2012年2月7日火曜日

■ここが違う日本と中国(1)―『辰年』と『龍年』


ここが違う日本と中国(1)―『辰年』と『龍年』
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0203&f=column_0203_012.shtml
【コラム】 2012/02/03(金) 09:58
  
 中国は日本より22日ほど遅れて「龍年」を迎えた。

 「龍年」はもちろん中国の言い方で、日本では「辰年」と呼ぶ。そして22日遅れたというのは、中国では干支は西暦ではなくて旧暦に従うからだ。

 中国のお正月は今も旧暦である。一年間の日数は西暦と旧暦とでは異なるので、中国のお正月は毎年違う。というわけで、調べておかないと、「今年のお正月はいつですか」と聞かれても、答えられない。このことを大学の授業で学生たちに言うと、間違いなく「えっ? なんで?」「ややこしい!」「変!」といった感想が返ってくる。日本は昔も旧暦のお正月を過ごしていたが、いまの若者にとってお正月はやはり「クリスマスプラス元旦」である。

 中国の今年のお正月はかなり早かった。1月22日は大晦日、23日は「初一」つまり元旦ということで、中国の「龍年」は日本の「辰年」より22日遅れてやってきたのだ。

 このように、同じお正月と言っても、毎年ずれているので、在日中国人と在中日本人の多くは母国に帰ってお正月を過ごすことはなかなか難しい。筆者は1989年10月に来日、日本での生活は23年目を迎えているが、その間、中国のお正月を一度も過ごしたことがない。実に淋しいことである。

 お正月は中国人にとって一年間の最大の祭日で、できるだけ故郷に帰り家族や親族、友人と一緒に楽しみたい。また、ほとんどの中国人は旧暦のお正月を「人類共通」、「万国共通」のものと認識しているようだ。そのため、お正月に近づくと、必ず親戚や友人、同級生から「休みはいつから?中国に帰ってね」といったメールが来る。そして筆者はいつも「日本は西暦のお正月を過ごすから、とっくに終わったよ」「ここでは通常通り仕事をしている」といった内容の返事をする。

 干支(十二支)は中国の発明品とされる。古くから日本に伝わり、いまは日本でもよく使われている。ただし、呼び方は日本と中国とは異なる。日本では子(ね)、丑(うし)、寅(とら)、卯(う)、辰(たつ)、巳(み)、午(うま)、未(ひつじ)、申(さる)、酉(とり)、戌(いぬ)、亥(い)と呼ぶが、中国ではずばり鼠、牛、虎、兎、龍、蛇、馬、羊、猴、鶏、狗、猪となっている。つまり、日本では依然として昔の呼び方、一方の中国はすっかり現代語に直したわけである。特に中国では猪=豚(ぶた)、日本では猪=いのししとなっている。

 さらに十二支についての考え方にも日中間でずいぶん違いがある。中国人は十二支を結婚や出産と結びつけて使う場合が多々あるが、日本にはほとんどなさそうだ。日本では丙午年の出産を避けることもあり、最近では1966年でその年の新生児の数が他の干支の年よりも少なかった。その反動もあり、翌年の丁未の年は新生児の数が例年よりも増えた。

 一方、出産は干支から影響を受けるという考え方は中国では依然として根強い。中国では、猴年、龍年、馬年に生まれた子どもは縁起が良く、運勢も強い、逆に羊年は運勢が悪い、というイメージである。これらは当然迷信ではあるが、その影響を受ける人がいまも多いようだ。実際、中国の出生率は龍年、馬年、鶏年は高く、羊年、虎年は低くなっており、干支と大きく関係しているのが現状である。

 2007年は出産に縁起の良い60年に一度の「金猪年」とされ、狗年に続いて人気の年となった。「金猪」は将来生まれてくる子供にもっとも良い運勢をもたらすと考える人は、06年に結婚し、07年に「金猪」の赤ちゃんを産むという計画を立てていた。

 そして今年は龍年。中国人からして最もめでたい年で、赤ちゃんを産む絶好のチャンスだ(やや言い過ぎか)。実際、龍年の今年でベビーブーム到来の兆候がすでに現れ始めた。

 山東省千仏山病院の郭偉さんは20年以上のキャリアを持ち、産科主任を務めている。彼の話によると、年末年始の産科受診者数は急に増え、前年同期と比べて約20%も増加した。そのため、多くの医師は早めに出勤、遅めに退勤して対応している。また、病院側はベッドと医療スタッフを増やしている。

 こうした現象は山東省だけではない。広東省でも出産適齢期に入った数多くの「1980年代生まれ」が、「龍年ベビー」を産もうと計画している。北京市では一部の病院はすでに妊婦の受け入れを制限し始めた。寧夏回族自治区銀川市では昨年11月以降、大病院を受診する妊婦が普段より2割前後増えている。

 龍年ベビーブームに後押しされ、マタニティ用品やベビー用品の価格も毎月上昇する傾向にある。

 以上は、「広州日報」1月26日付の記事が伝えたものである。


 ところで、干支の移り変わりに伴うベビーブームは他のところでも影響が出るようだ。2007年には「金猪」の赤ちゃんが大量に生まれた。当時の新聞「中国婦女報」が伝えたところによると、出産ラッシュによって人材不足が引き起こされる可能性があると一部の企業は憂慮していた。また、ウェブサイト「山東人材ネット」は「女性職員の出産によって人材不足の問題に直面しているか」について、企業50社の人事管理担当者に調査を実施した。調査結果では、36の企業で問題があるとの回答が寄せられ、特に販売や顧客サービスなどの業種で多かったのだ。

 こうした異常なブームは保育所、幼稚園、学校の不足を招くこともあり得る。さらに、就職をいっそう難しくすることも考えられる。だから、有識者は「干支は生まれ年を計算する記号にすぎず、人の性格と運命は生まれ年とは全く関係がない」と必死に訴えている。

 中国の人口動態は計画出産政策のコントロールもあって予測が大変難しいと筆者はいつも話している。このような根強い干支意識も加わると、人口の推移はいっそう流動化を呈するに違いない。ここは人口学の専門家も頭を痛めるところではないだろうか。



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