2011年10月16日日曜日

■LCC拠点めざす成田、誘致へトップ営業 羽田国際化に危機感


LCC拠点めざす成田、誘致へトップ営業 羽田国際化に危機感
2011/10/15 8:18  日経Web

 成田空港が変わりつつある。羽田空港の国際化から1年、利用者の減少への危機感が背景にある。目指すのは国内外の格安航空会社(LCC)の集積拠点。すでに海外の3社が就航しており、来年までに国内3社も相次いで乗り入れる。

格安航空会社のジェットスターが乗り入れる成田空港

 今月30日、成田空港に新たに2路線が発着する。スカイマークの新千歳便と旭川便だ。新千歳便の普通運賃は1万2800円と、日本航空の同じ路線の半分以下に設定した。当初3カ月はキャンペーンで、両路線とも各便20席程度を片道980円(28日以上前にネットでの予約が必要)で売り出した。今後、那覇、福岡にも就航する。

 すでに成田空港には海外のLCC3社が乗り入れている。1社はオーストラリア、残り2社は韓国に飛ばしている。

 韓国に家族がいる20代の女性は韓国のLCCを定期的に利用する。客席が若干狭く、乗降場所が空港の中心から離れているなど不便な面はあるが「価格が大手のほぼ半分だから」と他の航空会社から乗り換えた。

 釜山便を就航するエアプサンの平均搭乗率は約8割。「中長期的には搭乗率は9割まで増える」と強気な姿勢を見せる。

 国内の大手航空会社もLCCに参入し、来年中に成田に就航する計画だ。全日本空輸はマレーシアのLCC会社とエアアジア・ジャパン(東京・港)を設立。日航は三菱商事、豪カンタスグループと共同出資でジェットスター・ジャパン(同・千代田)を作っている。


■最低価格を保証

 ともに具体的な就航先は明らかにしていないが、国内は新千歳や福岡など、国際線は中国や韓国などを検討中といわれる。また、ジェットスター・ジャパンは他社の同じ時間帯の同じ路線より安くする「最低価格保証制度」を導入する予定だ。

 羽田の国際化で危機感を持つ成田国際空港会社(NAA)がLCC誘致に力を入れている。14年度にも年間発着枠を現在の22万から30万に増やすことを決定。2009年9月、各国の航空会社が集まる「ルーツ会議」に初めて参加し、翌年の会議には森中小三郎社長がトップセールス。LCCだけが集まる会議にも幹部を派遣、「成田に新規就航や増便を」とPRしている。


■増便など課題

 NAAは施設使用料の安いLCC専用ターミナルの設置を計画している。他国より高い着陸料など各種料金を「値下げの是非も含めて検討している」という。
 各LCC路線とも便数が少ない。エアプサンの釜山便、イースター航空のソウル便はいずれも1日1往復だけ。30代の日本人の女性は「もう少し便数が多ければ」と話す。新規路線の誘致とともに、既存路線の増便も課題になる。


▼ビジネス客は羽田シフト 14都市に定期路線

 1978年の成田空港開業以来、政府は「国内線は羽田、国際線は成田」とすみ分けをしてきた。このため、羽田の国際線はソウルや香港などへのチャーター便に限られていた。

 昨年10月に政府は羽田の4本目の滑走路の運用を開始。同空港に年間6万の国際線の発着枠を割り当てた。現在、欧米やアジアの14都市に定期路線がある。来年1月には全日本空輸とルフトハンザ・ドイツ航空がフランクフルト路線を就航させる。2013年度をめどにさらに3万の枠を増やす計画だ
 国土交通省によると、今年7月の国際線旅客数は羽田が62万人、成田は208万人と震災の影響もあり、前年同月と比べて21%減少した。首都圏の空港から海外に旅行した人の2割以上が羽田を使った計算になる。

 特にビジネスでの渡航では羽田の利用が多い。出張専門旅行会社のJTBビジネストラベルソリューションズ(東京・江東)が今年7~9月に扱った首都圏発の海外出張では羽田利用者が3割以上を占めた。アジア方面に限れば、半分近いという。上海出張で羽田を利用する都内の女性会社員(37)は「フライト時間が短いアジアへは空港まで近く、出国手続きがスムーズな羽田が便利」と指摘する。


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