2011年10月12日水曜日

■ディズニー、アイガー後継体制構築へ


ディズニー、アイガー後継体制構築へ
http://jp.wsj.com/Business-Companies/node_322673
2011年 10月 11日  21:37 JST  ウォールストリートジャーナル

 米娯楽・メディア大手ウォルト・ディズニーのロバート・アイガー最高経営責任者(CEO)が2015年に退任することが決まった。アイガー後継体制に向けた道筋はどのようなものになるのか。

 ディズニーの7日の発表によると、アイガーCEOは2012年3月以降、会長職を兼務する。2015年にCEOを退いたあとも会長職にとどまり、2016年6月に退職する予定。アイガーCEOは現在60歳で、退職時には65歳になる。

 投資家や専門家は今回の決定について、アイガーCEOの在任期間を十分に確保して、混乱なく新体制に移行したいとの取締役会の意向の表れとみている。

 ディズニーは今後、後継者選びを本格化させるものとみられる。現段階で最有力視されているのはテーマパーク部門の会長のトーマス・スタッグズ氏だ。社交的で、さりげないユーモア・センスの持ち主として知られるスタッグズ氏が現職に就いたのは2009年で、その前の数年間は最高財務責任者(CFO)だった。

 対抗馬として名前が挙がっているのは現CFOのジェイ・ラスロ氏。ラスロ氏はCFO就任前にはテーマパーク部門の会長だった。ディズニーはスタッグズ氏とラスロ氏に役職を交換させることで、2人の経験を強化し、長所と短所を見極めようとしたようだ。

 スタッグズ氏は今年行われた投資家向けの会議で短いビデオ映像を上映、自分の経歴を笑いの種にしつつ創造力を見せつけた。この映像はスタッグズ氏がディズニーランドのさまざまな状況に親しもうとする姿や、ディズニーの業績について冗談を言ってテーマパークの客を楽しませようとしたものの失敗に終わるという姿を皮肉なトーンで描いたものだ。

 一方、ラスロ氏にとって、役職の交換はディズニーの運営をより詳しく知る機会となった。そつがないアイガーCEOと比べ、ラスロ氏は単刀直入という評判だ。

 新CEOの選出までには3年半近くあるため、他にも候補者が現れる可能性もある。アイガーCEOは先ごろ、他の幹部役員の入れ替えを行った。ディズニーチャンネル、ディズニー・コンシューマー・プロダクツ、映画スタジオの各部門のトップは社内から新たに任命されたばかりか、就任してから比較的日が浅い。アイガーCEOの在任中に、この3部門のトップを含め同社の幹部が次期CEO候補となる可能性がある。

 7日の発表では、アイガー氏の退職後の計画について詳細は明かされなかった。しかし、アイガーCEOは関係者に対して何度も、60歳台半ば以降、会社に残るつもりはないことを明らかにしている。ディズニーは定年制を採用していないが、取締役会のメンバーは74歳になると退任しなければならない。

 アイガーCEOを知る複数の関係者によると、同CEOは非公式にたびたび政府や政治への関心を示してきたという。関係者の1人はアイガー氏が検討しているのは政治だけではないとしたが、具体的には語らなかった。政治献金データベースOpenSecrets.orgによると、アイガーCEOは民主党の政治家に定期的に寄付を行っており、この中には民主党上院議員選挙運動委員会も含まれている。また、共和党議員に献金したこともある。

 ディズニーのジョン・ペッパー会長は2012年3月の年次株主総会で退任する。

 アイガーCEOの現在の契約は2013年1月に期限を迎える。新たな契約では、アイガー氏は年棒として250万ドル(約1億9100万円)を受け取ることになっている。CEOと会長を兼務する間のターゲット・ボーナスは業績と株価次第ではあるものの、1200万ドルとされている。CEOを退任して会長職だけになっても年棒は変わらず、ターゲット・ボーナスは600万ドルとなる。

 アイガーCEOが就任したのは2005年。前任者のマイケル・アイズナー氏と、創業者ウォルト・ディズニー氏の甥のロイ・E・ディズニー氏が率いる取締役会内のグループが熾烈な争いを繰り広げたあとのことだ。

 争点の1つはアイズナー氏がCEO職と会長職を兼務していたことだった。アイズナー氏に批判的な人々は兼務によって1人に権力が集中しすぎていると感じていた。アイガーCEOも会長職を兼務するが、状況は全く異なる。アイガー氏はCEOに就任してからわずか6年しか経っていないが、アイズナー氏は20年にわたってCEO職と会長職を握り続けた。さらに、アイガー氏が会長職を退任する時期は既に決まっており、同氏が過度な影響力を持つ可能性は低い。

 アイガー氏はCEO就任後、映画製作会社ピクサー・アニメーションを含め、アイズナー氏の在任中に悪化した関係の修復に乗り出す一方、事業拡大の必要性を考え続けた。
 アイガーCEOが誕生してたった数カ月後、ディズニーは10年間映画の配給を行ってきたピクサーを74億ドルで買収した。この買収によって、当時のピクサーのCEOだったスティーブ・ジョブズ氏がディズニーの筆頭株主となった。

 ペッパー会長は7日、インタビューに応え、「彼(アイガー氏)がいなければ(買収は)行われなかった。(買収)できなければ会社は心配する事態になっていた」と語った。

 アイガーCEOは今後、後継者を決めるだけではく、ビデオゲーム部門を安定させることが必要となるだろう。さらに、ディズニー・スタジオにさらに注目する必要があるかもしれない。ピクサーは相次いでヒット作を出しているものの、映画部門は他になかなかヒット作を生みだせずにいる。

 また、アイガーCEOはこれまでに拡張や改修、新アトラクションやクルーズ船の導入に何十億ドルもの資金を投じており、この投資が正当だったと投資家を説得するために、テーマパーク部門で十分な成果を出さなければならないだろう。

 アイガーCEOは新たな配給技術をディズニーの優先課題としている。ディズニー傘下のABCはテレビネットワークとして初めて、アップルの「iTune Store(アイチューン・ストア)」のダウンロードサービスに番組の使用を許可した。ABCと同じくディズニー傘下のESPNはともに「iPad(アイパッド)」などの携帯端末向けにも番組を提供している。

 ディズニーの技術面での戦略が全て当たったわけではない。ディズニーは昨年、5億6300万ドルをかけてソーシャルゲームメーカーのプレイドムを買収したが、赤字のビデオゲーム部門を好転させることはできなかった。

 アイガーCEOはまた、国際事業の拡大に力を入れ、ラテンアメリカや欧州を含む多くの海外市場にディズニーチャンネルを進出させた。同CEOは中国政府との何年にもわたる交渉の末、上海にディズニーランドを建設する許可を得た。

 ディズニーは2009年にコミック・映画会社マーベル・エンターテインメントを40億ドル超で買収することで合意した。これもアイガーCEOによる事業拡大努力によるものだ。
記者: ETHAN SMITH  




0 件のコメント:

コメントを投稿