して、大々的にPRしたいという意向のようだが、これも可能性ががぜん高まってきたのだ。


銀聯カードの売上高が3倍以上に急増

 中国人の観光客の多くが保有する「銀聯カード」は韓国でも猛威を振るっている。中国の国慶節休暇だった10月1~7日に韓国を訪問した中国人は前年同期比18%増の5万3000人で、この期間にソウルの主要デパートの売上高は急増したという。銀聯カードでの高級ブランド品や衣料品の売り上げが急増したためだという。

 韓国メディアの報道によると、10月1~6日の全国のロッテ百貨店での銀聯カードの売上高は前年同期比3倍以上になったという。
 南大門市場にある土産物屋の店主は、「日本人は2万~3万円の現金を両替してあちこちで少しずつ買い物をする。買い物を楽しむといった感じだが、中国人は銀聯カードでどかんと買い物をする。1人当たりの売上高は断然中国人が多い」と語る。
 韓国の観光業界にとっては今も今後も日本人が重要な大口顧客であることには変わりがない。「日本人は比較的少人数で来訪し、韓国に詳しくて、多様な楽しみ方を知っている。中国人は韓国が初めてという場合が多く、大型バスで団体で移動する」――。韓国の大手ホテル幹部はこう話す。


 思わぬ特需に潤う韓国の観光業界だが、最大の悩みはホテル不足だ。

「早く!早く!」が国民性だけに猛烈なホテル建設ラッシュ
 ソウルには140の観光ホテルがあり、部屋数は2万4000室だが、昨年あたりからまったく足りない状態だ。最近は、ソウルからバスで1時間ほどかかる地方都市のホテルも中国人の団体で満室になっている。ソウルのあちこちにあるラブホテルとして利用されることが多かった「モーテル」にも日本人観光客が宿泊するようになってきた。
 ただ、「早く!早く!」が国民性でもある韓国で、こんな事態を放置しておくはずもない。ソウル市によると、現在市内では32もの観光ホテルが建設中だという。大型ホテルが多く、2013年ごろにはホテルの需給を一気に緩和させたいという。大震災の後遺症に悩む日本にとっては何ともため息の出る話だ。



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