2012年2月13日月曜日

■ここが違う日本と中国(7)―女性のライフコース


ここが違う日本と中国(7)―女性のライフコース
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0213&f=column_0213_006.shtml
【コラム】 2012/02/13(月) 09:59
  
 日本人から見て「中国の女性は強い」。このイメージはすでに広く定着している。

 しかし、よく考えてみると、「強い」というのはいったい何を指すのか、必ずしも明白な含意を持っているわけではない。あえていえば、男性と対等にやっていける、きついこともできる、よく働く、ストレートに意見を言うといったことになるだろうか。

 国連開発計画(UNDP)が2011年11月2日に発表した「2011年版人間開発報告書」では、人間開発指数(HDI)の値と順位、不平等調整済み人間開発指数(IHDI)、ジェンダー不平等指数(GII)、多次元貧困指数(MPI)が示されている。

 ジェンダー不平等指数(GII)は、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、エンパワーメント、そして経済活動への参加の3つの側面で、ジェンダーに基づく不平等がどの程度存在するかを表す指数である。リプロダクティブ・ヘルスの状況は、妊産婦死亡率と15~19歳の女性1000人当たりの出生数で測定する。エンパワーメントの状況は、立法府の議席に占める割合と中・高等教育への進学状況を基準とする。経済活動への参加状況は、労働市場への参加率で判断する。GIIは、3つの側面における男女の不平等により、人間開発のレベルがどの程度損なわれているかを明らかにするものである。

 日本のGII値は0.123。この指数を算出した146カ国中の順位は14位である。国会における女性議員の割合は13.6%。女性の中・高等教育進学率は80.0%(男性は82.3%)。妊娠関連の原因で死亡する女性の割合は、出生数(死産を除く)10万人につき6人。15~19歳の女性1000人当たりの出生数は5人である。労働市場への参加率は、男性の71.8%に対して、女性は47.9%となっている。

 一方、日本とHDIの値が近い国である韓国とアメリカは、この指数でそれぞれ11位と47位に位置している。また、中国は0.209でアメリカを上回った35位を占める。このことは中国国内でも大きく報道された(ウェブサイト「中国新聞網」2011年11月3日付など)。

 日本に関してとても気になったのは、女性の労働市場参加率が男性よりはるかに低いことである。それが女性議員の少なさとともに日本のジェンダー不平等指数を押し上げたともいえる。

 これらのことは日本においてよく女性のライフコースと関連付けられ議論されている。

 ライフコースとは、生き方や働き方などを含む「人生」である。多くの社会において、女性は今も男性とは異なるライフコース(人生)を歩み男性とは異なる多くのライフキャリア上の課題に直面する。特に近年の日本では、女性のライフコースをめぐってさまざまな議論が沸き起こり、高い関心が寄せられている。

 その背景はいうまでもなく、日本の女性の独特の働き方が現代社会の環境変化と激しくぶつかっているという点である。

 ところで、日本の女性のライフコースといえば、一般には以下のような分類ができるとされる。

 専業主婦コース=結婚し子どもを持ち、結婚あるいは出産の機会に退職し、その後は仕事を持たない

 再就職コース=結婚し子どもを持つが、結婚あるいは出産の機会にいったん退職し、子育て後に再び仕事を持つ

 両立コース=結婚し子どもを持つが、仕事も一生続ける

 DINKSコース=結婚するが子どもは持たず、仕事を一生続ける

 非婚就業コース=結婚せず、仕事を一生続ける


 国立社会保障・人口問題研究所は、他の公的統計では把握することのできない結婚ならびに夫婦の出生力に関する実状と背景を把握するために、戦前の1940年から現在に至るまで出生力ならびに出生動向を定時的に調査してきた。2010年6月には第14回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)が実施された。同調査は独身者調査と夫婦調査とに分かれている。

 夫婦調査についての概要報告によれば、未婚女性が理想とするライフコース(理想ライフコース)は1990年代に専業主婦コースが減って、両立コースが増えたが、その後は大きな変化はない。一方、実際になりそうだと考えるライフコース(予定ライフコース)では、専業主婦コースの減少が現在まで続いており、今回ははじめて1割を下回った(9.1%)。また、これに代わって両立コースおよび非婚就業コースの増加傾向が続いている。未婚男性がパートナーとなる女性に望むコースでも、女性の予定ライフコースと同様に専業主婦コースが減少し、両立コースが増加する傾向が続いている。専業主婦を望む人が1割(10.9%)に減少する一方で、両立コースを望む人は2000年前後にこれを逆転し、今回は3割を超えている(32.7%)。

 これら調査も示すように、日本の女性はライフコースにおいて常に仕事と家庭の選択を迫られ、その結果、その労働力率(人口に対する労働力人口の割合)がいわゆるM字型カーブを描くことが特徴的である。

 1960年代から70年代まで、女性の平均初婚年齢は24歳前後で安定していた。20代前半に就業後、25~34歳の年齢層になると、結婚や出産、子育て等のために離職し、40代からまた働く人たちが増加するという行動が顕著にみられた。これを年齢階級別の労働力率でみると、20代前半に70%前後になった後、20代後半から30代前半にかけて40~50%台にまで低下し、40代には60%程度に回復するというM字型のカーブを形作っていた。80年代以降、20代後半から30代の女性の労働力率は徐々に上昇していったが、M字型カーブが際だっている状況は変わらない。

 厚生労働省「21世紀出生児縦断調査結果の概況」によれば、正社員の女性の約半数は、出産後退職を余儀なくされている。出産から6年経つと、就業率は65%まで高まるが、そのうち2割はパートタイマーやアルバイトなど非正規雇用。元の正社員にとどまれる人は約4割しかない。

 女性の年齢階級別労働力率の推移を諸外国と比較すると、日本と韓国は現在でもM字型カーブを描いているが、それ以外の欧米諸国はいずれもおおむね台形を描いている。

 一方、中国の女性の労働力率は日本と大きく異なり、二つの山があり、その間に谷があるというのではなくて、台形よりもややとがった山型で、かつ労働力率の頂点が低くなっている。

 これはどういうことかというと、中国の女性は結婚や出産で退職するケースが非常に少ない。しかし、現役から引退する年齢が想像以上に若い。中国の法定定年退職は、男性60歳であるのに対して、女性は55歳(幹部)か50歳(一般労働者)である。また、改革開放後、特に市場経済体制への移行期に、国有企業の倒産やリストラにより、多くの女性労働者は早期退職を余儀なくされた。その結果、女性は40歳代になると、労働力率が急激に下がる。

 中国のとがった山型と欧米の台形型とも違うことはいうまでもない。特に中国の上昇開始年齢と下降開始年齢は欧米より数年ないし10年も早い。原因は、中国の女性の学歴が低く(早く学校教育から離脱して就職)、定年退職年齢が若いからだ。

 結婚・出産の理由で仕事を辞める日本の女性、結婚・出産しても辞めない中国の女性、こんな違いが出てくるのはどうしてだろうか。その原因について次回のコラムで考察してみたい。



0 件のコメント:

コメントを投稿