2012年2月9日木曜日

■インバウンド、東アジア主要4市場の動向と対策-JNTO旅行振興フォーラム


インバウンド、東アジア主要4市場の動向と対策-JNTO旅行振興フォーラム
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=52142
2012年2月8日(水)トラベルニュース

  日本政府観光局(JNTO)は2月2日、「第9回インバウンド旅行振興フォーラム」を都内で開催した。フォーラムでは賛助団体・会員を対象にした個別相談会のほか、市場説明会で海外事務所長等が最新動向、今後の活動方針、訪日需要喚起のためのヒント等を発表。震災に対する各国の反応や国民性を踏まえた具体的なプロモーション策など、駐在ならではの生きた情報が多く語られた。今回はインバウンドの65%を占める東アジア圏(韓国、中国、香港、台湾)についてレポートをする。

韓国:就航便の多さを生かしたルート開発
放射能・震災の不安払拭が急務

  一昨年の2010年、訪日韓国人客数は過去最高となった。ただし、韓国発の海外旅行先の国別シェアでみると中国に大きく溝をあけられている。日本語を学習する人が多く、訪日ニーズが高い20代を中心とした若者も中国語を学ぶ傾向が強まってきており、今後渡航先の中国シフトは加速することが予想される。

 東日本大震災後から夏までは、西日本への格安商品、LCCを利用した北海道旅行などを中心に回復したが、7月以降は原発報道が盛んになると不安が強まり、様子見の傾向が強くなった。1月末の山梨県を震源地とする地震、例年では問題にならないインフルエンザの流行等を理由に大量のキャンセルが出るなど、今年に入ってからも敏感な反応が続いている。また経済の後退、ウォン安なども回復の遅れに追い打ちをかけている。

 ただし、日本人の韓国訪問が順調なこともあり、2011年12月には日韓間の就航便数が震災前を上回った。今後も新規就航、増便などが見込まれ、航空座席の供給は増加傾向にある。LCCとの競争により、航空券の値下がりが予想されること、訪日クルーズの就航予定などから「ツアー価格が下がり、新しい需要の掘り起こしも期待できる」とソウル事務所長の鄭然凡氏は分析する。

 ピーアール面では、SNSやクーポンサイトが若者を中心に人気だ。韓国ならではのテレビホームショッピングも好調で、1回の放送で200人から1500人程度を集客している。販売でありながら情報提供としての側面も持つことから「東日本の安全性を訴える要素も加え、今後強化していきたい」と鄭氏。放射能や地震への不安を和らげる情報や環境整備、就航地の多さを生かし、都市部に集中している観光ルートを地方へ広げていくことなどがポイントとなりそうだ。

中国:訪日の回復は順調
自然環境・健康・癒しなどの関心に訴求できる素材

  中国政府の対応が早く、メディアも協力的に動いたことから震災後の訪日は順調に回復してきている。相次ぐビザの緩和策など日本政府の後押しもあり、昨年11月には訪日中国人客数は過去最高を記録した。ただしインセンティブツアー、教育旅行、および超富裕層の動きはまだ鈍い。渡航先の8割がアジアという中国で、日本は価格での競争力は低いが、高品質のサービス、四季の魅力などの強いブランド力がある。「今後も価格競争ではなく、差別化をして需要を喚起していく」と北京事務所長の飯嶋康弘氏は語る。

 現在、中国では「自然環境(新鮮な水・空気)」「子供の楽しみ」「健康、癒し」などへの関心が高く、この分野に訴求できる新ディスティネーションの開発が急務だ。受け入れのポイントとしては「日本ならでのおもてなしの心」「(中国人客に対する)特別待遇」「情報提供の整備(ネット環境、中国語の表記、施設周辺の地図、中国語のテレビ放送など)」などがあげられた。またビジネスの基本として、個人主義の中国では情報は共有されにくく「キーマンを見極めて直接話をすることが大切」との指摘もあった。

 地域別にみると、北京近郊では、ピーク時のツアーの高騰が顕著で、ピークを避けて旅行をする傾向が出てきている。また震災報道はひと段落しており、現在は「あえて震災には触れずピーアールをしている」と飯嶋氏。

  上海近郊では、日本は圧倒的な人気を誇り、特に周辺の江蘇省、浙江省での伸び率が高い。今後、期待できる市場として、旅行会社向けのセミナーは「江蘇省、浙江省、四川省などの内陸部の市場での開催をすすめる」と、上海事務所長の小沼英悟氏。上海では、旅行会社はセミナーに疲れ気味であり、むしろ一般旅行者向けに媒体やSNSを活用したピーアールが得策のようだ。また旅のスタイルは単なる観光から体験型に変化してきている点も押さえておきたい。

 広東省は、人口、GDPともに中国最大の省であり、香港発の情報も入りやすく個人観光の伸びも大きい地域だ。ただし「定期便が少なく日本への就航も4ヶ所に留まる。なかなか新規ルートの開拓が進まない」と広東省を管轄する香港事務所長の平田真幸氏は語る。セミナーには商品造成をする力のある旅行会社を戦略的に呼び込み、魅力あるモデルルートを提案。チャーター便利用に踏み切らせることが一つの突破口になりそうだ。

台湾:オープンスカイとFITが鍵
香港:リピーターの多様化なニーズに応える魅力

交流協会台北事務所経済部の山田敬也氏  台湾は昨年11月のオープンスカイ締結以降、新規路線開設・増便などで定期便数が3割近く増加した。ここ数年緩やかに進んでいたFIT化が2011年下期は一気に加速したという。

 「便数が増え航空券の価格が下がったこと、リピーターのニーズに合ったツアー造成が追いつかず、個人で手配する人が増えたことも影響しているのではないか」と交流協会台北事務所経済部の山田敬也氏は分析する。定期便を活用したモデルルート、新規ツアー造成のニーズは高い。一方で、航空券を旅行会社が買い取るという構造的な問題から、旅行会社は利幅の大きい団体旅行に力を入れる傾向にあり、市場が求めるスケルトン型、個人旅行などの商品が少ない状況になっている。

 現在は情報過多となっており、今後は素材をある程度絞った上でオンリーワンとしてピーアールをしていくことが重要だという。また個人旅行増加が続く中、ネットでの丁寧な情報提供が安心感を生み、地道だが確実な需要喚起になると山田氏はアドバイスをする。

  台湾と同じく、訪日リピーターが多い香港は、訪日回数が3回から5回という人が最も多く、6回以上の人も3割強に達する。個人旅行も2010年実績でシェアが67.2%と成熟した市場だ。

 リピーターが多い為、旅行目的も訪問先も多様化しており、最近はレンタカーで各地を周遊するなど体験型の旅が人気だ。その分、従来の桜、紅葉・雪・温泉等の魅力がやや陳腐化傾向にある。韓国・台湾など他のアジア圏のプロモーションも盛んなことから「上質、最高な日本ブランドを構築し、多様化するニーズに応える新しい魅力を、官民一体で創造することが大切」と香港事務所長の平田真幸氏。「楽しみ尽くせ!新しい日本スタイル」をスローガンにした訪日キャンペーンは今年3月まで実施予定だ。

 なお、各国の発表に共通してみられたのは「信頼感がビジネスに直結する文化であり、長期かつ継続的に同じ人が担当することが重要であること」「自治体や企業単体ではなく、モデルルート上の地域が連携してピーアールすることが現地のニーズとして高いこと」、さらに「FacebookをはじめとするSNSは日本以上に進んでおり、今後のピーアールには外せない」という点が語られた。長期的視野のもと、戦略的にアプローチすることが訪日需要回復の要になりそうだ。


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