2012年2月2日木曜日

■その土地 限定の旅…脱「観光地巡り」


その土地 限定の旅…脱「観光地巡り」
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=53866&from=navlc
(2012年2月2日 読売新聞)

 食材や生活文化など地域の魅力を、地元の人たちが紹介してくれる地域密着型の国内旅行「地旅(じたび)」が注目を集めている。地酒や地ビールのように、その土地でしか味わえない旅という意味。主に中小の旅行会社が、各地でツアーを企画している。観光地巡りとはひと味違った時間を過ごせそうだ。


イノシシ猟 / 船で霞ヶ浦 /摩周湖の星空

 鹿児島市の奥屋悦仁さん(61)は昨年末、友人と「猟師と行くイノシシわな猟体験としし鍋舌鼓の旅」に参加した。旅の目的地は南大隅町(鹿児島県)。イノシシの生態の説明を受けて猟師が仕掛けたわなを見学し、鍋も食べる日帰りツアーだ。イノシシ肉のおみやげ付きで、参加費は4800円。「残念ながら、わなにイノシシはかかっていなかったけれど、いい思い出ができた」と満足げに話す。

 このツアーは、鹿児島県旅行業協同組合が県などと協力して企画した。「物見遊山に飽きたらず、他ではできない体験を求める客が増えた。地域の魅力を開発する役割も旅行会社に求められている」と同組合理事長の中間幹夫さん。地元のNPO法人が案内したり、料理店でさつま揚げを作ったりする体験ツアーなど、様々な地旅をまとめてブランド化し、県内外にPRしている。

 「地旅」は、全国約5700の旅行会社が加盟する社団法人全国旅行業協会の後押しで広がっている。同協会の事務を担う「全旅」(東京)社長の池田孝昭さんによると、地旅とは「その土地の資源や魅力を生かし、テーマや目的をもった旅のスタイル」。10年近く前から主に中小の旅行会社が取り組んでいるという。

 同協会会員の地旅ツアーの中から優秀賞を選ぶ「地旅大賞」も2009年から実施。前回の10年は100件を超える応募の中から、千葉県の旅行会社「エアポートトラベル」が企画した、船で霞ヶ浦や利根川を巡る旅が大賞に選ばれた。

 様々な地旅が登場する背景には、旅行会社側の事情もある。池田さんは「従来の発想を転換しないと、中小の会社は生き残れない」と説明する。旅行会社は、これまで客を他県の観光地に送る「発地型」と呼ばれるツアーで収益を得てきた。しかし、観光地巡りに満足せず、インターネットを利用して旅行会社を通さずに旅をする客が増えた。このため、地旅のように特徴のあるツアーを地元の旅行会社が開発し、他県の旅行会社と協力して集客する「着地型」のツアーが必要になったという。

 地旅は、現地集合型のツアーが多く、関心がある分野だけに気軽に参加できる魅力もある。北海道の摩周湖周辺のホテルでは、夜に星を観察する地旅ツアーを実施して、年間約3000人が参加する人気ぶりだ。

 地旅に詳しい観光コンサルタントの井門隆夫さんは、「旅行商品が従来の大量販売型から、地旅のような少量多品種型に変わりつつある。魅力的な地旅が増えれば、地域活性化につながり、消費者にとっても選択の幅が広がる」と話している。



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